少年王アキラ 誕生日 6


(6)
「クックック、彼は…法の改正は20歳になって初めて可能であることをご存じない。
そういった勉強が嫌いだからね」
 どこかで一部始終を見ていたらしいオガタンは、大股でやって来ると笑いながら
座間のふくよかな肩に手を置いた。
「最近、アキラさまはお仕置きをしてくれないんですよ」
 座間は拗ねて呟き、少年王が置いていったマツタケケースをそっと傾けてみた。
 しばらくするととろりと少年王の美しい濃縮エキスが垂れてくる。
「ああ、おまえに飽きたんだろう」
 相変わらずオガタンの言葉攻めは座間に心地いい刺激を齎す。お仕置きに飢えている
座間はそれだけでぴくんと震えた。
「もっと…言ってください」
 座間は身をよじる。だが、その拍子に先ほどこそげ取っていたユリの花粉が舞い、
オガタンの繊細な鼻を直撃した。
 オガタンは、花粉症だったのだ。
 クシャミを連発しながらよろよろとホールを出て行ったオガタンを恨めしげに睨み、
座間はケースの入り口近くまで垂れてきたエキスを舌で掬いあげた。何十年も前に味わっ
たことのある苦味が蘇ってくる。
 現在は痛みを与えられて初めて感じることのできるときめきを、あのころの自分は、
先ほどの少年王のように奔放に感じることもできたのだ。
「あのころの記憶も、アキラ王のエキスもなんて苦いの……」
 座間はそう呟いたきり、さめざめと涙をこぼした。

                         おわり



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