バレンタイン小ネタ1 5
(5)
ヒカルはチョコレートを一つ摘んでアキラの口元に運ぶ。
アキラは そんなヒカルをジッと見て、何を思ったのかチョコレートを
摘むヒカルの指ごとパクッと くわえた。
一瞬ヒカルは目が点になったが、大声を上げた。
「オッ、オマエ何やってんだああっー!?」
慌てふためくヒカルに冷めた目で見ながら、ゆっくりヒカルの指から舌で
チョコレートを口内で受け取る。そしてヒカルの指を離し、口内から
開放する。
「何やってるんだって見れば分かるだろ。
チョコレート食べているんだよ。ご馳走様。
じゃあ、今度の研究会は来週の水曜日だから忘れるなよ進藤」
そう言いながらアキラはヒカルに冷ややかな視線を向ける。
「おっ、おう・・・・・・またな・・・・」
アキラの姿が遠くなるのをボーと眺めながら・・・アイツと一緒にいると
どうも調子が狂うなあとヒカルは思う。
アキラは歩きながらヒカルのことを考えていた。
ヒカルの何気ない行動に一喜一憂する自分が嫌でならない。
・・・少しくらい困らせるくらいでいいんだ進藤は。人の気も知らないで
無邪気に土足で人の心にズカズカと踏み込んでくるのだから──。
少しムクれた表情でアキラは家路を急いだ。
(終わり)
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