十四歳の誕生日を迎えてすぐ、私の元に一通の手紙が届いた。何の飾り気もない封筒。その中には、私の心を傷つけるような文章。

『来い』

 それだけ。でも充分。二度と会わないと決めた、そのはずなのに…。差出人の名前は無かったけどすぐに分かった。『碇ゲンドウ』


 私の実の父親……。あの人くらい。人の心を無視しても平気な人は……


 私は悩んでいた。あの人のことだから、『行かない』と言ったら、私がお世話になっている人に何をしてもおかしくない。そう考えると選択肢は無くなってしまったようだ。……イヤだけど……。

 そして私は、第三新東京市にやって来た。叔父夫妻に迷惑をかけないために。

 これからどんな事があるか、その幻想に怯えながら……






微笑(ほほえみ)の中で』
作:SHOWさん


壱話 『遭遇と再会と出会いと…』



「あつ〜〜い! モノレールは止まっちゃうし、電話は不通だし、シェルターは分かんないし、も〜イヤ!!」

 そう私は叫んで公衆電話の受話器を勢いよくもとに戻した。そうして周りを見渡す。………人っ子一人いない。シェルターの場所を聞こうにもその相手がいない。非常事態宣言が発令されたと言っても、いまさら戦争でもするのかな? ……まさかね。十五年前のセカンドインパクトで世界的な人口は激減したんだし、どこの国にもそんな余裕は無いはずだしね。

「はぁ…これからどうしようか…」

 そう言うと私は駅の方に歩いていった。それと同時に、ジーンズのポケットから手紙を取り出す。そこには何かいろいろ書いているものに混じって、写真が一枚入っていた。

「……葛城…ミサトさん…か…」

 その写真は、青いクルマをバックに、二人の綺麗な女の人が立っていた。一人は金髪に黒い眉毛をした白衣の女性。もう一人が紺のスーツに紅いジャケットのようなものを羽織った女性。髪の色は……黒…かな? どちらにしろ、二人ともすごい美人。で、その黒い髪の人のほうに黒いマジックで『わたしが行くからね♥』ってあるんだ。

「………ここでこうしててもしかたがないなぁ……しょうがない! 歩こう!」

 体力には自信があるしね。そう思った矢先、空気が震えた。

「キャッ!!」

 いた〜い。耳鳴りがする。

「何が………」

 『起きたの?』と言おうとして、私は固まった。何? アレ?




 青いクルマが凄まじいスピードで走っている。周りに他のクルマの姿が見えないからいいものの、いたら即交通事故である。その車を運転してるのは女性だった。

「まっずいわね〜〜。こんな時に見失うだなんて。下手したら首がとんじゃうわ」

 そう言うと一瞬、カーナビに目を走らせる。

(間に合うといいけど…)

 そう心の中で呟くと更にアクセルを踏み込んだ。……………最早人間の乗るスピードじゃない…

(!! いた!!)

 その目線の先には一人の女の子の姿があった。そしてクルマを滑らせるように女の子の前に止めた。

「ごめん! 遅れちゃった! 早く乗って!」

「ハ…ハイ!」

 乗り込んだのを確認するとアクセルを踏み込んだ。

「ちゃんとつかまっていて!!」



 キキキイイイイイイィィィィィ!!

 ものすごい音をたてて車が目の前に止まる。……轢かれるかと思っちゃった。

「ごめん! 遅れちゃった! 早く乗って!」

 そう言って女の人がドアを開けた。まだ状況を掴めていなかったけど、とりあえず乗せてもらおう。

「ハ…ハイ!」

 そう言うと助手席に飛び乗る。荷物は後の座席に投げ入れた。

「ちゃんとつかまっていて!!」

「へ?」

 ガクンと車が揺れ、次の瞬間凄まじい音をたてて、走り出す。……何? このクルマ? 速すぎるようううぅぅぅぅ!

「キャ――――――!!」

「喋ってると舌噛むわよ!!」

 その時、私たちの車の後ろには、あの変なのが見えた。人間のような体形。首から上は無いみたいだけど、胸あたりに紅い玉と仮面みたいなものが見える。暗緑色の体の色。ちょっと常識を疑っちゃうな。センスも悪いし、何より気味が悪かった。

 ある程度離れた所で、やっと余裕が出来てきた。

「あの………」

「ちょっと待って! …………まさか、こんな街中でN2地雷を使う気?! ………伏せて!!」

「え?」

 その瞬間、あの変なのが爆発したように見えた。……すごい光……。ん? 何か迫ってくるけど……まさか?! 衝撃波?! 

「キャアアアァァァァァ!!」

 そして私たちの乗った車は吹き飛ばされたんだ。踏んだりけったりってこの事よね。



 ――――――十五分後

 私たちの乗ったベコベコの車は、何とか自走しながら山道を走っているの。

「ごめんね〜。遅れちゃって。えっと…」

「碇です。碇レン。えっと、葛城さん。遅れた事は気にしないでください。助かりましたし…」

「そう言ってくれると助かるわ。それと、私のことはミサトでいいわよ」

「あ、じゃぁ私もレンでいいです。ミサトさん」

「…分かったわ。これからヨロシクね」

 そう言うとミサトさんは、私に向かって笑いかけたんだ。すごくいい笑顔で。

「しっかし、ジーンズでよかったわね〜」

 言いながら自分の黒いスーツをつまむ。……あれって絶対汚れを気にしてるんだよね。高そうだし。それに比べて私の格好は、ジーンズに、麻の青いシャツだから。汚れてもあんまり気にしていないの。よかった。高いもの着てこなくて。

「!! ミサトさん前見て下さい!!」

 私の目の前にはカーブが迫っていた。その時、私の視界が回ったんだ。…………すっごく怖かったんだけど、ミサトさんは平然としてるの。どういう神経してるんだろ?



(危ない危ない。リツコにくぎ刺されてたんだっけ。気をつけよっと)

 そう思いながらもスピードは落とさない。そして横目で助手席に座る女の子を観察した。かなり可愛い。間違いなく美少女の部類に入るだろう。すらりと伸びた肢体。腰まで届く純黒の髪。それとおそろいのつぶらな瞳。整った顔立ち。背も高めだろう。

(これが、あの司令の子とはね〜。鳶が鷹を産むか……。あの子を見てなかったら信じなかったでしょうね)

 そんな事を考えているうちに、カートレインに着いた。リツコに直通を頼んでるし。後は……

「レンちゃん。これ読んどいて」

「NERV? ネルフ? ドイツ語…ですか」

「あら。分かるの?」

「確か…神経……でしたっけ」

「そう。よく知ってるじゃない。……あとIDを貸してくれるかしら?」

「はい。……これですよね」

「ありがと」

 まあ、あんまり報告書と変わりないか…………? ………………何この学歴? ………………アメリカの工科大学卒? 博士号? まだ十四でしょ。この子。報告書には………………書いてるわね…………。今年帰ってきたんだ。

「ねえ。レンちゃん」

「何ですか?」

 パンフレットから目を離さずに答える。しかし、すごいスピードで読んでるわね………リツコに通じるものがあるわ。

「あなた。大学卒業していたの?」

「はい。去年。今年に入ってから帰ってきましたけど、それまでは外国を転々としていましたから」

「へ〜。そうなの?」

 確かに、学歴の欄にはすごい数の名前があるけど、そのほとんどは一流どころよ。一体どんな生活をしてたのかしら?

「わぁ! すごい! 本物のジオフロントだ!!」

「そう。私たちネルフの本部。そして、人類再建の要となる砦よ」

 私たちの眼下には広大な空間が広がっていた。

(砦…か……。私たちはこの子すら戦争の道具として扱っているんだわ)

 そんなミサトの心内を無視して、カートレインは本部へと降りていく。



「…………ここに………父がいるんですね。…………私は何のために呼ばれたのかな?」

「…………苦手なのね。父親のこと」

「苦手……なのかな? よく分かんないんです。もう小さい頃から離れ離れですし」

 嘘だ。父親とは三年前に会っていた。苦手と言うより憎んでいる。でも、その事は誰にもいえない。だれにも言ってない。

「そうなの………」

 ミサトさんはそれ以上何も言わなかった。だから私は無理やり話題を変えようとしたの。

「ミサトさん。今さっきの……『使徒』とか言いましたっけ? あれ何なんですか? 見たところ生物みたいだったけど」

「正体不明の『敵』よ」

「『敵』……ですか」

 その言葉と同時にカートレインの動きがとまった。目的地に着いたみたい。




 ―――――――通路

「おっかしいわね〜? 確かこっちだったと……」

「ここ今さっき通りましたよ」

 そう言って、私は荷物を担ぎなおす。結構重いんだ、コレ。ドラムバッグって言うのかな? いろいろ入っているし……

「ぐ………。まだ越してきたばかりだから分かんないんだよね」

(………大丈夫かな? この人。……とにかく、目的地に着くのが先決っと…………ん〜〜〜〜。こんな所には普通あるんだけど……あった)

「ミサトさん。そこの連絡回線で連絡を取ってください。お願いですから」

「ナイス!! システムは利用するためにあるってネ。………あ、マヤちゃん? ごめん、リツコをこっちによこしてくれない? えっと、R20よ。そう。ヨロシクね」

 それと同時に私たちの背後でエレベーターの扉が開いた。ミサトさんは、まだ気づいていないみたい。……うわぁ。すごく綺麗な人……あれ? この人確か、ミサトさんの写真に……。知り合いかな?

「何をしているの? ミサト。この時間が無い時に」

「!! ごみ〜ん! まよっちゃって。でも早かったわね?」

「アナタの持っている地図に発信機が着いてるの」

「へー、便利ねこれ。ずっと持っていようかしら」

「その度に呼び出される私の身にもなってちょうだい。……その子ね? 噂のフォースチルドレン」

「あの、始めまして。碇レンです」

「ご高名はかねがね。碇博士。私はE計画担当の赤木リツコです。よろしく」

「あの……その『博士』って言うのやめてくれませんか? 何か自分の事じゃないみたいで……。レンでいいです。それに、フォースチルドレンって何の事ですか?」

「名前の事はわかったわ。後のことは道々ね」



 こうして私は舞台の上に上がることになったの。色々な人が織り成していく現代の神話を語る上での一人に……………



「見せたい物って何ですか? リツコさん」

「ここよ」

 そう言うとリツコさん(そう呼ぶように命令されたの)は倉庫みたいな所に入っていった。中は真っ暗だ。………? …………何? 今の感じ………。何か…包み込まれるような感覚………。

「足元に気をつけてね」

「あの……真っ暗ですけど……」

ガシャン

 一斉にライトが点く。私の目の前には、今まで渡ってきた赤い水。それに影を落とすものがあったの。私の後に。強烈なプレッシャー。それに惹かれるように振り向いた先には、紫色をした大きなもの。

「何………これ? ロボット?」

「厳密に言うと違うわ。これは、私たちが作り出した切り札。汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。これはその初号機にあたるわ」

「……………まさか…………父は……これに私を乗せるつもりで、呼び寄せたの?」

「そうだ」

 そこにはサングラスをかけた、あの男が立っていた。





「そうだ」

 いつの間にか初号機の上にある小部屋から、碇司令が覗いていた。そして……

「フ…出撃」

「!!」

 その時反論しようとした私は、言葉が出なかった。レンちゃんの顔を見て、不覚にも恐怖したわ……あの瞳に……。今まで、知性と優しさを湛えていた瞳には『激情』と『憎悪』が読み取れた。その気配に私は圧倒されたの。

「…………あなたが……………あなたが………今更……どんな顔をして、私の前に立つの……? ……………そしてなんと言いました……? これに……乗れと?」

「そうだ。時間が無い。早くしろ」

「………………ミナを乗せればいい………私に乗れるなら、ミナにも乗れるはずでしょう?!」

(ミナ…?)

 目でリツコに合図を送る。それに頷いて返す。

(あの子のことか。同い年って言う事は双子か)

 そんな事を考えている時間は無いはずなのに、その奇妙なやり取りを私は見守った。

「ミナは乗れなかった。だからお前を呼んだのだ。乗れ。拒否は許さん」

「…………ミナと一緒にしないで。…何で私が母親を殺した物に乗らないといけないの!!」

「!!!!!」

「覚えていないとでも思っていたの? あいにく私の記憶はその時から始まっているの!! 一目見たときは分からなかった。こんな格好じゃなかったから。でも、これから感じる雰囲気を感じれば分かる!! ……そんなものに……!! 何も知らずにあなたに付いて行ったミナと一緒にしないで!!」

「……」

 その時のレンの雰囲気は凄かった。『殺意』なんてもんじゃなく、その更に上の感情。

「……レンちゃん。よく聞いて。あなたが乗らないと人類は滅亡してしまうの」

 そのリツコの言葉を聞いて私も説得を始める。

「そうよ。誰かがしないといけないの。そしてこれはレンちゃんしか出来ないの」

「関係ありません。そんな物」

「「なっ!!」」

「私の仕事じゃない。あなた方ネルフの人たちの仕事です。それに『人類を守れ』と言うのですか?」

「そ…そうよ」

「なぜ?」

「!!」

「この世の中で滅びないものは無い。その滅びが何時になるかの違いだけです。人類も例外じゃない。私はそれが普通だと思います」

「それが、自然の流れなら……。……抗いもしないの?!」

「しますよ。でも、その為に、何故あなた方の命令に従う必要があるの? もう一度言います。私はネルフとは関係ありません。だから…」

 その先を言おうとした矢先、

「レン姉さん!!」

「………ミナ」

 そこにはレンとよく似た少女が立っていた。ただ、髪と瞳の色が、レンに比べて茶色かったのと、髪の長さが肩ぐらいまでしかないのを除けば…





「姉さん……」

 白衣を着たミナは悲しそうな瞳を私に向けた。

「元気そうね。ミナ」

「うん……」

 自分でも恐ろしいほど冷たく言い放つ。

「姉さん……」

「何も聞かないわよ。ミナ。あなたはあの男に賛成して付いていった。私はイヤだったから碇の家に残る事を決めた。その時の約束覚えてる?」

「うん……。でも」

「『以降、私の生活に干渉しないで。何かあるときは力になってあげるけど、あの男が絡んだときは、絶対に何も言ってこないで』それが約束のはずよね。忘れたの?」

「忘れるわけ無い!! 姉さんの事……全部覚えてる。……でも……でも!!」

「………でも?」

「今回だけは!! ………もし姉さんが断ったら……レイが……」

「? レイ?」

 そのとき移動用の診療用ベットが運ばれてきた。その上に一人の女の子が、包帯を巻かれたままの状態で横たわっていた。空色の髪に赤い瞳。アルピノっていったかしら。

「!! お父さん!! レイは休ませててと言ったはずよ!!」

「レイ。予備が使えなくなった。もう一度だ」

「ハイ」

「!! レイ!! 父さんも止めて!! レイが死んじゃう!!」

 そう言ってレイと言う子を抑えようとした。そのとき、

 ズドオオオオオオォォォォォン……………


 大音響とともに地震が起こる。

「奴め。ここに気づいたか」

 その時、不吉な音と共に、頭上のライトがミナの上に落ちてくる。

「危ない!!」

 私はミナと女の子を庇おうとした。その時、水の中から巨大な手が上がって来た。私たちを守るように。

「動いた?! そんなまさか!! プラグすら挿入していないのよ?! 動くはず無いわ!!」

「と言うより、守ったの? あの子達を? ………いける」

 そんな呟きを私は無視した。

「ミナ?! 大丈夫?」

「あたたた……うん。何とか」

 ミナに怪我が無い事を確認すると、横に倒れている女の子を抱きかかえた。

「ねえ?! 大丈夫?!」

「クゥ! ハァハァ……」

「………血が出てる……姉さん!」

「ミナ。早くこの子に治療を。そのくらいの設備はあるでしょ? 急ぎなさい。……大丈夫? 心配しなくてもいいわ。今回は私が乗るから。ゆっくり休んでて」

 そう女の子に声をかけると、あの男に向かって叫んだ。

「今回だけ。これが終わったら帰らせてもらうわ」





 ――――――――ロッカールーム

「姉さん」

 ミナの前には、青を基調としたプラグスーツ姿のレンがいた。頭には同色のヘッドセットをつけている。そのレンに声をかける。

「何? ミナ」

 ロッカーについている鏡を見ながら、ヘッドセットの位置を確認している。

「ゴメンナサイ…………。約束、破っちゃった。いくらレイのためとはいえ、最後にした約束だったのに」

「………もういいわ。ミナも必死だったんだろうし、実際呼び寄せたのはミナじゃなかったから」

「でも………」

「あの子は?」

「今手術中。傷が開いたんだって」

「そう、悪いことしちゃったかな? 初めから乗っていればよかったね」

「…………イヤ……だったんでしょ?」

「まぁね。いきなり『世界のために戦え』って言われてもね。『ハイ。分かりました』とはいえないでしょ?」

「ごめんね。ホントは私が乗るはずだったのに、動かせなかったから」

「もういいわよ。それより、これが終わったら本当にかえるからね。あとはヨロシクね」

「……その事なんだけど。動かせたらここにいて欲しいの。………姉さんのためにも」

「? 何で?」

 一瞬でレンの顔つきが変わった。振向いた顔には『イヤ』と大書している様だった。

「今さっき、変な会話を聞いたの。動かせた場合、もし帰ると言っても洗脳して連れ戻すって。まさかとは思うけど、今さっきのレイに対しての扱い方を見ると、嘘とも言いがたいの」

「洗脳…ね………。考える必要があるわね。でも、ここでそんな話はしないほうがいいわよ。誰が聞いてるかわかんないから」

 後半部分は覗いているであろう人間に向けての言葉だった。

「うん………」

「心配しないで、まだ動かせるとは決まってないんだから。……じゃ、行くね」

「うん。頑張って」

 そう言うとレンは初号機の元に向かった。





 ――――――――第一次直上決戦

「私は何をすればいいの?」

『とりあえず座ってて。こっちでやるから』

 その声に続いていろいろな声が聞こえる。多分起動の準備をしているんだろうけど、今LCLって言わなかった? 大学で習ったけど………まさかね。………本気だったのか。…………この黄色い液体。

「……血の匂いがする」

『それぐらい我慢しなさい!!』

「うるさいです」

『………姉さん、ちょっと言い過ぎ……』

「………」

『姉さん!』

『やめなさい、ミナ。ミサトもよ。ゴメンナサイね』

「いえ……」

『初号機起動します』

 女の人の声がする。なんだか可愛い感じ。

 ………!! 何これ! 頭の中に何かイメージが!! ……………消えた………

「赤木博士」

『リツコって呼ぶように』

「そんな事より、今何しました?」

『? マヤ。何かした?』

『いえ。通常通り起動しています。シンクロ率42.1% 暴走ありません』

『していないらしいわ。何かあったの?』

「いえ…ならいいです」

 ? 何だったのかな? 今の。なんか木の、葉っぱとか赤かったけど……日本……なのかなぁ? まぁいっか。





「かまいませんね? 司令」

「あぁ。使徒を倒さん限り、我々人類に未来は無い」

 その言葉を聞くとミサトは発進命令を下した。

「……いいのか? 碇?」

「………いいわけないでしょう。どこに好き好んで娘を戦場に送る親が居ますか。ましてや、嫌がる娘を!」

「………そうだったな。ユイ君も怒っているだろうな」

 そういう二人の手袋は紅く染まっていた。そんな中ミサトの発進命令が下る。

「発進!!」





 ガシャアアアアアァァァァァン!!

『エヴァンゲリオン初号機リフトオフ!!』

 肩を止めていたボルトが外れる。目の前には暗緑色をした使徒が立っている。やっぱり気持ち悪い。

「? 何? この雰囲気…? アイツから?」

『レンちゃん。とにかく歩く事を考えて。エヴァは貴女の思考を読み取って動くわ』

 そうリツコさんが声をかけてくる。でも、私には聞こえなかった。それどころじゃ無い。目の前の生き物からは良く分からない存在感が発せられている。こりゃ、迂闊に動けないな。う〜〜〜〜ん、何か武器は無いのかな?

「リツコさん。何か武器になるようなものありませんか?」

『ごめんなさい。まだ準備できてないの』

「分かりました。素手で抑えてみます」

 そう言うと私は間合いを詰めた。どちらにしろ、距離は詰めなきゃ攻撃できないしね。でも、なんか体が重くかんじるなぁ。動かす分には支障は無いけど、闘うのは問題ありね。

『姉さん!』

「大丈夫よ。心配しないで。…………いくわ」

 一気に間合いを詰める。そのまま突きを繰り出す。ありゃ、完全に止められた。蹴りはっと…同じか。正攻法じゃダメみたいね。でもなぁ、せめて剣があればなぁ。

「う〜ん、手詰まりねぇ。……でも、攻めてこないわね。観察されてるのかしら?」

『レンちゃん。相手にはATフィールドがあるの』

「ATフィールド? リツコさん、何ですかそれ?」

『バリアーみたいなものよ。それがある限り、こちらの攻撃は当たらないわ』

「そんなぁ……、じゃぁどうすれば良いんですか?」

 情けない声を出す。その一瞬、相手から視線と注意がそれた。そして、使徒もそれを見逃しはしなかった。急に間合いを詰める。

「!!!! しまッ……!!」

 ドガアアアアアアアン!!

 首をつかまれ投げ飛ばされる。そのダメージは中にいるレンにも伝わった。

「ケホッ、ケホッ。な、何であたしまで、痛みが……?」

『レンちゃん!! 逃げて!!!』

 ミサトの声が響く。しかし、間に合わない。首をつかまれて吊り上げられる。

「グウウウウウゥゥゥゥゥ!!」

 痛い! なんてチカラしてるの?!

『リツコ!!』

 ミサトさんの声が響く。確かに状況としてはかなりまずい。

『マヤ! フィードバックのレベル一桁下げて!!』

『……!! ダメです!! 信号、受けつけません!!』

 そんな話が聞こえるけど、冗談抜きでまずい。このままだと、確実に、落ちる! 何とか、しなきゃ!!

「く…、くそ………」

『姉さん!!』『レン!!』

 ………父さん?

『作戦中止だ! 葛城1尉! パイロット回収を最優先にしろ!!』

『無理です!! 副指令! あの状況では……!』

『くっ…!! レン君!! 何とか離れるんだ!!』

 何とかって……、この状況じゃ無理に決まってる! !?………まずい、意識が……!

『姉さん!!』

 もう…………ダメ…………。

 フウオオオオオオオオオオオオオオォォオォォォォォォォォォォォオォォォォン!!!!!!

 !!!!!…何? 今の?

『初号機! 顎部拘束具を自力で除去!!』

『何?! まさか……暴走?』

『いえ、ありえません!! パイロットの意識は、はっきりしています!! シンクログラフもプラス域です!!』

『じゃあ!! 一体何が起きたのよ!!』

 ……………この気配……まさか、……………お母さん?

 ウオオオオオオオオオオオオオォォォォオオオォォォォォォォン!!!!!!

 あ!! 勝手に動き出した! どうして?! …………………? …………何? 

「かあ…さん………」

 何か……流れ込んでくる。これは?!

【どうして?! どうして、あたしをいじめるの?!】

「……誰?」

【なぜあなたはあたしをいじめるの?!】

 ……こっちが相手に攻撃するたびに何かが流れ込んでくる…。

【あたしは誰なの?! 誰か教えてぇ!!!】

「………あなたは、誰? 私は碇レン。あなたは?」

【…………あたしはあたし。それ以外でない】

「いや、そういうことじゃなくて。名前は?」

【…名前?】

『レンちゃん!! 何をしているの!! 後退して!!』

「ミサトさんには聞こえないの?」

『何が?! とにかく後退しなさい!! 命令よ!!』

「ちょっと黙ってて!! ……あなたには名前が無いの?」

【……………】

「…………そう。可哀想ね。…………あなたはどうしたいの?」

【生きたい】

「私と来る?」

【え?】

「おいでよ。誰でも一人は嫌だもんね。あなたが構わなければ、一緒にいよ。あ、でもどうすればいいのかな?」

【…………………あたしを認めてくれるの?】

「あなたは私を認めてくれないの?」

【………………………】

「一緒に行こう」

 エヴァも、使徒も動きを止める。沈黙。本部も誰一人として口を開かない。だが、突然使徒に変化が現れる。身体が膨らみ始めた。

「何?! ちょっと!!」

 この声って絶対あの使徒とか言うのの声よね?! このままだと…! 

『自爆する気?!』

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオン…………

「キヤアアアアアアアァァァァァァ!!」

 こんなに至近距離での爆発、考えてもいなかった………こうして私の意識は暗闇に沈んでいった…







(後書きのようなもの)

 作 「何とか書きあがったよ。壱話」

 レン「遅かったじゃないですか。知ってますよ。隣のスタジオにばっかり行っていた事」

 ミナ「ちゃんとしてください。でも、どうしていきなりこんな話書き始めたの?」

 作 「女版のシンジが書きたかったのと、町で双子を見かけてね、衝動的に」

 レン「殴られたいのかしら?」

 作 「いや、まだ理由があるんだけどね。……こんなとこで言っていいのかな? ボク、なんか使徒って好きなんだよ。で、使徒を人間にしてみたいなと思って」

 ミナ「全員? 何人になるか分かってる?」

 作 「いや、一部だけ。基本的に悪役好きだから。老人は嫌だけど」

 レン「……悪役って言うより敵役でしょ?」

 作 「ま、ね。いいじゃん。ほんの数人だよ? 人間にするの」

 ミナ「……二人か三人って所ですか。アナタの頭からすると」

 作 「………………いやなこと言うね。当たってるけど」

 レン「でも、こっち書いてていいの? 1スタの方が騒がしいけど…(アスカさんだな)」

 作 「(あたり)向こうも書いてるよ。一応意見があったら投稿、って形にしてるけど」

 ミナ「こっちは?」

 作 「完全に気まぐれ」

 レン「あのね〜」

 作 「いや、18禁って難しいから…」

 レン・ミナ「………………………」

 作 「気まぐれって言ったろ?」

 レン「それで、女キャラの比率が高いの?」

 作 「別に。書けるかわかんないから別筋も用意してる。案外、外伝みたいにするかも」

 ミナ「でも、このHP、素晴らしいものが多いわよ。作者みたいなのが見苦しいもの書いていいの?」

 作 「不評だったら、即辞める。もう一本は続けるけどね」

 ミナ「私たちは?」

 作 「気が向いたら1スタにおいで」

 レン「そうならないことを祈るわ。だから続きを書きなさい」

 作 「明日からね…」

 レン・ミナ「今からよ!!!!」



第壱話 終


INDEX   次へ
管理人のこめんと
 SHOWさんの『微笑の中で』、第1話です。
 待望の女シンジものです。しかもダブルで二度美味しい双子っっ(*^▽^*) もう嬉しいったら。
 女シンジで双子というのは新しいですね。レンちゃんとミナちゃんですか。なんだか言いたいことを言いたい放題に言うレンちゃんと、大人しいミナちゃんのギャップが素敵です。
 ふたりが並んだところ、見たいですねぇ。誰か描いてくれないかなぁ。

 しかも使徒がヒトになるんですね。女の子の比率が高くなるのは嬉しいです。ここはもう、ロリ系からお姉系まで幅広くお願いしたいですね(^^)
 おまけにこの先18禁予定ですか? 相手が誰になるのかちょっち不安。ケンスケだったらどうしよう……って、そんなイタい展開は絶対ないですよね(イタいのか?)。あ、でも相手が使徒なら全然おっけー(^-^)
 続きが楽しみです。

 とゆうわけで皆さん、可憐な双子の脅迫を受けている幸せ者なSHOWさんに、辞めるなんて悲しいこというなよっ、とか、こんなところで辞めたらあたし許さないからっ、とか、感想や応援のメールをじゃんっじゃん送って頑張ってもらいましょうっ。
 SHOWさんのメールアドレスはこちら

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 問題があった場合はきたずみに言って下さい。

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