tournament 6
(6)
オッチーと対戦することになったトーマスはかつてシンドーやオッチーと共に、互いにその腕を磨き
合った仲間でもあった。
しかし、最近のトーマスは、シンドーの成長ぶりに、その才に、恐れを抱いていた。
トーマスにとってシンドーは最初は面倒を見てやらなければならない可愛い後輩だった。それなのに
今でははっきりとシンドーが自分を追い抜いていってしまっているのがわかる。彼の読みの深さに、
その才に、はっとさせられる。自分はシンドーには敵わない。そう思うのは悔しいと思う。けれど悔しい
と思いながらも、敵わないと思う気持ちが捨てられない。トーマスはシンドーを恐れた。
そして、ヤシロの話はホンダから聞いていた。斬新な手でホンダを撹乱した上に勝利を奪ったと言う
ヤシロに、トーマスは恐れを抱いた。
だから、対戦表を目にしたとき、トーマスは安堵に胸を撫で下ろした。
トーマスにとっては恐ろしい相手であるシンドーもヤシロ、その二人のどちらとも自分はぶつからない。
自分の敵となるのはオッチーである。オッチーとなら、五分五分だ。勝利のチャンスはある。
シンドーとヤシロは勝手に潰し合ってくれればいい。
そしてヤシロが、姫の寵愛深いシンドーを倒してくれれば尚都合がいい。
姫の寵愛を巡って戦うに当たって、恐るべき相手はシンドーただ一人だから。
ここで負ければ姫もシンドーなど見放すだろう。シンドーも姫に合わす顔があるまい。
今度の戦いに当たっての姫とシンドーとの小さな諍いを漏れ聞いていたトーマスは、そんな事を考えた。
暗い笑みを心に抱いて、トーマスはオッチーとの戦いに挑んだ。
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