Kids are all right. 7
(7)
大きな噴水のある公園に着く頃には、気温はもう30度に近付いていたの
かもしれません。
公園で遊んでいる子供達の多くは、半袖やランニング姿です。
噴水の中で裸になって遊んでいる子供もいます。
アキラと緒方は木陰のベンチに座り、持ってきた麦茶を飲みながら、
その様子を眺めていました。
初めての公園で、見知った子供もいないせいでしょうか、アキラはなんとなく
遊んでいる子供達の中に入るのを躊躇しているようです。
そもそも生活が囲碁中心のせいか、アキラの周りには緒方を始めとする
大人は沢山いますが、同年代の遊び友達がいません。
「ボク、ふんすいのなかであそんでみたいなぁ……」
そんなアキラの状況をよく知っている緒方は、ぽつりとそう呟くアキラを
複雑な気持ちで見つめました。
そこへ、遊んでいる子供の母親らしき女性が近付いて来ました。
何かこちらに言いたそうですが、なんとなく言い出しにくそうな様子の
その女性に、緒方が声をかけました。
「あの……、どうかなさいましたか?」
女性は驚いて少し頬を赤らめると、声をかけてもらえたことを素直に
喜びつつも、はにかみながら言いました。
「いえ……、あの…、大人しくて可愛らしい坊やですね。あんまり大人しいから、
最初お嬢ちゃんかと……あら、ごめんなさいね。それに、お父さんが公園に
連れていらっしゃるなんて、ホント、感心してしまいますわ……」
緒方はアキラの父親と間違えられたことに軽い目眩を覚えながらも、
事実を説明する煩雑さを考え、敢えてそれを否定せず穏やかに微笑みました。
「ありがとうございます。ところで、お子さんはどこで遊んでいるんです?」
そう言って、緒方は遊んでいる子供達の方に視線を向けました。
「ええ〜っと……、ああ、あそこです。噴水の中で走り回ってる子。
まあっ、あの子ったら随分日焼けして……。まだ4月だっていうのに……。
もう、あの子は元気がよすぎて、私も困ってるんですよ」
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