新世紀エヴァンゲリオン別版
心の壁

第参話

関西の使徒


作:カプリ・Kさん

サキエルは、明らかに劣勢だった。
数日間かけて、十数人に及ぶ若い男の精を搾り取ってパワーアップした光の槍も、
アダム…碇シンジの操る、小さい分エネルギーが収束し強力になったナイフに止められる。
「諦めた方がいいと思うよ…随分、力も弱まっているようだし。」
シンジが、プログレッシブナイフを一振りして言う。
「…あんだって?」
サキエルの動きが止まる。
「諦めろ、だってぇ…?」
シンジは直感した。やばい、何か来る…と。
ふざけんじゃないよっ!博打もやったことのない坊ちゃん刑事がこのアタシに!
瞬間、閃光が走る。
「ごぼっ!」
シンジの口から鮮血が溢れる。
だが、続けてサキエルの光り輝く拳がシンジの鳩尾に叩き込まれ、シンジは更に苦悶の表情を浮かべることとなった。
「今まで吸い取った全部の力を今、集中させる!今までこれをやらなかったのはアンタをやった後にエネルギーがゼロになっては、
タブリスを倒すことができなくなっちまうからだ…
だけど、もういいさね!あとはアダム、アンタをブッ殺したらタブリスが来る前にケンスケを諦めて逃げればいいだけだからなぁっ!
サキエルの両腕に光が灯り、その拳でシンジを執拗に痛めつける。
「死ね、アダム!」
右腕に全エネルギーが集まり、もはや直視することすら出来ない程の光を放つ槍がシンジを貫いた。
そのままシンジは、伸びる槍に引きずられて電柱に激突する。
「かはっ」
シンジの吐いた血が、地面に飛び散った。
「さて、タブリスが嗅ぎつける前に逃げなきゃね…」
サキエルが踵を返すと…そこには、ケンスケが立ちはだかっていた。
「何してるの、ケンスケ君?どきな。」
「退かない。」
ケンスケは、サキエルに一歩近づく。
「…アタシはアンタを殺さないって言ったけど、場合によるよ。」
サキエルの右腕に小さな、しかしケンスケを殺すには十分なエネルギーが迸る。
「嫌だっ!せめて、渚さんが来るまでお前をここに止めてやる!」
「熱いね…好きだよ、そういうの。でもね、相手を考えなきゃね。」
パァン!
ケンスケとサキエルの間に、赤い障壁が一瞬だけ現れ、ケンスケを弾き飛ばして消える。
「あぐぁ…いてぇ…」
サキエルは、苦しむケンスケを一瞬だけ見つめると再び歩き出した。
だが、その足をケンスケが掴む。
「行かさないって言ってるだろ!絶対、い…がっ!」
サキエルの右足がケンスケの顔面にめり込み、眼鏡が割れる。
「いいかげんにしろ…っ!?」
サキエルは、その時気がついた。…自分の背後から発される、恐怖の障気に。

碇シンジ?

本当にそうだろうか?

猫背を通り越して折れ曲がった背中、だらんと垂れ下がった両腕、真紅の瞳。

「アダム…この死に損ないが!」
サキエルは、最後の力を振り絞り先程と同程度の槍を繰り出す。
しかし、シンジの前に展開されている強烈なATフィールドに止められ、槍は四散した。
「フィールドが…中和できない!?ゲボッ!!!」
シンジの右腕が目にも止まらぬ速度でサキエルの首を掴んだ。
そのまま軽々と持ち上げると、サキエルの首を片手で絞め始める。
鋼鉄よりも堅い筈のサキエルの首の骨が、ミシミシと音と立てて破壊されていく。
「あが…が…」
サキエルが薄れゆく意識の中で放った槍は、フィールドに干渉する前に立ち消えた。
にぃ。
シンジが笑い、サキエルの体が宙に舞う。気を失っているサキエルはそのまま地面に叩きつけられた。
シンジは、蜘蛛の巣状にひび割れたアスファルトを真紅の瞳で見つめながら、数m先に転がるサキエルにゆっくりと近づく。
そして、サキエルのコアを取り出そうとしたまさにその時。
「そこまでや」
シンジは、驚いた素振りも相手を見ることも無しに一瞬で飛び退く。そして距離を取った後に改めて邪魔者を睨み付ける。
「わいはついとるな、手柄持ちで転属できるとは…」
サキエルを挟んで、丁度10m程離れた場所にいるコートの男はケンスケ、サキエルを見回した後に両腕をゴキゴキと鳴らした。
「傷害、殺人未遂で逮捕やな…ま、使徒に人権はないさかいに、この場で死刑執行や。
わいは今日付けで第3新東京市警使徒課に配属された、バルディエルこと鈴原トウジ様や。地獄に行っても覚えとけや!」
ズダンッ!
アスファルトがへこみ、コートの男…鈴原トウジが物凄い勢いで加速する。
「かあぁぁぁぁっ!!!」
力任せに繰り出した拳が、空気を切り裂きシンジの顔面へと向かう。
しかし、シンジの持つ超強力なATフィールドで中和され、勢いを殺されたところを軽く受け止められてしまった。
「だだだだだだだだだだぁぁぁぁぁぁっ!!!」
やかましいかけ声と共に、ATフィールドを纏った拳が次々と降り注ぐ。
バルディエルは完全な接近攻撃型の使徒のようで、防御用のATフィールドを一切発生させていない。
しかし、凄まじい勢いの攻撃がシンジに全く攻撃を許さない。
”攻撃は最大の防御”を地でいくような攻撃を防ぐのに手一杯なシンジは、段々と塀に追いつめられていた。
だが、シンジはまだクリーンヒットを一発ももらっていない。トウジが連打を止める一瞬を虎視眈々と狙っている。
「くそったれがぁ!」
有効な攻撃を許さないシンジに痺れをきらし、ついにトウジはバックスイングを大きく取ってデカいのを叩き込もうとした。
その瞬間、シンジの右手がトウジの首を掴む。
「ぐ、ぐあ…」
サキエルにしたのと同じように、しかし今度は両腕で、トウジの首を締め付ける。
トウジはシンジの体を懸命に蹴りつけるが、シンジは痛がる素振りすら見せずにどんどんと腕の力を強めていった。
「(バ、バケモンかい、こいつは!)」
トウジは、渾身の力を込めてシンジの腕を引き剥がそうと試みるが、
いかに最強のパワーを誇るバルディエルといえども、今のシンジ以上のパワーを出すのは不可能だ。
精々、これ以上首が締まるのを防ぐぐらいである。
「(あ、あかん…新任早々もう殉職か…?)」
薄れゆく意識の中、トウジは思い出した。遠い記憶の中にある、そばかすの少女。
「(そやな…死んだらあかんわ、わいは。)」
そして…トウジの瞳にも、紅い光が灯った。
「グワゥオオオオオオオオオオオゥ!!!!」
トウジが地面を揺るがす雄叫びを上げ、シンジの腕が見る見るうちに引き剥がされていく。
「!?」
シンジは危険を即座に察知し、トウジの腕を逆に掴み、それを支えに両足を持ち上げて思い切りトウジを蹴り飛ばす。
トウジの腕が振り解かれ、お互いに再び距離を取ることになった。
「調子に乗ってんやないでぇ!ぶっ殺したるわ!!」
再び地面を蹴ろうとしたその瞬間、トウジとシンジの間に1人の男が降り立った。
その男、渚カヲルはシンジの両肩を掴み、きぃぃぃぃぃん…と甲高い音を立ててシンジに思念波を送り込む。
シンジの瞳が黒に戻り、その場に倒れ伏したのを確認すると、ゆっくりとトウジの方を振り向きこう言った。
「第3新東京市へようこそ、鈴原刑事。」
トウジは、ポカンとした顔と黒に戻った瞳でそれを見つめていた。


つづく
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管理人のこめんと
 カプリ・Kさんからいただきました。「新世紀エヴァンゲリオン別版 心の壁」、第3話です。

 シンちゃん、暴走してます〜〜(^^;)
 最初のうちは強かったけど、なんかやられてるし。暴走してたら強いかもしれないけど、それでカヲルくんより強い、と威張るのはなんか違う気がします。使いこなせないチカラは、ただの暴力。
 で、その暴走したシンちゃんを止めたのがカヲルくん。そういう意味でのパートナーってことでしょうか。

 しかもいきなり関西使徒ことトウジ登場。おバカな勘違いぶりが何ともいえず彼らしいです(^^;) 何げにヒカリちゃんのことを心の底で想っていたりしてるあたりは可愛くてポイント高いですが……。
 せめてコートの下にじゃーじを着てて欲しかった(笑)。
 うなれしゃいにんぐふぃんがあ(*^▽^*)。

 とゆうわけで皆さん、熱血アクション風味な作品を送ってくださったカプリ・Kさんに、こんなとこで終わってもらっちゃ困るったら困るのよっ、とか、えっちをもっと増量してぇっ、とか、感想や応援のメールをじゃんっじゃん送って頑張ってもらいましょうっ。
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