tomorrow 6 - 10


(6)

時を告げる古い柱時計の音が廊下で響いている。
目覚し時計の秒針が正確に時間を刻んでいる。
そしてそんなものよりもずっと早く、激しく時を刻んでいる音が、ボクの身体に直接響いてくる。
ああ、それならボクのこの胸の響きも同じようにキミの身体に響いているのか?
これがボクの心臓の音。
これがキミの鼓動の響き。
ボク達が確かに生きていて、そして今ここに在ることの証。

これが何かはわからない。
わかっているのはただ一つ、いまここにキミがいるという事、それだけ。

固く抱き合ったまま、しばらくボクは息をすることさえ忘れていて、頭がくらくらしてきて始めてそのこと
に気付いて、ほうっと大きく息をつくと、ボクを抱いていた進藤の手が、ぴくっと動いた。
彼の手はボクの背からボクの肩へと動き、肩を押さえたままゆっくりと離れていく。
空いてしまった隙間を埋めたくてボクが顔を上げると、目の前には進藤の顔があって、彼は呆然とした
ような目でボクを見ている。二、三瞬きをしながらも彼の目はボクを見つめていて、ボクの肩を掴む手に
ぐっと力が篭って、びくりと今度はボクが身を震わせると、それを合図のように彼はゆっくりと目を伏せ
ながらボクに近づき、ほんの一瞬、唇が触れ合って、はっと離れていった。
その一瞬の接触に、まるで雷に打たれたように、ボクの全身を電流が走り、衝撃に目を見開くと、目の
前にはまた、同じように大きく目を見開いているキミがいた。


(7)

繰り返し、繰り返し、何度も触れては離れていく柔らかな唇は、触れるたびにその温度を上げ、次第に
熱く、強く押し付けられてくる。その熱がもっと欲しくて、離れようとする頭を逃げないように押さえつけて、
彼の中に舌を滑り込ませた。

気付いたときには深い口付けを交わしながら互いの服を剥ぎ取ってしまっていて、直接触れる裸の肌
の感触に、その熱さに、目が眩む思いがした。
彼の柔らかな髪をかき乱しながら夢中になって彼の口の中を貪る。同じシャンプーと石鹸の匂いに汗
のにおいが混じり、熱と共に立ち上る濃厚なそれらの匂いに眩暈がする。心臓は激しく脈打ち、全身
は熱く燃え、更にその熱が下半身に凝縮するのを感じる。
それに気付いてあまりの恥ずかしさにぎゅっと目をつぶってしまったら、向こうも気付いたのか、進藤
は同じくらいに熱くなった彼自身を押し付けてきた。更にぴったりと身体を重ね合わせて、自分自身で
ボクを刺激するように動く。その熱さが、勢いが、それらの立てる音が、さらにボクを煽り彼を煽り、二
人とももう暴発寸前だ。
信じられない。恥ずかしくて恥ずかしくて、死んでしまいそうだ
やめろ、進藤。もう、やめろ。
とどめたくて、制止するように握りこんでしまってから、自分のしてしまったことに、心臓が止まるよう
な気がした。
それなのに手の中で熱く脈打つ進藤に、同じくらい熱くいきりたっているボク自身にボクの心臓は激
しく反応し、握りこむ手に力をこめると、ぎゅっと掴んだ熱がダイレクトに脳髄にまで伝わって、その
瞬間、ボクの熱は制御メーターを一気に振り切って暴発した。


(8)

気付いたら彼もボクと同じように、荒い息をつきながらボクの上で脱力していた。
彼の身体の重みが心地よいと感じた。
荒い息も、汗の匂いも、ボクのだか彼のだかわからないくらいに混ざり合って、不思議に幸せな気分
で、ボクはそっとボクの上にいる彼の背を抱いた。

そっと手に手を重ねられるのを感じ、ゆっくりと目を開いたら、すぐそこに彼の顔があった。
ああ、彼だ。そう思って微笑みかけようと思ったら、手の中にあるものがドクンと震えた。その時初めて
自分が、彼と自分とを握りこんだままだったことを思い出した。慌てて手を離そうとしたら、その上から
添えられてた進藤の手がボクにそれを許さない。
一緒に握りこまれ、羞恥に目をつぶって顔をそらせた。
その様子に小さく笑われたような気がして更にぎゅっと目をつぶると、宥めるように擦りあげられて、
その感覚に身体が震える。彼の手が足を擦るのに何も考えず身を任せていたら、身体の奥の、考え
もしなかった場所に突如指が押し入れられようとした。
それが何を意味するのか、彼が何をしようとしているかわかって、思わず身体が強張るのを感じた。
でも、全てを受け入れよう、そう決めていたから。
キミの指がボクの内部を探り更に奥に進もうとする。気付くと身体が強張り息を止めてしまっている。
その度に無理に空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出しながら身体の力を抜こうとするけれど、考えた事
も無いような場所を探られる感覚にどうしても力が入る。
「あっ、」
彼の指がボクの中のどこかをかすった時に、ビリッとそこから電流が走ったような気がして思わず声
を上げてしまった。そうしたら、それに気付いてボクの中の指がまたそこに戻ってきた。


(9)

これは、何だ。
この感覚は。
やめろ。
壊れる。壊れてしまう。
ボクが、ボクでなくなってしまう。
逃げようともがいてもいつの間にか腰をしっかりと抱え込まれていて、逃げられない。
嫌だ。
やめろ。

やめろ、進藤。

とうとうそう言おうとした時に、自分自身を湿った何かに包まれて、思考が止まる。
見下ろしかけてそれが何かわかって愕然とする。
進藤が。
ボクの、モノを口に。

信じられない。
熱い口の中で進藤の舌がボクを嬲り、更に僕の内部で進藤の指がボクを翻弄する。
やめろ。やめてくれ。
違う。だって、こんなんじゃない。
こんなのは嫌だ。こんな、一方的な、

錯乱する意識のままにボクは急激に追い詰められ上り詰めさせられ、やめろ、と叫ぶより先に目の
裏が白く弾けた。


(10)

もう嫌だ。
こんなのは、ボクが望んでいたのは、こんなのじゃない。
気力を振り絞って彼の身体を押し退けようと腕を伸ばしかけた時、
ボクの中で蠢いていた指が唐突に出てゆき、いきなりのその感覚にボクは思わず目を見開いた。
すると目の前には、追い詰められたような表情の進藤がいて、彼の真剣すぎる目に、ボクは何も
言えなくなる。
追い詰められているのはボクのほうだ。それなのになぜキミがそんな顔をする。そんな目でボク
を見る。

ついさっきまで指で嬲られていたその箇所に、熱く濡れた感触のものが押し付けられる。
拒むことも出来ず目を見開いたまま、彼を見詰めていたら、彼も同じようにボクを見たまま、それ
をぐっと中に押し進めた。
その衝撃にボクは思わずまたぎゅっと目をつぶってしまった。



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