Kids are all right. 9 - 10


(9)
 母親の言うことを男の子は悪戯っぽくニヤニヤ笑いながら聞いています。
「うん、わかったよっ!!でもオレ、あぶなっかしーことなんかしないん
だけどなぁっ!」
 母親は「ヒカルッ!!」ときつく言うと、緒方に向かってぺこりと頭を
下げました。
「無理言って申し訳ありません。お願いしますね」
 そう言いながら、男の子の頭をぐっと押さえ、緒方に向かって頭を下げさせます。
「あっ、あとこのバッグ、この子の服とかタオルが入っているんで、
ここに置かせてくださいね」
 母親は肩から下げていた大きなナイロンバッグをアキラと緒方の座る
ベンチの脇に置くと、中から財布の入った小さな袋を取り出して腕に下げ、
あたふたと公園を後にしました。


(10)
 アキラはその一部始終をキョトンとした表情で見つめていましたが、
自分に向けられた男の子の視線に気付くと、ニコッと笑って言いました。
「ヒカルくんっていうんだ!こんにちはっ!!ボク、とうやアキラっていうんだ!!」
 男の子は身体をタオルでぐるぐる巻きにして、アキラに駆け寄ると、
やはりニコッと笑って言いました。
「アキラっていうんだな!オレはしんどうヒカル!!」
 言い終わるやいなや、アキラの横にぴょんと座り、興味深げにアキラの方を
見つめました。
「なぁなぁ、アキラはふんすいであそばねーのかぁ?そんなのきてて、
あつくねーかっ?」
 アキラは一瞬驚いたような表情をしましたが、すぐに嬉しそうに笑いました。
そして、横に座る緒方のシャツを引っ張って尋ねました。
「ボク、ヒカルくんとふんすいであそんでもいいかなぁ?」
 一応お願いしてはいるものの、アキラはもうヒカルと噴水で遊ぶ気満々です。
緒方はそんなアキラの頬を撫でると、頭の上の茶色い帽子をそっと取ってやりました。



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