断点-2 6
(6)
「…なんて事を、僕が本気で言うとでも思ったかい?」
キィーンと、耳鳴りがした。
今、何が起きたんだ?
塔矢は、なんて言った?
動けなかった。
声も出せなかった。
今のは一体どういう意味だ?
凍り付いてしまったオレを嘲るような塔矢の綺麗な唇から目を離せない。
いつもより紅く、濡れて艶めいた唇が、冷たく、残酷な言葉をオレに聞かせる。
「いい格好だね。」
そう言って塔矢は身体を起こしてオレを見下ろした。
塔矢の視線を辿るようにオレは目を落として自分の格好を確認した。
ソファーにだらしなく座って、シャツの前をはだけられて、下着ごとズボンを腿まで下ろされて。
それなのに服を直す事もできないでいるオレを見ながら塔矢は立ち上がり、そのまま冷たい表情
のままでオレを見下ろした。
動けなかった。
塔矢の視線がオレに動く事を許さなかった。
じっとオレの目を見ていた塔矢は小さく口元だけで笑い、それからその視線はオレの身体を辿る
ように動き出す。
オレはぴくりとも動く事もできずに震えながらただ視線だけを塔矢からそらせた。
塔矢がオレを見ている。
見られている。
そう思うことで萎えかけていたオレの分身がヒクリと震えるのがわかった。
嫌だ。何も反応なんかしたくないのに。
それでも、塔矢の視線を感じてオレの身体にまた熱が集まってくるのを、オレは感じる。
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