<偶然>

HRも終わり掃除も終わってみんな帰り支度を始めてる週末の教室。

「結花♪今度の休み買い物付き合ってぇな。」

亜都ちゃんが後ろから抱きついてくる。

「う?いいよぉ。午後からなら。どこに行くの?」

「ふふふ♪秘密。」

な、なんなんだろう…

亜都ちゃん、時々行動力アップするんだよねぇ。

「秘密って…亜都ちゃん?」

「当日のお楽しみや♪これから部活だからほな。」

手を振りつつ、亜都ちゃんはそう言うと教室を出て行った。

…ど、どこに行くんだろ。

手を振り返しながら不安になるあたしだった…

 

「ここやねん♪」

「ふわぁ…」

亜都ちゃんが行きたがっていたお店は…

おさるさんがいっぱいだった。

「すごいやろ♪目つけてたんや。」

そう言うと早速亜都ちゃんは物色し始めた。

はう…

30分後。

「ふふふ♪」

両手いっぱいに買い物をして満足そうな亜都ちゃん。

「亜都ちゃん、あたしも買い物あるから付き合ってくれる?」

「ええよぉ♪」

幸せそうなかおしてる…

「ありがとう。ここから近いから。」

今日の部活で、リードをもうそろそろ買っておかないとって気づいたから。

「どこにいくの?」

「楽器店。リードを買うの。」

「リード?」

「うん。」

「そっか。」

楽器店に入ってまず、リードの売り場に行ったのだけど…

「なぁ、ゆか。いいかげんに…」

「も、もうちょっと待ってね、亜都ちゃん。」

あたしはかれこれ30分以上悩んでいた。

最初亜都ちゃんはドラムやギターを見てたんだけど…

痺れを切らし始めていた。

今使っているリードでもいいのだけど、なんかしっくり来ない。

なんでか、わからないけど…

それにもっと、うまくなりたいし。

…リードを変えてもすぐに上達しないって事はわかっているのだけど。

亜都ちゃんは暇そうにきょろきょろと店内を見ていた。

誰かを見つけたらしい亜都ちゃんが叫んだ。

「あっ。ダグラス先輩!!」

「えっ」

亜都ちゃんがダグラスと間違えるのはただ一人…

顔を上げ、振り向くと、やっぱり!

グスタフ先輩だった。

にゃぁぁぁぁぁ!!

慌ててうつむいてしまった。

はう…

「グスタフですよ。こんにちは。」

先輩、気にしてるのかなぁ…

亜都ちゃん、なかなか一度覚えちゃうと訂正が難しいから。

うにゃぁ…

先輩がどんどん近づいてきた。

よくよく考えてみると、この前のクッキー以来顔を合わせるのははじめてかも…

ますますあたしは顔をうつむかせた。

なんだろ、顔が熱い。

緊張のせいかな?

ぐるぐる考えてたあたしの脇で亜都ちゃんはまったく気にしてないようで、グスタフ先輩に話しかけている。

「ダグラス先輩からも何とかゆったってーな。」

だからグスタフだって…

先輩はあきらめたように訂正しないで答える。

「どうしたのですか?」

「ゆかがなんか選ぶんに時間がかかって。」

うにゃぁぁぁ

亜都ちゃんたらっ。

「リードですか?」

あたしに尋ねる先輩、あたしはうなずくのが精一杯。

「何で迷っているのです?」

あたしを気遣って穏やかに尋ねてくれた。

「え?えっと…。どんなリードを使ったら上手に吹けるかなって…」

…最後の方はごにょごにょと口篭もった。

「今はどのリードを使っているのですか?」

えっと…あたしは今使っているリードの箱を指差した。

「このリードですか…。音は出しやすいけど、この薄さだと音がうすくなっちゃいます。

上手くなりたいのでしたら、もう少し厚いリードを使うといいですよ。

最初は吹きにくいと思うのですが、そのうちなれてきますから。

そうしたらいい音が出るようになりますよ。」

いくつかのリードを指差した先輩はやさしく微笑んだ。

「はい、ありがとうございます。」

あたしはお礼を言ったけど先輩聞き取れたかな?

「では、私も買い物があるので。」

「ダグラス先輩、またっ。」

元気よく亜都ちゃんが言う、でもやっぱり間違ってるよぉ…

「ほらっ。ゆかもいわな。」

亜都ちゃんがあたしの脇を小突いた。

「えっ?ええ?」

いきなりそう言われても…

「ゆかさん、でしたよね?この間はクッキーありがとうございました。

とてもおいしかったですよ。では、また会いましょう。」

先輩はそのまま店内の奥に入っていった。

「ゆか!名前覚えてもろたんやん♪」

「亜都ちゃん、相変わらずグスタフ先輩の名前間違っているよ。」

「ええの、ええの。で、何にする事にしたん?」

まったく気にしてない…

「うーんと…」

「これ、これにする。」

それから5分ほど考えてから先輩の進めたうちの一つにした。

会計を済まして、やっと楽器店を出る。

「ごめんねェ、時間掛かっちゃって…」

「ゆか、ほんま、選ぶの時間掛かるんやもん。ま、それだけ慎重だってことやし、ええよ。」

バス停に向って歩き出す。

「あっ♪」

亜都ちゃんがまた誰かを見つけたみたい。

またグスタフ先輩…?

「ゆか、ここで待っててな。」

亜都ちゃんの目線の先には、えっと見たことある…

そう、高史那先輩だ。

高史那先輩は信号待ちをしているようで、まったく亜都ちゃんのことに気づいてない。

ゆっくり背後に近づく亜都ちゃん。

大体予測はつく…

「継さぁぁぁぁん!むぎゅ!!」

「ぐわぁ!あ、亜都おまえ。やめろ!」

やっぱり…

亜都ちゃんの背後からのぎゅうの餌食になっている…

「継さん、これからどっかいくん?」

「帰るだけだよ。いいかげん離せっての!」

「ほんま?じゃあ、いっしょかえろ♪」

「おまえも一人か?」

「ゆかといっしょ♪ゆか〜」

亜都ちゃんがよんでる。

ぽてぽてと亜都ちゃんのもとまで行く。

「こ、こんにちは。高史那先輩。」

「…おう。」

な、なんか近寄りがたい雰囲気なんだよね。

「ゆか、これからどっかいく予定あったけ?」

「ううん、ないよ。亜都ちゃん帰るの?」

「継さん帰るってゆうさかい。一緒に帰るん♪」

そういって、亜都ちゃんは高史那先輩の腕にしがみついた。

「一緒に帰るっていってないぞ!」

先輩すごく迷惑そうなかおしてる…

「そっかぁ、じゃあまた明日ねぇ。」

「うん♪」

亜都ちゃんとわかれたあたしはバス停に向った。

「えっと、これからのバスは…」

バスの路線表っていまだによくわかんない。

これ…かな?

あたしはバス停に並んで1分後にきたバスに乗り込んだ…

 

5分後。

なにか違う。

バスの外の風景がなんか違う〜

もしかして、乗り間違えたかも…

はう…

と、取りあえず降りよう。

次の停留所でおりた、あたしはバス停の時刻表を見てた。

バス、40分後だ…

休みだから、本数少ないんだよね。

どうしよう…

周りを見てみると…あれ?

喫茶店だ。

『TEA ROOM SEASON』

うーんと、ティールームは読めるのだけど…

SEASONってなんだろう?

紅茶の専門店なのかな?

どうせ、40分も時間が有るんだから…

道路を渡ってあたしはその喫茶店に入った。


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