<へんか>

5日目の夜。
今日も亜都ちゃんとエーディトちゃん(ちゃん付けじゃなきゃ駄目!と本人から釘をさされている)の二人はおしゃべりをはじめていた。
ほんと・・・どこからお話の話題が出てくるのかしら。
あたしはのんびりと食堂のテラスに出てきていた。
テラスからはライトアップされた広い庭園が見ることができていた。
「結花さん。」
「はい?」
「どうしようかと思ったのですが・・・。」
先輩に呼びとめられたのだけど。なんだろう?
「明日、一緒に行ってもらいたい場所があるのです。」
先輩の顔を見てみると。
一緒に…ってみんなでって言う意味じゃなさそう。
「えっ?!ふ、二人でですか?」
おそるそる聞いてみる。
「そうです。二人だけで行きたい場所があるんですよ。」
先輩はそう言ったけど。
あたしには断る理由もないし。
で、でも、なんだろう。
「わ、わかりました。」
あたしは返事をした。
「ありがとうございます。明日のお昼ごろ、一緒に行きましょう。」
先輩と約束をしてあたしは亜都ちゃんの待つ部屋に向ってた。
ふと、頭によぎった事…
そんなことない!
「そんなわけ…ないよ。」
あたしはそう自分に言い聞かせた。

翌日、とってもいい天気だった。
「さぁ、行きましょうか。」
先輩がそう声をかけた。
でも、いつもの口調なんだろうけど…
何か違う。
「は、はい。」
あたしは緊張してた。
考えてみたら先輩と二人で出かけるの始めてだ。
亜都ちゃんに昨日相談しようかと思ったけどやめた。
これはあたし一人で考えなきゃ行けないことのような気がして。
「先輩。今日はどこに行くのですか?」
車に乗ってから、先輩ずっと黙ったままだったからあたしから切り出した。
こちらに着てから先輩はずっと助手席に座ってた。
でも今日はあたしと一緒に後部座席に座ってる。
いつもは和やかな車内のはずなのに今日はずっと何か張り詰めたものがある。
「すぐ近くなのですがね。10分くらいで着きますよ。」
先輩はそういってまた黙ってしまった。
あたし、本当にいいのかな?
一緒に行っても…
あたしがここにいてもいいのか不安になってきた。
そう考えてるうちに目的地に着いたようで車が止まった。
車を降りると先輩が運転手さんに何か言ってる。
あたしは周りを見てるしかなかった。
どこだろ?ここ…
観光地ってわけでもなさそうだし。
「結花さん、こっちです。」
そういって先輩はあたしの手を取った。
え、ええええっ!
いきなりだからあたしは驚いた。
「せ、先輩?」
先輩に声かけたけど先輩は黙ったまま。
心臓がばくばくいってる。
何がなんだかわからなくなってきた。
先輩に誘導される形で丘の道を歩く。
顔が熱い…
歩いてるとかじゃない…恥ずかしくてとも違う…
「この道はなつかしいですね・・・。」
先輩がふいにつぶやいた。
「懐かしいのですか?」
あたしは質問した。
「ええ。昔、よくここを散歩したんですよ。」
周りを見ながら答えてくれた。
ここは先輩の思い出の場所なのかな?
でもだったらなぜあたしだけなんだろう…
みんなできても良いはずなのに。
「もうすぐ目的地ですよ。」
先輩がやさしく言った。
顔を上げて丘の上の方をみると白い建物が見える。
「あの白い建物ですか?」
あたしがそれを指差すと先輩が「ええ。そうです。」と言った。
さらに近づくととそれは…
「病院?」
よく物語とかで出てくるような外観の病院だった。
「その通りです。あの病院に行きたい場所があるのです。」
そう言った先輩はどこか決意したようなかおしてた。

先輩のあとを着いて行くと3階の部屋についた。
途中知り合いなのかいろんな人に先輩は声を掛けられてた。
そして決まって後ろにいるあたしを見ると驚いた顔してた。
最初は日本人だからかな?って思ってたけどどうやらそうじゃないみたい。
これからいくところに何か答えがあるはず…
先輩がドアを開けると風が通りすぎてった。
真っ白い何もない誰もいない部屋…
ひとつだけ、色のついてるものがあった。
あたしのもってるのと同じ写真立てがあった。
「ここです。結花さんと来たかった場所というのは。」
ドアを閉めながら先輩が言う。
「こ、ここですか?」
ここが先輩があたしを連れてきたかった場所?
なぜ?
それが頭の中でぐるぐるしてる。
「そうです。」
あたしは先輩に進められた椅子に座って、先輩はベットに座った。
先輩は写真立てをてにとって見てる。
のぞきこむと写真が入れてあって二人の人がいる。
男の人と女の人。
男の人…見たことある。
女の人は見たことないけど綺麗な人…
「彼女は私の昔の恋人です。男の方は私ですね。」
先輩がそう言った。
…えっ?
「こ、恋人ですか?!」
先輩のほうを見た。
思った事が言葉に出ちゃった。
そう言われてみると男の人先輩だ…
そりゃ先輩に彼女がいいなんて思ってなかったけど。
オーストリアに恋人がいたとしてもおかしくない…
でも、わざわざあたしにそんなこというなんて…
「そうです。もっとも、今はもういませんけどね。」
先輩があたしの目を見ながら話す。
緊張してると言うか真剣な表情。
でも少し哀しそうな表情…
あれ?今はいないって…
「今はいないって…?」
あたしが聞く。
「今はもういません。そう。3年前に彼女、エリー・・・エリザベート・サンドはこの病室で亡くなったんです。白血病のためにです。」
先輩は一呼吸した。
なくなった?
先輩の恋人が?
あたしはどうすればいいのかわからなくて黙ってるしかない。
先輩の言葉を待つしかなかった。
「長い話になりますけれど・・・・聞いてくれますか?」
先輩があたしに聞く。
あたしはただうなずくしかなかった。


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