Sullen Boy 8
(8)
「アキラ君、ここに乗れよ」
爪先が冷え切って耐えられなくなったアキラが、仕方なく踵立ちしている様子を見て、
緒方はサンダルを履いた自分の足の上を指差した。
「……そんなことしたら、足が痛くなりませんか?」
「何言ってるんだ。軽いくせに……」
緒方は笑いながらアキラの背中を叩き、指示に従うよう促す。
アキラは苦笑しながらも、素直に緒方の足の上に乗り、フェンスに腕を掛けた。
緒方はアキラの背中に軽く体重を掛けて覆い被さると、両腕を回してアキラの上腕を掴む。
「こうすると背中が暖かいだろ。オレもシャツ一枚で結構寒かったんでね」
「暖かいですけど……でも、やっぱり重いんじゃないですか?」
「この程度は、重いうちには入らんよ」
そう言って、緒方はアキラの上腕を掴む手に僅かに力を込めた。
「それより……ホラ、少し明るくなってきたぞ」
確かに遥か左前方がうっすらと明るくなり始めている。
「暁光だな。もう夜明けか……」
「……暁光…………暁の光か……」
アキラは意味を確認するように、小声で呟いた。
「そうだな。さながら塔矢アキラと進藤ヒカルってところか」
「ボクと進藤!?……どういう意味ですか?」
緒方の言葉に、思わずアキラが振り向く。
そんなアキラを楽しそうに見つめながら、緒方は片手をアキラの頭にそっと置いた。
「2人の名前を漢字にすると、そうなるだろ?」
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