Sullen Boy 7
(7)
「『おがたくん、プリンぷっちんしてっ!』なんて言ってた頃は、大きな目がクリッとしてて
可愛かったのになァ……。それが今や、こんなに険のある目つきになって……」
緒方はニヤニヤ笑いながら、指先でアキラの両目尻をキュッと引っ張り上げた。
アキラは怒りに震えながら緒方の手を払い除けると、大声で怒鳴りたいのを堪え、静かに口を開く。
「……昔の話をしたがるなんて、緒方さんも随分老けましたね……」
「老け」の部分を露骨に強調するアキラに、緒方は思わず苦笑した。
「老けたんじゃなくて、貫禄がついたのさ。一応タイトルホルダーだからな」
そう言って「ハハハ」と笑うと、緒方はアキラの肩に両手を置き、その顔を見据えた。
先程とは打って変わって真剣な表情の緒方をアキラも神妙な面持ちで見つめ返す。
「碁聖戦も制すればオレも二冠だ」
「……勝てますか?」
そう尋ねるアキラの口調はどこか嬉しそうだった。
「当然だ。なにせ、アキラ君からバランタイン30年をプレゼントしてもらえるんだからな。
気合いの入り方が違うぞ」
真剣だった表情を一気に和ませながら、アキラの両肩をポンポンと叩いた。
そしてアキラの肩から手を離し、再びフェンスに腕を掛けると、緒方は自分自身に言い聞かせる
ように呟く。
「是非とも勝利の美酒に酔いしれたいものだ……」
そんな緒方をアキラはしばらくの間、少し羨ましそうに見つめていた。
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