ジョージ・スタイナー



『マルティン・ハイデガー』
 (岩波現代文庫
 2000年9月刊
  原著刊行(邦)1992年
  (原)1978年)
 少し前からハイデガーについて勉強を始めていて、とはいっても、本当にかじり始めたばかりで、まだ勉強の「べ」の字にもたどり着けていない気もするのですが、さはあれ、今月のアタマで呼んだ「ハイデガー『存在と時間』の構築」に続いてのハイデガー入門書、ということになります。
 2000年の9月に岩波現代文庫で文庫化された本書のもととなったのは1992年の岩波書店『ハイデガー』。そのさらに元になったジョージ・スタイナーの原書刊行が1978年となっています。そして、この本が刊行される際に常についてまわるのが「ハイデガー入門書の決定版」的な言辞らしく、この岩波現代文庫版の帯にも、また同文庫に入っている他の本の、巻末での紹介においても、「ハイデガー入門の決定版」という文字が踊っている。
 …わけですが。
 どうにも哲学方面には門外漢のままの僕としては、本当にこれで入門書なのかといった思いを抱かざるを得ません。
 ありていに言ってしまって難しい。正直なところ、木田元先生の「ハイデガー『存在と時間』の構築」を読む前にこっちを読んでいたら、どれだけ理解できたか怪しいものです。というか多分放り出していたことでしょう。
 さいわいに、「構築」でもって、ハイデガー思想の見取り図をあらかじめ自分で持っていられたので、その見取り図と対照させながら読んでいくことで、大意をつかむことくらいはできたかなと思いますが、実際のところ、これを読んでハイデガーを学び始めるのはなかなか大変なんじゃないかなぁ。
 悪いことは言わないので、ハイデガーを勉強しようという人は、この本の前に、もうちょっとくだけた解説書を読んだ方が身のためだと思います。

 しかし、そうは言っても、これはやっぱりハイデガー思想の入門書というふうに位置づけないといけないんでしょう。
 ナチスとの関わりを含め、歴史という文脈の中でのハイデガーの位置づけからはじまって、ハイデガーの思想を概括的に振り返り、とりまとめているというのは、やっぱり専門書の中では「入門書」になってきます。まぁ、それはしょうがないよね。他の専門書は、もっと細かい部分に向けて問題を絞り込むのが目的なんだから(自分の論を他の人に理解してもらう、という執筆目的はあるにせよ、ある程度ベースになるものを持っている人を相手に書かれるのが論文というものだということ。したがって論が細分化していくことが許されるわけです。限度はあるにしても)。
 とはいえ、僕としては、原著が入門書シリーズの中の1冊であったということをもって、これを入門書だと言い張るのは気が引けてしまうわけですが。

 少し内容に入り込むと、本書で僕が少し新しい知見をのぞかせてもらったのは、ハイデガーの思想と「言語」というものとの関わりについてでした。
 ハイデガーは、「これこれの言葉は元はラテン語のこれこれから語源が来ていて、そこにはこれこれというルーツがあって」ということを踏まえて、いろいろと独自の用語法をやるらしいんですが、そこのところで、どうもハイデガーの中で、「存在」というものと「言語」というものとの深い関わりが認識されているんだ、というわけです。
 つまり、「かめはめ波、とはそもそもハワイで風が吹いたら遅刻して雨が降ったら休んで、という生活をしていたカメハメハ大王から語源が来ているが、このカメハメハ、とは正確にはハメハメハ、であり、ハワイの言葉では『さみしい人』とか『孤独な人』を意味する一方、亀仙人の「亀」とも音素的に響きあう」ということを踏まえてかめはめ波を撃つようなものですか。
 …かなり違うな。
 ま、まぁ、要するに、「存在」というのは、原存在(人間)の中で、初めて少しだけその姿を現す概念であるけれども、それは人間の思考が特別であるということではなく、むしろ「言語」というのが、その「存在」という現象をとらえる舞台になるのだ、ということのようです。なんか結局よく理解できてないのかな、僕も。
 「構造」では、あんまりこの「存在と言語」というファクターには深く触れられていなかったので、このへんは面白かったです。
 ただ、このへんについても、読んでいて、「構造」で得た知識を組み合わせて理解していたような感じだったので、そのあたりがどうなのかなと。もしかすると、「構造」での読解に影響を受けすぎた理解の仕方なのかもしれません。
 読んでいて、もしかすると訳がこなれてないのがいけないのかな、とも思ったんですが、しかし、もともと、原書の中にもがっつんがっつんドイツ語が入ってきているようだったので、これはもうどうしようもないのかな、という気もします。
 まぁとりあえず、この本で得たものもあると思うんですが、この本からハイデガー理解を始めようとは思わない方がいいんじゃないか、ということですかね(投げやり)。
(2002.6.23)


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ジョージ・スタイナー

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