必死に頭を振って、示される拒絶。
勢いで飛び散った涙が頬を打つ。
けれど、その温かさを感じることはもうできない。
「……ん…で………オレ自身…じゃ…っ…!」
それ以上言わせないために、唇を指で押さえた。
それ以上、聞いてしまったら。
ガマンができなくなる。せっかくなけなしの自制心を働かせているのに。
オレを、喜ばせないでくれ。
「か…い……手っ…!!」
もう、時間がないな。
透けてきたし、感覚がなくなってきた。
「新一」
ああ…やっぱりキレイだ。
どんな感情に染まろうとも、強い輝きを放って。
認め難い現実であっても、決して逸らそうとはしない。
そのまま、オレを見つめていて。
「大丈夫だよ、何も怖がることなんかない。悲しむことも。全部……オレが持っていくから」
未練を振り切って、とうとう告げたキーワード。
これで、オレの役目は終わり。
だから、後少しオレだけを見ていて。
「い…やだ…っ!快斗!消えるな…っ!!」
伸ばされるしなやかな腕。
けれど、もうムリ。ゴメンな。
何度も何度も、繰り返される。
空を切るたびに、深くなっていく嘆き。
後、少し、だから。
オレが消えれば、泣いていた理由もわからなくなるから。
「快斗っっ!!」
さよなら、新一。
最後までオレの我侭に付き合ってくれて、ありがとう。
最後の我侭・5
お湯が滾ったことを知らせるケトルからの音に、ぼんやりとしていた意識を引き戻す。
忙しくあがる湯気が、自分が何をしようとしていたのかを思い出させた。
ペーパーフィルターの用意をして、コーヒーの粉を入れる。そして、お湯を注ぐ。
「あ…しまった」
ドリッパーいっぱいに満ちたお湯。最初は、全体をしめらす程度に注いで蒸らさなければならないのに。これではコーヒーの旨みは抽出されない。
新一は、己の失敗にため息を吐いた。
料理は全然できなくても、コーヒーの淹れ方だけは誇れるものだったはず。こんな初心者並のことをするなんて、まるで淹れ方を忘れてしまったかのよう…。
思い至って、憮然とする。
半ば意地のように苦くて水っぽいコーヒーを飲みながら、テレビのスイッチをいれた。
静まり返ったリビングは、ひどく居心地が悪くて。
時間の停滞した空間に、ひとり放り出された感覚に陥る。
掴まるものも縋るものもなく、確かなものは何も見出せずに、取り残されたような感じ。
普段は好きではない騒々しいだけのテレビでも、現実にいると実感するには丁度いいと新一は思った。
画面に映し出されるのは、黒く煤けた瓦礫の山と大勢の捜査員たち。
周囲を飛び回るヘリコプターの騒音と、マイクをもって喚いているリポーター。
どのチャンネルをまわしても似たり寄ったり。言うことも同じ。
『多数の警察官の目撃情報により、怪盗KIDはこの建物の爆発に巻き込まれた模様です!そして、その生存は絶望視されています!』
「…つまらない」
三日前から繰り返されている報道に、いい加減うんざりする。
「もっと他にないのかよ」
今現在のことを見たいのに、これではテレビをつけている意味がない。愚痴りながら画面を消した。
静寂を紛らわす方法がこれではどうしようもなくて、新一は目を閉じる。
ひと時でも何ら感じないでいられるなら、眠りへ逃げるのもいいかと、そう思いながら。
眩しくて、反射的に腕を目の前にかざす。
けれど、ひどいだるさに力なく顔の上へと落ちる。
「あら、起きたのね」
頭の上から掛かった声に、緩慢な動作で手を動かしながら視線を向けた。
うっすらと像を結んだ瞳は、光に痛みを覚えながらも次第にはっきりとカタチを捉えていく。
「……え……と…」
短く切りそろえられた髪が揺れて、端麗な面持ちが覗いてくる。一見、冷ややかともとれる美貌の主。だけど、それとは裏腹にやさしく思い遣り深い心情。
決して、そうとは見せないところがいかにも彼女らしいが、今見つめてくる瞳には隠そうともしないあからさまな安堵の色があった。
「どうしたの?もしかして、私だったからガッカリした?」
からかうような言葉のなかにも心配する響きがあって、こうまで彼女が自分に構ってくることに不審を抱く。
寝起きのせいか鈍っている頭を働かせながら、現状を把握しようと努める。
見覚えのある部屋、横たわっているベッドも知っている。
仄かな甘い匂いは、大好きなもの。しかし、微かに錆びた匂いが混じっている。
この暖かくて甘やかな空間には似つかわしくないソレに、記憶が一気にフィードバックしてきた。
「な…んで、オレ…生きてんだ…?」
至極当然の疑問。
だが、ようやくまともな言葉を話したことに、志保はほっとする。
「あらあら、ここは地獄かもしれないわよ?なんといっても私がいるんですもの。ね、黒羽くん」
「こんな美女がそんなとこに出るわけないさ。それで?」
快斗は、意識を失う前の自分がどういう状況下にいたか仔細に覚えている。目を閉じれば、それが永遠にこの世との別れだったということも。
被弾は致命傷ではなかったが、出血多量のために脱出することは不可能だった。
だから、最大の爆発に見舞われるところを死に場所に選んだ。跡形なく肉体が吹っ飛ぶように、絶対に身元が割れないために。
もちろん、それは外部からの救助の手も届かない、建物の最奥。
信じられないことだが、脈打つ命を疑いはしない。
間違いなく自分は生きているのだ。
一度は全てを諦めて死へと向かったのに、現状を認識すると混乱せずに受け入れた。
「あなたはKIDになってからあのクスリをのんだのよね」
「ああ」
怪盗としての快斗から派生した、もう一人の快斗。
本来は存在しないモノだから、その行動能力も存在性も限られている。あくまでかりそめ、一時凌ぎだ。
時間的な制限がくれば本体へと吸収される、隷属体。
当然、KIDが本体でなければ何ら成し遂げることはできない。
「なんでそんなことを?」
目くらまし程度の存在でしかないことくらい、クスリの開発者である志保自身が一番よく知っているはずなのに。質問の意図が測れず、聞き返す。
「一応確認しただけよ。ま、あなたみたいな人外なヒトなら有り得ないこともない現象だったってとこかしらね」
「志保ちゃん……何を言ってるかわかんないんだけど」
「あなたは、工藤くんの腕のなかにいたの。真っ白い衣装を真っ赤に染めて」
「…え?」
「この部屋の、このベッドの上でね。助けを求めて必死になって叫んでいたわ」
ぐったりとした快斗の体は冷たくて。
墓場に足を突っ込んでいる状態なのは一目みてわかった。
泣き叫びながらも、懸命に恋人の名を呼び続けていた新一。
出血多量だというのに、怪盗の衣装を赤くしている以外、どこにも血を滴らせてはいなかった。
「つまりは愛の力ってことか〜」
「そんな一言で済ませてしまうところが、いかにもあなたらしいのでしょうね」
深々とため息を吐く志保に、快斗は怪訝な顔をした。
「…っと待って。呼んでたって…だって新一は…」
「ちゃんとあなたのこと覚えているわよ。だって、彼に暗示なんか掛けるだけ無駄ですもの」
「どういうこと?」
「あなたがあのクスリを欲しいと言った時、どういう心算かぐらいわかったわ。だから、先手を打ってたの。そこまで共犯になる気はなかったから」
つまり、志保はあらかじめ暗示にかからないような暗示を新一にかけていたということだ。
複雑な表情をする快斗に志保は言い募る。
「あなたが彼のためを思っていたことは理解できるけれど。私はどんな結果であろうと、彼自身が選ぶべきだと思うわ。どんなに苦しくても辛くても、あなたを愛した記憶を奪うことは命を奪う以上に残酷よ」
「……本当はそうしたかったって…言ったら、怒る?」
「さあ、どうでしょうね。けど今回は、私に感謝すべきよ」
ニッコリと微笑む志保には何ともいえない迫力があって、ただただ快斗は素直に頭を下げることしかできない。
「ありがとうございマス……でも、さ。志保ちゃん、フォローなんかしないって言わなかったっけ?」
「"事後"のフォローはね。だから工藤くん、もの凄く怒っているわよ。どうしてこんなことになったのかなんて説明もしてないし。当然、クスリのことだって教えてないわ。私を巻き込まないでね」
面白そうに告げられて、快斗は仕方ないとばかりに肩を竦める。
「それで…新一は?」
状況を理解したときから気になっていたこと。
思惑通りに進まなかったとわかれば、逢うことに躊躇はない。些か現金ともいえる自分に苦笑してしまうけれど。
「輸血をしたらすぐに危機は脱したから、もう取り乱すことはなかったわ。そうしたら沸沸とあなたへの怒りが湧いてきたってとこかしらね。今は下で不貞寝してるわ」
「そっか」
志保の言葉に動揺するでもなく、にやにや笑っている快斗の思考は容易に読める。
(どうせ、怒っている姿を想像してカワイイなんて思ってるのよね。実際、かわいかったけど)
懲りるということを知らない男に呆れつつ、新一を呼びに行こうとする。
「そうだ、志保ちゃん。KIDの衣装は始末しちゃった?」
「いいえ。証拠はさっさと処分したほうがいいと思ったけど、工藤くんが止めたのよ。あなた自身がしたいだろうからって」
志保は屈みこむと、ベッドの下から小型のトランクを引っ張り出す。それをベッドサイドのテーブルへ置いた。
「できるだけ早いほうがいいわよ。この三日、うるさい人が頻繁に伺いに来てるから」
「あ〜、アイツね…よっと」
「ちょっと!無茶はっ!」
腹部に怪我を負ったというのに、腹筋をつかって半身を起した快斗にさすがの志保も慌てる。
押し留めようとするものの、苦痛に呻くこともなくベッドヘッドに身体を預けた。
「大丈夫だよ。三日って言ったよね、それだけ寝てれば十分だし」
「そう、さすがバケモノ並の体力ね」
「鍛え方が違うって言ってよ」
「ハイハイ」
結局は何があっても心配するだけ損というのか、悪運の強さが類稀なオトコに感服しつつ、志保は踵を返して部屋から出て行く。
「あ、そうそう。工藤くんが怒っているのは、黙って出かけて死にかけたことだけが理由じゃないわよ」
「へ?」
「あなた、浮気したんですってね」
志保が出て行ってから間を置かず、大きな音を立てて階段を上ってくる足音がひびいてきた。
その勢いのまま扉が開かれる。
「快斗…!」
見開かれた大きな瞳、その美しい蒼のなかに自分の姿が映っているのを見て、快斗は生きていることを感謝した。それは見も知らぬ神ではなく、死の淵から呼び戻してくれた最愛のひとに。
「新一」
名前を呼んで手を広げると、飛び込んでくる。
微かに震えている体に、今更ながら自分の身勝手さを思い知らされた。
情けなさと後悔の念が胸の奥に渦巻くが、そんな表情は絶対に見せない。見せるわけにはいかないのだ。
新一を苦しめたことは快斗が一生をかけて償っていかなければならないことだから。慰めも許容も、求めてはいけない。
だから、あの時言えなかった謝罪の言葉を告げる。
「ゴメンな、新一。ゴメン」
細い腕からは信じられないくらいの強い力で、抱きついてくる。
このぬくもりを失おうとしていたなんて、どうしてできたのだろう。
心底、快斗は生きていることを喜んだ。
「いいよ、そのことは。快斗の信念だったんだから、最後まで自分でやり遂げたかったのはわかる」
何も知らせずに、組織を崩壊させに行ったことに対して。新一は静かにそう言った。
手伝いたくても、それを望まれてない以上は快斗の意思を尊重する、それが新一のスタンスだから。
でも、新一をひとり残して逝くとなれば話は別。
あの時の、恐怖と怒りを思いの丈を込めて思う存分快斗にぶつける。
もちろん快斗はただ只管に謝るしかなかった。
「この三日だってな!オマエがオレを見ないから滅茶苦茶だったんだぞ!全然生きてるって感じがしなくて、時間の感覚だってあやふやで!夢か現かまるで区別がつかないし!」
「うん」
「コーヒーだって入れ方がわかんなくなってるし!」
「コーヒー?」
「オマエがなんでもやるから、オレは自分じゃなにもできなくなってんだよ!なのにひとりっきりにされてたら、オレは絶対に自滅する!」
責め立てながらも、素直な感情の吐露は快斗にとっては痛みをともなうものの、深い喜びでもあった。
怒鳴られて宥めて、泣かれて謝って。その繰り返しを延々3時間ほど続けた頃にもなると、なんとか新一も落ち着きを取り戻す。
「……それで?いくらおまえが魔法使いだからって分身の術が使えるわけないよな」
些か声に変調をきたしているが、疑問を全部解き明かさずにはいられないモードに突入した新一は矢継ぎ早に問いただしてきた。
「新一も前やっただろ。志保ちゃんのクスリでさ」
「あ…あれ?じゃあ宮野が…」
「志保ちゃんの実験室からちょっと失敬したんだよ」
はっきりと志保は関係ないことを告げる。
実際、彼女が協力してくれなければそういうつもりだったから。
「でも…オレの時は15分かそこらだったのに…」
「体質の違いと、継続的に飲んだからかな」
「ふーん…それで、オレを騙してたんだよな」
「騙すだなんて。どっちも間違いなくオレだっただろ?ホラ見てよ。新一くんが噛み付いた跡だってちゃんとあるんだからさ」
パジャマの前を開いて、肩口を見せた。
ほとんど消えかかっているが、うっすらと残っている赤い線はまさしく歯型だ。
「今、ここにいるからそんなことが言えるんだ!」
快斗がもし死んでいたならば、三日前の夜のことは全て虚構の出来事でしかなくて。いくら証拠を示されたって、憮然としてしまう。
「うん、でも。新一がオレを呼び戻してくれた。本当なら、本体に吸収されるはずだった体なのに。本体の方を吸収してしまってさ」
「……………」
「あ、あれ?新…一…くん…?」
みるみる表情を険しくしていく新一に、さすがの快斗も焦る。
きっと睨みつけてくる様はとても愛らしいが、理由が思い当たらないから見惚れる余裕は然程もない。
「………オマエ、浮気しただろ」
「ウワキ〜っ?!いつ、誰が、どこで?!」
「ナンパされてたなんて思ったオレがバカだった!そうだよな!手なんか繋いでいたんだから!」
唐突に投げかけられたことに、素っ頓狂な声をあげた快斗だったが。新一がなにを見たのかを思い当たって、一先ず胸をなでおろす。
「なんだ、そのことか。浮気なんかじゃないよ、あれは紅子が勝手に…」
「紅子っていうのか。随分親しげな呼び方するんだな」
火に油を注いだようで、新一の怒りはさらに勢いを増してしまった。
(手…くらいで浮気って……新一って純情で奥手だからなぁ…)
と、思っていることがついカオに出てしまい、頬を抓られてしまう。
「し…新一…?」
「オマエを助けてって…そう言ったんだ!どういうことだよ!」
消え行く快斗の体に触れることもできなくなった時、届いた声。
『しっかりして!引き止めるのよ!あなたならできるわ!』
取り乱すしかできなかった新一に、幾ばくかの冷静さを取り戻させて。
渾身の想いと力を込めて腕を伸ばした。
すると、今まで感じられなかった質量を胸に抱くことができたのだ。
それでも本来の肉体の重みとはかけ離れていて、絶望に打ちのめされながらも必死で快斗を呼び続けた。
『お願い!あなたしか黒羽くんを呼び戻せないのよ!お願いだから黒羽くんを助けて!!』
快斗の存在を取り戻していくなか、新一はずっと彼女の叫びを聞いていた。
今だもって耳に木霊するほど、強い思いを新一へと伝えていた彼女がどれだけの感情を快斗に抱いているか。
同じオトコを愛しているからだろう。彼女の想いに共感できる反面、ひどい痛みを感じた。
それは、自分の想いにも引けを取らないほどに強く激しくひたむきに向けられている恋情だったから。
彼女が、あの"手"の持ち主だということは直感的に察した。
それほどの仲ならば、そして快斗の危機を察していたということは、ふたりの結びつきが尋常でないことを示しているのではないか。
不安とともに覚えた怒り。
置いていかれそうになったことも合わせて、新一は全ての責任を快斗に向ける。
「あ…のさ。アイツは普通じゃないんだよ、だって魔女だから。自称だけど」
「マ…ジョ…?」
「そ。ルシファーさまとかなんとかを崇拝していてさ、水晶玉に映ったから危ないだのなんだのよく言うんだよ」
「…魔女と魔法使いって、相性よさそうだよな」
快斗の言い草に、苛立ちは消えたものの怒りはまだある。快斗にとっては理不尽かもしれなくても、彼女は快斗を好きなのだから。
「参ったなぁ…妬いてくれるのはスゴク嬉しいんだけど…」
怒りをぶつけられることも、快斗にとっては喜びである。だが、怒りで悲鳴をあげているのは新一の心。
どうにかして和らげて、不安を吹き飛ばしてやりたい。
(手っ取り早くて、何より安心するっていえばアレしかないよな)
ちらっと、快斗は傍らのトランクに目をやった。
「別にオレは妬いてなんかいないからな!」
「そう?でも怒ってるんだよね?」
「当たり前だろ!オマエが浮気したんだから!」
してないんだけどな…苦笑しながら呟いても、新一は聞こえないフリをする。
「ね、新一くん。怒りっぽくなる原因ってなにか知ってる?」
「こんなときにカルシウム不足なんて言うな!」
「いいや、新一くんは欲求不満なんだよ」
「…な…んだって…?」
にっこり笑って告げられた言葉に唖然とするのも束の間。
死にかけた怪我人とは思えない早業で、快斗の下に組み敷かれた。
「ちょ…っ!何すんだ!このバカ!」
「何って決まってんじゃん。だって、やりかけだったしさ。新一くんの怒りももっともなわけだよな」
うんうんと一人頷く快斗に、新一は懸命に頭を振る。
「冗談じゃない!オマエ、自分の状態がわかってんのか?!こんな体で何ができるっていうんだよ!」
迷いながらも、新一は傷のところを加減して叩いた。
途端に、快斗は腹を押さえて新一を腕の中から逃がしてしまう。
「ホラ見ろ!今のオマエは半人前なんだよ!オレは中途半端でいい加減なのなんてご免だからな!」
「し…新一くん…だからって…」
「痛い思いしないとわからないだろ?オレを満足させられるようにさっさと治しやがれ…うわっ!」
ベッドから降りようとしたところ、後ろから腕を引かれて逆戻り。
「快斗!ケガ人…は……それ、なに…?」
もう一度怒鳴ろうとして、目の前に突き出されたガラスの瓶。名状し難い色の液体が入っていて、新一に嫌な予感を呼び起こす。
「これ?志保ちゃんの作ったクスリだよ。あと少しだけ残ってるんだ」
「……そ、れで…?」
「今のオレの状態は確かに半人前だからさ。一人前になるには、もうひとりオレがいればいいんだよな」
「だ…だか…ら…?」
恐る恐る尋ねる新一に、快斗はそれはそれは意地悪な微笑みを浮かべた。
「だから、新一は何も心配しなくていいよ。二人のオレが、めいっぱい満足させてあげるから」
end
02.01.29
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