tournament 7
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笑顔の愛くるしい少年だった騎士は、いつの間にか凛々しい青年へと変わりつつあった。
負けるという事を知らなかった姫を、初めて打ち負かしたのが、この騎士であった。
その時から姫は彼の虜となったのだ。
初めは素直に彼を追い、けれど裏切られ、忘れようと思いながらそれでも忘れられず、出会って
からというもの、姫の心を一番に捕らえて放さなかったのが、騎士、シンドーという存在であった。
姫にとってはシンドーは運命の相手であった。
だが、姫とシンドーがいかにすれ違い、追い、追われながらも互いを認め合うまでに至ったかまでは、
それは別の物語である。その物語については、今は多くは語るまい。
兎にも角にも、その数奇な運命を辿り、そして今、姫の寵愛を一身に受けるのがこの美しく
成長した騎士、シンドーであった。
姫は彼の光り輝くような碁の才を、そして、明るく無邪気なその性質を誰よりも愛した。
他の者にとっては、この高貴で美しい姫は、軽々しく口を利くのも恐れ多いような存在だった。
だが、シンドーにとっては違った。彼は姫を他の友人たちと同じように扱った。
実のところ、姫にとっては自分を特別扱いしない彼のその態度が新鮮で嬉しくて、それゆえに
姫の彼への愛はますます深まるのだった。
同年代の友人を持たなかった姫にとって、彼は唯一の友人でもあった。
だがその態度は一部の側近には不遜で思い上がりも甚だしいと、不興を買っていた。
年相応にシンドーと戯れ、時に口喧嘩して、意外な子供っぽさを見せる姫を、微笑ましく見る者も
いたが、逆に、至高の存在であった姫が、礼儀知らずの少年騎士によって、下々の者どもと同じ
ような扱いをうけるのを、苦々しく思うものもいた。その筆頭がキタジマであった。
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