注:不二誕生日・本編(つか本番編)です。まずは「予告編」をどぞ。
「ふぅ…………っ」
左手で自分自身を高めながら、手塚は朦朧とした意識の中で考えた。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
「……どうしたの? 今止めたらイけないでしょ?」
手を止めた手塚を牽制するように不二が声をかけてきた。椅子に腰掛け、手塚の痴態を眺めながら、僅かに笑みを浮かべている。不二も同じ薬をわずかな時間とはいえ口にしていたはずなのに、この余裕の差はなんなのだろう。媚薬のせいで疼く下半身を自分で慰めるしかない手塚とは大きな違いだ。
ズボンを膝まで下ろした状態で、膝立ちになりながら、手塚は自慰を続けている。不二は更に促しの言葉をかけた。
「爪先で先のほういじられるの、好きだよね」
「…………んっ」
「やってみて」
頭では自分がどれだけ淫らな行為をしているか理解していた。他人に見られながら自慰をするなんて、普通の精神状態じゃ考えられない。だが、媚薬を使われた身体はもう自分の意識の支配化にはない。不二に言われたとおりに手は勝手に動いた。右手で棹の部分を扱きながら左手で先端部分を弄ぶ。その刺激を受けて硬く持ち上がった手塚自身は先端から露を滴らせながらビクビクと撥ねた。身体を半分に折りながらその刺激に耐える。
「……も……っ!」
どくん、と、手塚の体が大きく揺れた。
★★★
手塚に薬を飲ませた後、不二は何回か舌を絡め合う濃厚なキスを繰り返した。そして放心状態になった手塚をベッドの上に置いて、その場から離れた。手塚は後を追おうとしたが、不二がストップをかけた。
「まだ誕生日プレゼントは有効だよね?」
その言葉を聞いて、手塚はびくりと身体を揺らした。
まだ、悪夢は続いている……いや、むしろこれからが本番なのだ。
「じゃあ、僕からのお願い……」
そこで、不二は軽く間を置いた。いつもの笑顔を顔に浮かべながらこう言った。
「自分でやってみて。ここで見てるから」
「……え?」
最初、手塚は不二の言ったことの意味がつかめなかった。理解したくなかっただけかもしれないが。
そんな手塚に、不二は子供に教えるかのように優しい口調で言った。
「解らない? オナニーして見せてって言ってるの」
「な……っ!」
「手塚が普段一人でどんなふうにやってるのか、知りたいんだ」
なんて事を言い出すのだ、と手塚は小さく叫び拳を握り締めた。だが。
「……っつ……」
立ち上がろうとした足がふらついた。思わずベッドの上に片膝をつく。興奮すると、頭に霞がかかったようにぼんやりとした状態になってしまって何も考えられなくなる。薬のせいだろうか。
「……っう……」
「だってもう結構辛いでしょ、ソコ。前に使ったヤツと同じだから……すぐに効くよ」
言われてみれば、先ほどのキスのこともあり、手塚の下半身は既に反応し始めている。以前に冗談めいて媚薬を使用されたときもそうだった。手塚自信の意識に反して過敏になっている体は、少しの刺激でも簡単に反応を返した。だが、だからと言って人の見ている前で自慰など出来るものではない。手塚は反論しようとしたが、不二はそれを許さなかった。
「僕のお願い、何でも聞いてくれるんでしょ?」
それを持ち出されると弱い手塚だった。
「……それとも自分でヌいた事ないの?」
「っ! そういう……」
「出来るんでしょ? じゃあして見せてよ。ここで見てるからさ……ほら……脚を開いて……」
「……く……」
不二の言葉に誘導されるように、手塚は自らの股間にそろりと手を伸ばした。
その様子を見ながら、不二は満足そうだった。
★★★
こうして、手塚は強制的に自慰をさせられるはめになったのだった。
「……はぁ……っ」
息を荒くながら、手塚は自分のモノを扱き上げた。溢れ出た白い液体は手塚の手を淫らに汚し、シーツには精液が疎らに散った。
「あっ……」
「お疲れ様、手塚」
射精直後の気だるい開放感に水を指すように、不二は手塚に声をかけた。手塚はその声で我に返った。そう、この場には観客がいたのだった。最初から最後まで見ていた観客が。
不二は椅子から降りると、手塚のほうに近づいてきた。
「……不二」
文句を言うつもりで発した声が、気がつくと縋るような声になっていた。
不二は手を伸ばすと、手塚の顔を抱え込んで、腕の中に抱きしめた。
そして手塚の耳に直接甘い声を注ぎ込んだ。
「でも……まだ、足りないでしょ?」
「!」
不二はそう言うと、濡れた手塚の左手を自分の右手で取り、再び手塚の股間に触れさせた。一度達したソコはまだ十分な硬度をもって鎌首をもたげている。二人の手が重なって擦るたび、簡単にその刺激を取り込んでいった。
媚薬を使っている、という意識が手塚が普段持っているセックスに関する罪悪感を軽くしていた。これは自分の意志ではない、薬によって熱に浮かされたような状態になっているだけなのだと。だから、濡れた音を立てて弱い場所を揉まれても、自慰を強要されその一部始終を見られていた事に比べればマシだと思えた。
「……前だけでいいの?」
垂れ下がる陰嚢に触れながら不二が呟く。その意味を手塚が捉えきれないうちに、不二の手に導かれた手塚の手は、更に奥にある場所に届いた。
「……っ! 不二っ!」
驚いた手塚は身を強張らせた。自分で直接後ろの穴に触れた事など無かった。弾力ある肉の感触に思わず腕をどけようとするが、不二の手に押さえつけられていてそれは叶わなかった。
「ここがいつも、僕を受け入れてくれてるんだよ。可愛いでしょ?」
「やめ……っ」
先ほど出した精液を周辺に塗るようにしながら、不二は手塚の指を使って秘所を柔らかく丹念にほぐしていった。焦ったのは手塚だ。いくらなんでも、自分でそんな場所を触るなんて信じられなかった。
ましてや、指を入れるなんて。
「嫌……だっ……」
だが、不二は手塚の抗議は気にせずにどんどん指を進めていった。
くぷ、と左手の人差し指の第一関節が奥に入り込む。硬い筋肉が指先を覆う感触が何ともいえなかった。痛みと羞恥でがちがちに緊張したそこはなかなかそれ以上指を受け入れなかった。
「たの……やめて……くれ……っ」
「どうして? ここも可愛がってあげないと不公平でしょ?」
「……ひっ……ぃ」
不二は無理やり手塚の指と自分の指、二本を手塚の内部にぐいと押し込んだ。そして中を掻き混ぜるように指を激しく動かした。
「こうするとすぐによくなるよ」
「うっ……く」
内臓を掻き混ぜられるような痛みだけが先行して、手塚は声を詰まらせた。初めて味わう自分の肉は熱く、そしてギチギチに狭く、少し動かすだけでも裂けるような痛みが走る。そうやって、自分で自分を犯していることに対して、居た堪れない気持ちが沸き起こるが、不二の指は中で動くのを止めようとはしなかった。どんどん自分の内部が熱を帯びてくる様子が解る。押し出そうとぎゅっと締め付けてくる肉の感触も自分の指に伝わってくる。自分がいったい何をやっているのか、考えるだけで眩暈がした。
「どう? イイでしょ、君の中……」
「あっ……」
指はやがて、前立腺に触れた。不二と自分の指がそこを押すたびに、前にダイレクトに刺激が伝わり、腰ががくがくと震える。媚薬のために敏感になっている体は、与えられる快楽を素直に取り込もうとした。身体をひねるたび内部を擦る指の場所も変わって、それが思わぬ刺激を手塚に与える。
何時の間にか不二の指に頼ることなく自分で指を動かし始めていたことを、手塚は意識しなかったが、不二はその様子を満足げに眺めていた。手塚の前も後ろへの刺激で気がつけば大きく成長している。
プライドの高い手塚が、あの「左手」で自分自身を犯して感じている。それだけで、不二にはかなり満足だったが。
だが、ここまで来たら。
「……指なんかで、足りる?」
「っく……」
「もっと奥まで届くものの方がいいよね、手塚」
「そ、んなっ……」
泣き出しそうな声で手塚は答えた。不二の意図しているところが読めたからだ。
「……僕のもしてくれるよね?」
お願いをするような口調で頼まれたそれは、しかし脅迫とほとんど同じだった。
★★★
ベッドに足を投げ出して座り、上半身を起こした不二は、ゆっくりと手塚を近くに呼んだ。
「んっ……」
手塚は言われたままに四つん這いになりながら、チャックだけを広げた不二の股間に顔を埋めた。
口でするのは初めてではない。だが、慣れるほど何回もしている訳ではない。眼前にあるものが自分に付いているのと同じ男根であるという事実に対する拒否感は拭えない。
だが、不二の視線は行為を拒む事を許さなかった。
どうにでもなれ、といった投げやりな気持ちで、手塚は不二を口にした。先の部分を全体的に舐めた後、口に含んだ。
「そう……うん、もっと奥まで飲み込んで……」
「……ふっ!」
上あごに先端があたり、息がむせる。咥えるには少々大きすぎるぐらいに怒張した不二を口一杯に頬張ると、カウパー液の苦い味が口の中に広がった。
「く……」
ここまでしてやるつもりは、正直手塚にはなかった。だが、頭がぼんやりとして拒みきれなかった。あの薬のせいだ、と手塚は自分に言い聞かせた。
一度達したのに疼きが消えない下半身も、ピクピクと何かを待ち受けるように蠢く後ろも、そしてこうやって不二自身を口で高めてやっている自分も。
全て薬のせいなのだ、と。
不二が身体を浮かすようにすると、手塚の喉の奥まで先が入り込んでくる。嘔吐感が込み上げて来るが、必死で耐えた。
その肉塊を別の場所に埋め込まれた時のことが不意に思い出されて、思いがけず下半身が反応した。
そんな手塚の反応を見抜いたかのようなタイミングで、不二が声をかけた。
「……もう、いいよ、手塚」
「……むぅ……」
何度か腰を揺らした後で、不二は自身を手塚の口から抜いた。
充血し唾液に濡れた不二のそれはてかてかと光っており、ピンと上をむいて屹立していた。
「これ……もう一つの口にも入れて欲しい?」
「……っ……」
正面から向き合いながらそんなことを言う不二に対して、手塚は顔を赤くして横を向いた。いくらなんでもそこまで言えるはずが無い。
不二は答えない手塚に業を煮やし、手塚を自分を跨がせる形で膝立ちにさせると、後ろに再び手を伸ばしてきた。
「ここは欲しがってるのに」
「やめ……っ」
「自分でも触ったでしょ……手塚の中暖かくて……溶けそうで」
「い、言うな……!」
不二は再び、一度ほぐした手塚の後ろの穴に指を差し入れた。簡単に不二の指を受け入れたそこは精液と汗で濡れて物欲しげに疼いている。不二の指をもっと奥まで引き込むように蠕動する内壁の様子は手塚自身にもありありと分かった。
「ここに、僕のもの、欲しい?」
「っ……く、はっ……」
手塚は何も言わなかった。不二の指の動きに意識が集中していて何も言えなかったのだ。3本に増えた指はバラバラに動きながら手塚の弱い場所を重点的に攻め立てた。
ぐりぐりと何度も中で捻ったあと、指を引き抜きながら不二はこう言った。
「欲しいでしょ?……だったら、自分で入れて」
「……あ……」
目の前にはいつも自分を貫く熱い塊が存在している。指で蹂躙された後ろが、その更に強い刺激を欲しがっていることは手塚自身、十二分に解っていた。
でも、自分で入れるなんて。そんなこと。
首を横に振る手塚に対し、不二は困ったように眉根を寄せた。
「出来ない? じゃないと……このまま、ほっておくよ」
不二は意地悪げに微笑んだ。
自分で入れるなんて、そんなこと、考えた事も無い。だからといって、このままの状態で放置されるのもたまらない。
「っ……」
薬のせいだ、と自分に言い聞かせながら、手塚は意を決した。
不二の肩に両手を置き、ゆっくりと腰を沈めていく。
手塚のそんな様子を、不二は満足げに眺めた。両手で手塚の腰を支えながら、自分では決して動こうとはせず、サポートに徹する。
ひくついている入り口に切っ先が触れた瞬間、ゾクリと手塚の体中が総毛だった。
「……焦らなくていいから」
不二の声が耳に優しく響く。その声で手塚は少し落ち着きを取り戻した。
「ふ……っ」
ほぐされきったそこは最初、抵抗も少なく不二を受け入れた。筋肉の壁を貫きながら先端部分が奥へとのめり込んでくる。それをゆっくりと内部へと受け入れていく。
だが、一番太い部分を飲み込んだ時、急にバランスを崩した手塚は、そのまま重力に任せて腰を沈めるはめになった。
「はっ……ぁ……あ!」
勢いよく奥まで全てをくわえ込みながら、手塚は耐え切れずに不二にしがみ付いた。不二に抱きついた格好になっている自分が情けないと思う暇もなかった。不二が手塚の腰を抱え込んできたからだ。
「ごめ……ちょっと君、可愛すぎ……もう我慢できないや」
言いざま、不二は手塚の腰をぐっと持ち上げた。ずるりと内部から出て行くそれを、出ていかせまいと無意識のうちに締め付けたのもつかの間だった。不二はすぐに腰を打ち付けて、先ほどよりも深く内部に潜り込んできた。
「ひっ……」
激しく何回も腰を揺すられる。
ぼんやりとした意識の中で、結合の濡れた音と揺れる腰の感覚だけがリアルだった。声を押さえる余裕すらなかった。
「は……あ、っあ……!」
「ごめんね、手塚……」
薄れゆく意識の中で、不二がそう呟いたのを、手塚は耳にした。
★★★
「……君に謝らなきゃならないことがあるんだけど」
コトが全てすんだ後である。布団に半分顔を埋めながら、不二は手塚の方を伺った。手塚は重い頭を動かしながら不二の方を見た。不二がいつになく殊勝な顔つきをしているので、少しは反省しているのかと思った。
最初にキスをして薬を飲まされてから何時間たったのだろうか。少なくとも窓の外は明るくなり始めている。途中から意識を失ったとは言え、下半身の重さからすると相当無理をさせられた事は間違いない。
そもそも、意識を失う前からかなり無茶な事を要求されていた。例えば、自分でしてみろと言ったり、口でしろと言ったり、あげくのはてには……。
手塚は頭を横に振ってそれらの記憶を追い払おうとした。あれは薬のせいだったのだ。自分の本心ではない。
だが、不二の口から出た台詞は、手塚を奈落へと叩き落した。
「君に飲ませたあの薬……実はただのビタミン剤なんだ」
「……!!!」
不二の衝撃の告白に手塚は顔を真っ青にした。
あの薬が媚薬で無いとすると、つまり自分は。
あれらの行為を全て、自分の意志で。
「だってあんなに乱れてくれるとは思わなくて……ちょっと歯止めが効かなくなっちゃって……」
「……っ……っつ……」
ショックの余り口もきけなくなっている手塚を見ながら、不二は顔を赤らめた。
「それに昨日の君……すごく可愛かったし……こんなに上手くいくとは思わなかったし……」
「…………ッ…………」
思わず涙目になりながら手塚は不二の弁明を聞いていた。その顔色は既に青から真っ赤に変わっている。
「でも……最高の誕生日プレゼントだったよ、手塚」
不二は心底満足げに微笑んだ。
その笑顔を見た手塚の中で何かが切れた。
「……っお前! グランド100周だーっ!!!!」
混乱した手塚の叫び声だけが、早朝のご近所に響き渡った。
<終幕>
ごめんなさい……
数ヶ月ぶりに書くからエロにしようと思ったら……思ったら……
全世界的にごめん……親父不二と淫乱塚でごめん……。
……もともと、手塚にやって欲しい事候補として
「フェラ・強制自慰・騎乗位・キス」という四項目があって
「どれがいい?」と友人に聞いていろいろと話してたら「じゃあ全部」ってことになっちゃった訳で。
……つまり全ては彼女のせいってことで(責任転嫁)。
長らくお待たせしてこんなオチで申し訳ない……精進します。
そういやタイトルは思いつきだったんですが、元ネタ小野不由美さんですね……『HOME、MY SWEET HOME』か……
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