座敷牢中夢地獄 6


(6)
目を離している間に、あのくれないの傘は何処かへ消えてしまっていた。
「風に飛ばされでもしたんだろう。代わりにこれを使いたまえ」
先生はアキラの迎え用に持参したものらしい細身の傘を俺に渡しながら、
アキラを自分の傘の中へ手招く仕草をした。
それまで俺の隣にいたアキラが嬉しそうに父親のもとへ駆け寄り、寄り添う。
先生はそんなアキラのほうを見ずに、俺の顔を見、行燈の灯を示して言った。
「キミ。この光を見失わないように、ついて来なさい。道中でキミが迷っても
責任は取れないから」
そう言って背を向け歩き始めた先生の傘を握る手に、
アキラの白い手が少しためらってからそっと添えられた。
行燈の灯がくらりと揺らめく。
そこに大きな影が蠢いたような気がして、俺は一瞬二人の後ろ姿を見ながら立ち尽くした。
が、すぐに我に返り、濡れた砂をさくさく蹴って二人の後を追った。
光を、見失わないように。

雨に包まれた道すがら、先生は自分たち父子の事情をぽつりぽつりと語ってくれた。
自分と息子のアキラは東京で棋士としての生活を送っていた。
だが一年ほど前にアキラが体調を崩し、その療養のため自分たち父子はこの土地で
二人きりで暮らしているのだと。
狐に抓まれたような気持ちでその話を聞いているうちに、俺たちはその家に着いた。



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