甘い経験 Part2 6 - 10


(6)
ヒカルは震える手でアキラの制服の上着を脱がし、アンダーシャツを捲り上げて彼の上半身を
露わにした。何度か自分に覆い被さってきた身体を、今は眼下に見下ろしている。それは初めて
見た訳ではないはずなのに、やはり初めて見たような感慨をヒカルにもたらした。
ヒカルの下で、アキラは目を閉じて、ヒカルを待っている。
自分の心臓の音がうるさい。息をするのも辛い。
見た目よりもしっかりと筋肉がついている胸部に、ヒカルはぎこちなく手を滑らした。
その肌は白く滑らかで、ヒカルの手に吸い付くようだ。
つっと手を動かすと、敏感に反応してアキラの身体がひくりと動く。
恐る恐る動かしていた手が、アキラの心臓の上で止まった。
静かに自分を待っていると思っていたアキラの心臓が、激しく暴れているのを感じて、ヒカルは息
が詰まった。
―おまえも、ドキドキしてるのか?塔矢。オレだけじゃなくて、おまえも、同じなのか…?
息を殺してそっとそこにくちづけた。唇越しに激しい動悸が伝わる。それからペロリとそこを舐めて
みた。頭の上で、アキラが小さく息を飲んだのを感じる。そのままヒカルはそっと舌を這わせてみる。
すぐ横に、飾り物のような薄紅色の乳首があった。ヒカルはそれを舌先で舐め、それから口に含み
軽く歯を立てた。その刺激にヒカルの下で、アキラが身を捩る。その反応がもっと見たくて、ヒカル
は口の中の突起を舌先で転がし、吸い上げる。
最初は僅かな突起に過ぎなかったものが、ヒカルの口中でふっくらと形を明瞭にしていく。
「塔矢…感じて…る…?」
アキラは答えない。
けれど、震える身体が、甘い喘ぎ声が、そのままアキラの返答だった。
自分が与える刺激に、アキラが声を上げ、乱れている。
アキラの甘い喘ぎ声がヒカルの耳をくすぐり、その姿はヒカルの中の牡の征服欲を呼び起こした。


(7)
アキラの下半身を露わにし、そして、自分も着ていたものを全て脱ぎ捨てた。
今までヒカルの与えてきた刺激に、アキラはすでに先走りの涙を流し始めていた。
初めて自分がされた時には、なんて事をするんだと思ったけれど、今、こうして自分の下に
いるアキラを見ると、汚いとかそんな事よりも、もっと気持ち良くさせてやりたい、もっともっと
アキラを乱してやりたい、と思う。
そのためにはどうしたらいいのか、ヒカルは身を持って知っている。
だから躊躇う事無く、ヒカルはアキラのそれを口に含んだ。
自分がされて気持ち良いことをアキラに返してやればいい。
ヒカルはアキラの反応を見ながら、自分でする時のことを、アキラにされた時のことを思い出し
ながらアキラに刺激を与えていった。
自分の口の中でアキラがそれに反応して形と質量をかえていく。
口いっぱいを使って次第に動きを荒々しくしていく。頭の上の方で、アキラが甘い吐息交じりに自分
の名を呼ぶのが聞こえる。
アキラの様子を、表情を見てみたくて、ヒカルは口をはなし、顔を上げた。
「塔矢、」
「や…進藤…」
切なげな声でアキラが続きを促す。
ヒカルは満足げに頷いて再度アキラを口に含んだ。


(8)
そしてついに、ヒカルの口の中でアキラが弾ける。
一瞬その苦みと青臭さに吐き出しそうになったそれを、何とかこらえて飲み下した。
そうして顔を上げると、切なげに眉を寄せ、全身で荒い息をしているアキラがいた。
その姿をみてヒカルは、愛しい、と言うのはこういう気持ちだろうか、と思った。
オレのものだ。塔矢。オレの、オレだけのものだ。
投げ出された白い肢体をかき抱いて、抱きしめて、まだ荒い息をしている唇に口付けした。
アキラの舌が思いがけない強さでそれに応えた。
唇を離して、至近距離でアキラを見詰める。
潤んだ黒い瞳がヒカルを見返す。
アキラの美しい顔をもっとよく見たいと思って、額に、頬に張りついた髪を指で払う。
その指の動きに、アキラがそっと目を閉じる。
ヒカルはその閉じられたまぶたに唇でそっと触れた。
両方のまぶたに、そして額に、こめかみに、それからヒカルのキスは頬から顎へと下がって
いき、最後に形の良い唇にそっと触れ、それからもう一度ゆっくりと静かに唇を味わった。
すると待っていたかのようにその唇がヒカルを受け入れ、ヒカルを絡め取った。
二人はお互いにお互いを貪りあった。
「塔矢…塔矢、好きだ…」
「進藤…」


(9)
重なり合った心臓の鼓動を激しく感じる。滑らかな肌触りが、呼吸の音が、ヒカルを見上げる
アキラの眼差しが、ヒカルを煽る。身体の中心が熱く、放出先を、行き場を求めてどくどくと
脈打っている。それが望む場所は…
「塔矢…オレ…オレ、挿れても、いい?」
「いいよ…いいけど、このままじゃダメだ。」
熱い息のヒカルを優しくなだめるように、アキラが言う。
「いくらなんでも、いきなりはムリ…だから…」
「あれ…どこ?」
「ああ、…机の、引出し。右側の真中。」
ヒカルが名残惜しそうにアキラの身体をぎゅっと抱きしめてから、ベッドを降りた。
言われた通りの引出を開けると、見た事のある小ビンがぽつんと一つ、置いてあった。
ビンを持ってベッドに戻り、伏せたアキラの上に乗ろうとすると、ギシリとスプリングが軋む。
伏せたアキラの白く丸い双丘をそっと撫でる。その肌の滑らかさにヒカルは思わず頬を摺り
寄せた。アキラの身体はどこもかしこも、なんて気持ちのいい肌触りなんだろう。ヒカルは、
まだ触れていない所があるのが勿体無い気がして、もう一度アキラの全身を確認する事に
した。黒髪のはらりと落ちた白いうなじに口付けしながら髪が指を滑るさらさらとした感触を
味わう。それから肩から腕にかけてのラインを撫でながら唇は首筋から肩甲骨へと移動する。
身体の下に潜り込ませた手でアキラの乳首を探り、こねまわし、摘み上げるとヒカルの下で
アキラが身を捩り、甘い吐息を漏らす。それに応じた背筋の動きを、ヒカルは唇と舌で感じ取る。
それからわき腹を通って腰骨を探る。滑らかな皮膚の下の筋肉の動きを辿りながら、届く
範囲のアキラの体中をまさぐる。背骨の一つ一つを確かめるように降りてきた唇が、また、
小さく引き締まった双丘に辿り着く。谷間にそって舌を這わせ、押し開いて、奥まった入り口
にようやく到達する。


(10)
ごくりと息を飲んでヒカルは身体を起こし、先程もってきた小ビンを手に取る。ビンの蓋を開け
て、指で中身をすくい取る。薄いピンク色の潤滑剤のとろりとした感触が、なんだかそれだけで
いやらしいような気がする。
震える手でヒカルはたっぷりと掬い取った潤滑剤ををアキラの秘門に塗りこめる。そうして、
もう一度、ビンから掬い取り、その指をアキラの中に押し入れた。
アキラの身体がびくんと反応する。キツイ、とヒカルは思った。
本当にこの中に自分のが入ったりするんだろうか、と思いながら指を進める。
潤滑剤の感触と、指を包み込むような熱く柔らかなアキラの内部の感触が気持ちいいのか
悪いのか、よく分からない。
「塔矢…」
よく分からなくなってしまって、アキラの名を呼んだ。
「塔矢…、どこがイイのか、教えてよ…」
指を少しずつ動かしながら、ヒカルが尋ねる。
「そ…んなの…、自分で探せよ…」
「だって、わかんないよ、オレ、」
「やだね、教えてなんか、あげ…んっ…」
「ここ?」
「やっ……」
「こう…?」
「…んんっ……」
「ここが、イイんだ…?」
アキラの内部が、入口が、少しずつほぐれていくのを感じる。
ヒカルは既に奥まで潜り込んでいる人差し指に添えて、更に中指を挿入した。



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