<きっかけ>

あたしは悩んでいた…

グスタフ先輩にクラリネットのお礼をちゃんといってないのかも、と。

相変わらずあたしはどもりっぱなしだからしっかりお礼をいったかどうか不安だし…

やっぱりこうゆうときはお礼の品ってのが大切だよね。

どうしよう…

なんか買ってっていうのはなんか変だし…

うーん

あれこれ考えてて1週間が過ぎてしまっていた。

「亜都ちゃん。お願いがあるの…」

「どうした?ゆか」

学校帰りに亜都ちゃんのお家に遊びに行ったときの事。

この話をするためにあたしは緊張していた…

深呼吸をひとつ。

「…あのね、いろいろ考えてたんだけどね。お礼をしてないからお礼をしようと思うの。」

亜都ちゃんがぽかんとしてる。

「誰にや??」

妙に緊張しつつ答える。

「あ、あのね・・グスタフ先輩。ほ、ほら、この前のクラリネットのお礼…」

名前のとこだけ妙にちっちゃい声…

「あっ、ダグラス先輩か!!(爆)そらしなあかんで!!」

亜都ちゃんがぽんっとてを叩きながらいった。

「だから、グスタフ先輩だって…」

やっぱりちっちゃい声で否定するあたし。

相変わらず名前を勘違いしてるんだもん。

「やっぱりした方がいいでしょ。で、何をお礼にしようか考えたんだけどクッキーがいいかなぁっておもって…」

「よろこばはるで!!結花えらい!!やっぱりお礼しなな♪」

亜都ちゃんはうきうきしながら答えてる。

でも、亜都ちゃんにそう言われると自身が沸いてきた…

「そうだよね。だから今度いっしょにクッキーつくろ。」

「うん!!うちも月先輩にあげてみよっかなぁ♪」

「そうしよ♪だから今度のお休みにでもあたしの家にきて。」

「うん!!いくわ!!」

そして次の日曜に二人でクッキーを作ったの。

(いろいろと大変だったの。亜都ちゃん、料理苦手だから…)

先輩に上げるクッキーは甘いのが苦手だと困るから、少しお砂糖控えめのアイスボックスクッキーにした。

「結花、メッセージカード入れとき。」

「え?なんで。」

クッキーをラッピングしながら亜都ちゃんがあたしに言った。

「ちゃんといえる?ダグラス先輩にこれこれ、こうゆうお礼やて。」

・・・あう。

「いえないと思う。」

「だからこそや、カード入れとけばいくらなんでもダグラス先輩に伝わるって。」

「…そうだね。書こうっと。」

ラッピングと同じ淡いブルーのカードにした。

だけど、それを書くのに2時間も掛かるとはあたしも思ってないかった…

なんて書けばいいか悩んだんだもの!!

次の日のお昼休み…

「ほんまに一人でええの?」

亜都ちゃんが心配そうに見てる。

「う、うん。」

そう答えたけどあたしは真っ青になってた…

高2特別クラス近くの廊下にいた。

あたしの外人が苦手だと言うのは直ったわけではなかったから、この付近はあたしにとって地獄の3丁目に近いものがあった。

でも、でも…あたし一人で行こうと決心した。

今日の部活で確実の会えるとは限らないし。

(人数が多いから会えない事の方が多いから)

「…いってくる!」

クッキーとカードを入れたラッピングを手にしたあたしはちょっと震えてた。

「だめなときは戻ってきな、無理せえへんようにな。」

「うん…」

あたしはどきどきしながら特別クラスの入り口に立った。

…どうしよう。

どうやってグスタフ先輩を探そう…

入口から教室の中が見えるけど…

あう…外人がいっぱいだよぉ(涙)

日本人もいるけど声かけにくい…

おろおろしてると誰かが出てきた。

聞くしかない!

「あ、あの!」

ぎゅうって目をつぶって、下を向きつつなんとか声をかけた。

日本人だとといいなぁ…と思いつつ。

「はい?」

…う?どこかで聞いた事がある声。

恐る恐る顔を上げるときれいなブロンズの髪。

なんともラッキー、グスタフ先輩本人だった。

いつもの穏やかな顔してる。

「あ、あのこれ!」

あたしは慌てて手にしていた袋を差し出した。

その手は小刻みに震えてたけど…

「え?」

何が起こったのかのような顔をしてる、グスタフ先輩を見てあたしは。

「こ、この前の、ク、クラリネットのお礼ですっ!」

何とか言えた♪

それを聞いて納得してくれてんだと思う。

「これを、私に?」

あたしはもうぶんぶんと首を縦に振るだけ…

袋を受け取りながら「ありがとう」と言ってくれた。

受け取ってくれた。

「そ、それじゃぁ、失礼しますっ!」

あたしは挨拶をすると亜都ちゃんの待つ廊下の角に向って駆け出した。

なんとか渡せた!

それしかあたしの頭のなかにはなかった。

「ゆか!待ってや!」

あたしはあまりの緊張で亜都ちゃんの前を走り去ってた…

亜都ちゃんに腕をつかまれてやっとそのことに気がついたあたしだった。

「渡せたやん!!」

「う、うん。亜都ちゃん、渡せたよぉ…」

顔を紅潮させながら答えた。


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