大人は判ってくれない? 6
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アキラは天井に向けて大きく溜息をつくと、なんとか気を取り直して前を向いた。
(この朴念仁には、ボク自ら引導を渡してやらねばなるまい。今後この人に乗り続けるためにも、
ボクがやらなくては……)
そう自分自身に強く言い聞かせ、切れ長の目尻をキッと吊り上がらせる。
その身体はワナワナと怒りに震えていた。
「Examine Your Zipper!!」
アキラは吐き捨てるように言い放った。
「ほう……さすがだな、アキラ君。完璧な発音じゃないか」
ネイティヴスピーカーさながらのアキラの発音に、緒方は大いに感動した。
(さすがは全国有数の進学校、私立海王中学校に通うだけのことはある)
アキラの優秀さがまるで我が事であるかのように満足げに微笑している。
しかし、緒方が悠長に感慨に耽る暇など本来あろうはずもなかった。
「……おや?」
ようやく気付いたらしい。
緒方は自身の股間にゆっくりと視線を落とした。
「XYZ............Examine Your Zipperか……」
忘れていた。
緒方はすっかり忘れていた。
"XYZ"──"Examine Your Zipper"──カクテルの名称でもなければ、『もう後がない』でもない、
もう一つの重要な意味を。
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