大人は判ってくれない? 8


(8)
 一部始終を眉ひとつ動かすことなく眺めていたアキラだったが、やがて何食わぬ顔で盤上の碁石を
ジャラジャラと片付け始めた。
碁石を碁笥に仕舞い終えたところで、突っ伏した机からようやく身を起こしかけた緒方と視線が合う。
(さて、ここできっちり手綱を締めておくか)
 アキラは唇の片端を吊り上げた。
冷酷非情な笑みを浮かべ、緒方を睨みつける。
今や緒方は獰猛な肉食獣の標的にされた哀れな被食動物でしかなかった。
「こんな時間からボクに恥ずかしいことを言わせないでくださいよ、緒方さん」
「…………」
 無言の緒方は、悲壮感漂う表情で強く唇を噛み締めた。
机に突っ伏した衝撃で僅かにずれた緒方の眼鏡越しに覗く色素の薄い2つの瞳は、明らかにアキラに
慈悲を請うている。
しかし、そんなことに構うことなく、アキラは涼しい顔で更に畳みかけた。
「ところで緒方さん、今夜は……わかってますよね? 今度こそボクを失望させないでくださいよ」
 緒方を見下ろすアキラは、まるで比類なき美貌と頭脳を有する若き裏社会の支配者のようだった。
一分の隙もないストイックな詰め襟の制服のせいだろうか、私服の時以上に鬼気迫るものを、緒方は
ひしひしと感じていた。



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