第一章 美少女声優? なんとなくほーこ
きーきーきー
無機質なブランコの音が夕方の公園のブランコをいっそう寂しくさせる
ブランコの主は桑島法子・・・・・
きーきーきー、きーきーきー、きーきーきー・・・バキンッ!
「なっなによ失礼しちゃうわね!あたし○○キロしか体重ないのに・・・このポロブランコっ!」
勢いのよろしい怒声が、夕焼けに染まった公園にこだまするが、当然のことブランコはなにも答えない。
一瞬、カッとしたのを恥らったのか、法子は咳払いをし、大きく伸びをした。
「あ〜あ、田舎から上京してきてもう○年。どうにかこうにか声優にはなったものの・・・なかなか現実って厳しいわよねぇ・・・」
思わず、つぶやく。
かーかーかー、かーかーかー、かーかーかー・・・
からすの鳴き声が、公園に響き渡り夕焼けの空もそろそろ日が沈もうとしたところであった。
「そろそろ帰ろうかしら・・・」
からすが鳴いたら帰るというのは、田舎にいた子供の時からの習性であった。
家は駅から歩いて10分のぼろアパート、ネズミがいるのももうなれた。
ドアの前にはには実家の岩手から送られてきた荷物が玄関を占領していた。
「なによ〜これ、滅茶苦茶重いじゃない」
ほーこは頑丈に貼ってあるガムテープをはがす
バリッベリッ・・・・・
「も〜う、なに送ってきたのかしら?」
バリッバリッメリメリッ、ボコンッ・・・
バビョーン!
中から出てきたのは・・・岩手名物、わんこそばセット!
「うれしいっ!これでしばらくは食いつなげるわっ☆すごい量!」
そして中には一通の手紙が・・・
法子へ
お元気ですか。
あなたが「声優界の女王を目指すわ」と言って上京してはや○年、
夢に向かって頑張っているみたいですね。
辛くなったり、淋しくなったときには、いつでも電話してきなさいね。
故郷の味、わんこそばセット一式送ります。くれぐれも体に気をつけて。
母より
「おっお母さん見ててねっ!法子はかならず岩手の星、声優界の女王様になって見せるわ。
オーッホッホ!あたしのまえに跪きなさ〜い」
女王様違いだと思うがさすが役者、なかなか堂に入った女王様の演技である。
トゥルルルルルル、トゥルルルルルル…
近くのコードレスが音をたてる。
電話料金を延納して3ヶ月だがまだ回線はつながっているようだ。
無意識のうちに受話器を取る法子。
「もしもし、ほ…」
『オーホッホッホ!女王様とお呼び!!』
もはや女王様となりきっていた法子であった。
「し、失礼しましたー」
ガチャン!!
「ツー、ツー、ツー…」
電話の電子音がむなしく部屋を流れていく。
ようやく、現実へとつき落とされた法子であった。
『おほほほほほ…』
法子は笑わずにはいられなかった。
トゥルルルルルル、トゥルルルルルル…
10分ほどたったであろうか、またもや電話がかかってきた。
先程かかってきた相手であろうか。
『はい、もしもし…』
「あ、良かった良かった、ほーこちゃんっ!」
同じ所属プロダクションの先輩、ま○りんこと豊嶋真○子からの電話である。
「さっきほーこちゃんのとこに電話かけたらねっ、いきなり『女王様とお呼びっ!』って
びっくりしちゃった。
あたし電話番号まちがえちゃったのかなっ?そんなことないって思ったんだけど・・・」
「そ、そう・・・ま○りん、よく確かめてかけなきゃダメよっ!」
まさかそのS○クラブばりのタカビー女王様はあたしでした、おどかしてごめんねま○りん、とはいえない法子であった。
「嘘をつくのはいけないかもしれないけどっ、いちおうあたし色白で清楚な美少女声優?でとおってるしっ!声優さんは夢を売るお仕事だからイメージは大切にしないとねっ☆」
心の中でそうつぶやいて、自分の恥ずかしい行為の隠蔽を正当化する法子であった(笑)
「ところでま○り〜ん、何の用事?」
「そうそう、今度遊園地行かない?先輩がチケットくれたんだ。やっぱりもてる女は罪よね〜。かー私って罪作りなお・ん・な(はあと)」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「でさ〜お願いなんだけど、洋服貸してくれない?まえ、着てた紅いやつ。」
「うん、今からでも取りにくる?実家からわんこそばセットが届いたから、そばぐらいならごちそうするよ。」
「ほんと?今日、パチンコですっちゃたんだよね1万ほど。だから夕食あきらめてたんだけど・・・・。」
「まだやってるの?あれほど注意したのに・・・・。でも待ってるから。じゃあね☆」
「うん」
ぴっ
ほーこは思った。
(あの人世渡りうまいんだよね・・・・・)
そしてま○りんはまだパチンコをしてるらしい。(実話)
「それにっ、やっぱりもてる女は罪よね・・・なんて、確かにま○りん
可愛いけどっ。そういうことは本人がいっちゃ洒落にならないよねぇ。
いい女は、謙虚でないと・・・あたしみたいに」
おいおい、さっき色白で清楚で云々なとど自画自賛していたのはどうなのかな(笑)
「だってあたしは、思ってても声に出していってないもんっ!」
五十歩百歩・・・
「さーてと、ま○りんがくる前に、少し掃除しておかなくちゃ!やっぱりお部屋
はきれいにしないと、声優さんは夢を売る仕事だからイメージが・・・」
ほーこは、そそくさと、やや?乱雑な部屋の掃除を始めようとした。
そのとき・・・
「ほーこちゃんっ!来たよ〜ん」
ま○りんのご到着である。
「ちょちょっとっ、さっき電話あったばかりなのに、いったいどこにいたのっ」
さあ、部屋は散らかったままである。「夢を売る色白で清楚な美少女声優」の
イメージ、危うし(笑)
「いっ、今いません」
「なんだ、ほーこちゃんいるんじゃん入るよー。」
「ま○りん、なんでこんなに早いの。」
「だって携帯なんだも〜ん。」
「あのさ〜、あとちょっと3時間だけ待って」
「そんなに待てるわけないでしょ、もう入るからー。」
勢いよくドアをあけるま○りん、しかし。
ドンガラガッシャン!!!!!
不意に玄関を占領していたわんこそば1年分がま○りんを襲った。
ドアをあけた拍子にバランスが崩れてしまったようだ。
「ま○りん…」
返事がないただの屍のようだ…。
打ち所が悪いらしくしばらくは目覚めないだろう。
「お母様が助けてくれたんだわ。」
こうして「夢を売る色白で清楚な美少女声優」のイメージは守られたのであった(爆)。
「…あれ、ほーこちゃん。」
「あれ、起きたのま○りん、急に倒れちゃって昨日徹夜でマージャンやってたんでしょう。」
「まいっちんぐ、でもさっき頭に衝撃受けた気が…」
…ギクッ!
「そんなことより、わんこそばできたから食べようか。」
「そうね、お腹すいちゃったわ」
…ふぅ、なんとかごまかせたわ。
シュルルルルルル
「このわんこそば、おいしいね。」
「やっぱりそう思う、やっぱ本場は違うわよねぇ。私なんか1日3食食べても飽きないわ。」
…本当、いつも食費がなくて大助かりだわ。
「ほーこちゃん、おかわり。」
「はーい、いっぱい食べてね。」
こうして和やかなときは過ぎていった。
「ふぅー、食った食った。でもほーこちゃんにはいつもおせわになってるねぇ。」
「そんなことないよ、私もま○りんのこと頼りにしてるし。」
「それにお部屋もきれいだし、やっぱ声優さんは夢を売る仕事だからイメージが大切なのねぇ。」
「そうそう、最低限自分の部屋ぐらいきれいにしとかないと日本の女性失格よねぇ」
…さっきは、急いで片付けてつかれたわ
だが、その時まだ片付けていないダンボールがまだ残っていたのだった。
「これ、なんだろう?」
ほーこが急いで証拠隠滅しようとした矢先、興味津々に中身をあさろうとするま○りんだった。
そ、その中身は………
「あ〜っ、この服って・・・」
ま○りんがダンボールの中からつまみあげたのは、ほーこがま○りんに貸すと
いった例の紅い洋服であった。しかも、虫に食われたのか、小さな穴がところ
どころに開いている。
それだけではない。かなりの数の洋服が、無残にも虫に食われて入っている。
そう、ついつい防虫対策を怠ったがために、ほーこは手持ちの服をかなり虫さんの
お食事に供してしまったのである(笑)
先ほどは、つい勢いで「洋服を貸す」と言ってしまい、つい忘れていたが、ダンボール
をみたとたん、事の次第を思い出したほーこであった。
「まずいなぁ・・・きちっと服も管理できないなんて知れたら、夢を売る色白で清楚な
あたしのイメージがっ!嗚呼・・・」
一難去ってまた一難とは、このことである。
先ほどは、わんこそばの滑落でま○りんを気絶させ、なんとか事なきを得ることが出来たが、
こんどは正真正銘のピンチのようだ。
「あたしのイメージを守るためにも、ここはなんとしてでもま○りんを言いくるめないとっ!
これもいわば、あたしが声優界の女王になるための試練だわっ!」
前向きな姿勢はいいにしても、この窮地を如何に凌ぐか、危うしほーこっ!
「ほーちゃんって洋服の管理もできないの?」
ま○りんのつらい一言である。
「そ、それは・・・・・友達の預かってるの。友達夜逃げしたから。」
(どうすんのよ!ま○りんがいくら××でヌケてるからってそんな事信じるわけないじゃない。あ〜ばかばかっ!!そ、そうだ・・・・確か母親が上京するときにくれたお金があったはず。)
「そうなんだ、そうと言ってくれば良いのに。」
「ま○りん、ちょっとお手洗い。」
(ま○りん・・・・・あんたって人は・・・・・・・馬鹿?それとも天然?)
がさがさ
「確かこの辺だった様な〜う〜ん。」
引き出しの中を探る。
そしてほーこは何かに吸い寄せられるように台所へ向かった。
「そうそう、ぬか漬けの中に10万円入れておいたんだ。でも、これの中に手を入れなくちゃ。」
「うっ、お母さん。何もこんな所に入れなくても・・・・」
法子ままがくれたなすぬか漬けの”かめ”の中にほーこは手を突っ込んだ。
「これも声優会の女王になるための試練よ!!」
ずぶっずぶっ
「あった。10万円。ありがとうお母さん。これで服を買います。」
ほーこはためらいながらも5万円をポケットにしまい、ま○りんの元へ向かった。
そして、ほーこはTVを見てるま○りんへぬか漬けの臭いのする5万円札を渡した。
「ま○りん、私の洋服はブティックに預けてあるの。少し取りに行ってくれない??それでこれ預かり賃っていって渡してくれない??」
ほーこは今できる限りの笑顔で笑った。
「分かった。でもこのお札なんか漬け物臭くない??」
ま○りんのつらい一言がほーこを刺す。
「そ、そう??まちりん鼻おかしいんじゃない?」
「じゃあ行って来るね。」
ぴっぽっぱ
ぷるるるるるるるるるるる
がちゃ
「もしもし、ブティックナデシコですが・・・・」
「や、やあ。私の事覚えてる??」
「えっ、ほーちゃん??」
「そうそう。元気にやってる??」
「うん、でどうしたの?声優の仕事がうまくいかないの??」
「あのね〜、今からそっちに私の先輩が行くの。それでねそっちに服を預けたことになってるから、5万円以内の紅い服を一着その人に何気なく渡しておいて。お金は渡したからさあ。」
「なんか、あんたもたいへんそうね〜。」
「で、あくまでも常連って感じで私を扱って、それに商品のタグは全部はずしてね。」
「分かった分かった。じゃあね。今度また遊びに行こうよ!!」
「うん。じゃ」
ぴっ
「ふー」
ほーこの顔に笑顔が再び戻った。相当疲れた様子もうかがえる。
「これでOKか・・・・・・」
「お母さんに2回も助けられたな。」
ほーこはぬか漬けのにおいのするお札を眺めながら思った。
あまりの疲労に、どのくらい呆然としていただろうか。
「ほーこちゃん、たっだいまあ〜っ☆」
ま○りんの素っ頓狂な声で、ほーこは我に返った。
ま○りんの手には、くだんの紅い洋服が・・・
「まえにあたしが着てたのとはちょっとちがうかもっ!でもま○りん××でぬけてる
から、気付かないわよねっ☆」
先輩に対していささか無礼な言葉ではあるが、そう思って安心するほーこであった。
「すっごいねぇほーこちゃん、あたしびっくりしちゃったっ!」
おやおや、今度は何事?まさかまた災難が降りかかってくるのっ、もう勘
弁してっ!と、思わず反射的に身構えてしまったほーこであった。
「ブティックに行ったらねっ、この服のほかに、値札のついてない服がい
〜っぱいあったんだっ。でねっ、なんで値札がついてないんですかってお店
の人に聞いたら、これは全部、ほーこちゃんがうちのお店に預けているもので
す、って。
すっごいねえ〜っ。百着くらい、いやもっとかなっ?
ほーこちゃんがあんな衣装持ちなんて、知らなかったっ!」
心底感心したというように、ま○りんはほーこを熱く見つめた。
「そ・・・そうっ?でもさぁ、やっぱりあたしたちって仕事柄、イベントと
かサイン会とか、人前に出ることって、これから多くなるじゃないっ!
やっぱファンの人の前に出るときは、おしゃれしなくっちゃ!夢を売る仕事だ
もんっ!
そのためには、普段から着るものにもこだわらなきゃねっ!イベントのときだけ
お洒落しようってったって、普段から慣れとかないと、衣装が肌につかないってい
うかっ・・・」
あらあらっ、そんなことを放言していいのかなっ、ほーこちゃん。
「ちょちょっとっ、商品のタグは全部外してって、まさかホントにお店の品のタグ
全部外しちゃったのっ!」
ボーゼンとするほーこであったが、よく事情を説明もせず、体裁だけ取り繕うよう
頼んだ手前、誰にも文句を言うことができない。
「そっかあ・・・ほーこちゃんって、すっごいプロ意識あるんだねぇ。あたしも見な
らわなきゃっ!でさっ、それはそれとしてっ・・・」
ギクッ!今度はなにが来るのか、ほーこの心の中に暗雲が立ち込める。
「おねがいっ!あたしこんどイベントにでるんだっ、でも着てくお洋服に困っちゃっ
てるの。あそこのブティックに預けてあるほーこちゃんの洋服、イベントのときとか、
あたしに貸してねっ!いいでしょっ?」
さあ、またしても困ったことになったが、体裁を徹底的に繕うとほぞをかためた以上
もはやあとには引けないほーこであった。
「う・・・うん、い、いいけどっ・・・」
ほーことしては、そう言うしかなかった。
「ありがとうほーこちゃん!やっぱ持つべきものは、いい後輩と友達だよねっ!」
無邪気に喜ぶま○りんを片目に、みたび途方にくれるほーこであった。
そして、あるよく晴れた日曜日、遊園地にはほーことま○りんの
姿があった。
ま○りんは例の紅い服、ほーこはというと、これまた新調した白いワンピース。
ほんとはこんなことのためにわざわざ洋服を新調する必要はないのだろうが、普段から着る物にもこだわらなきゃねと言った手前、Tシャツとジーンズではなんとなく気が引けてしまう。
自分が言ってしまったこととはいえ、やや後悔しているほーこであった。
「あ〜あ、ここで服を新調した分、今月は切り詰めなくっちゃ。
ま、わんこそばも残ってるし、食費の方はどうにかするにしても、
今月はもう、服買えないなっ」
「ど〜したのほーこちゃん?ちょっと元気無いんじゃない?」
「う、ううん、そんなことないよっ!」
しかし、たまの日曜日に遊園地で女二人、ああ・・・彼氏欲しい
なっ、とも思うほーこであった。
「ねっ、ほーこちゃんほーこちゃん、次はこれに乗ろうっ!」
さっきからジェットコースターやらバイキングやら、無茶苦茶乗りまわって、
お次は観覧車である。
「う、うん、行こうかっ!」
元気な女二人である。
夕焼けが空を染め、町に灯りがともりはじめている。なかなかきれいな景色である。
「う〜ん、やっぱ高いとこっていいよねっ。なんかこう、爽快って言うか・・・」
「そうだねま○りん。久々に童心にかえって、今日は一日、楽しかったねっ。
やっぱり私たち声優さんは夢を売る仕事だから、いつまでもピュアな童心を忘れ
ないようにしないと・・・」
さすが、ここでも出たかプロ意識!
「そっか〜、ピュアな心ねぇ・・・そうだよね」
あらためて感心したように頷いて、ほーこを見つめるま○りん。
おもわず、しかと目を合わせてしまったほーこ。
「ね、ほーこちゃん・・・」
「え……」
ま○りんの顔がゆっくりとこちらの顔に近づいてくる。
目指すは、私のく・ち・び・る。
(そんな、ま○りんってレズだったのー。ガーーーン)
「ほーこちゃん…」
切なくつぶやくま○りん。
そして手を伸ばしその先が唇に触れる。
「い、いやー。」
声にならない叫びが…
ここに来て、ほーこの貞操の危機!?
「ほーこちゃん…… 口にお弁当付けてるよ…」
言われて見ると唇のあたりにお昼に食べたカレーのごはん粒がくっついていた。
「あ……」
「あ〜ん、ぱくり。」
ま○りんは、そのまま手を伸ばしほーこの唇についていたご飯粒を平らげてしまった。
「どうしたの、ほーこちゃん顔赤いよ」
「え、ちょっと熱が出ちゃったかなって、えへへへ」
どうやら、ちょっと(かなり)勘違いしてしまったようだった。
「どれどれ…」
おでこに顔を当てて熱を測っているらしい。
「熱はないみたいねぇ、でも明日は仕事だから早めに帰って寝た方がいいかも。」
そうだ、私はなんてことを考えてたんだろう。
ま○りんはこんなにも心配してくれてるのに、いつもやさしい姉のような存在なのに。
も〜、ほーこのばかばかばか。
「ううん、ま○りんいつも心配してくれてありがとう。全然大丈夫だから…」
ーと、その時
ガチャーン
急に真っ暗になる車内。
どうやら停電のようである。
突然のアクシデントに不安になるほーこ。
暗いのは苦手、暗所恐怖症であった。
そしてもうひとつ浮かぶ新たな不安。
(実はやっぱりま○りんがレ○だったりしたらどうしよう。)
「こういうときは、お互いしゃべらないでじっとしてた方がいいよね。」
と、いちよう言っておくほーこ。
だが、ま○りんは切ない声でつぶやく。
「ね、ほーこちゃん・・・」
どきどきどきどき!
またまたどっきりの展開に、ほーこの心臓はバクバク言いすぎて口から飛び出し・・・・って、なんかグロテスクな方向に行っちゃって気持ち悪そうだから、や〜めた。
「ほーちゃん?」
(ちょっと、なんなのま○りん! やっぱりこのひとっ、マンガ化したら背中に白百合の花をいっぱい背負って登場しちゃったりするのかしら?)
「ねえねえ、ほーちゃ〜ん」
(どうしようどうしよう・・・・! そりゃもちろんま○りんのことは好きだけどさぁ、やっぱりあたし、結婚するなら素敵な殿方のほうがいいよぉ〜〜〜〜〜っ!!)
「ほーちゃんってばぁ!」
(やばいわ、このままじゃ・・・・
『さあほーちゃん、おいで。これからわたしが、本物の「ピュア」のなんたるかを、手取り足取り教えてあげよう。なぁに、心配することはないさ。このわたしがほーちゃんを痛い思いをさせるとでも思うかい? 大丈夫、わたしを信じて・・・・』
・・・・な〜んてことになっちゃったりしちゃったりして、いや〜〜〜んっ!)
ほーこの想像(妄想?)の中のま○りんは、白いタキシードを着て、赤いバラの花束を持って、画面全体がかすみがかっていて、花束を差し出すと同時にハープの音が「ポロロンポロロン〜♪」って鳴って。ほとんど「ジョー」とか「アキラ」とか「ケン」とかいうノリの・・・・って、ホストじゃん! それじゃあ!!
「んでもって、んでもってぇ〜〜〜! そのあとわたしはめくるめく桃源郷で・・・・きゃああああああああああっ!!」
「ほ〜ちゃんっ!」
「・・・・え?」
と、いきなり現実に押し戻されたほーこ。ハッとなって見ると、ま○りんが訝しげ〜な顔をしてほーこの顔をのぞき込んでいた。
いつの間にか、電気も戻ってるし・・・・バレバレや。
「あの、あたし・・・・?」
「桃源郷って、なに?」
「う゛っ!」
ほーこ、イッキに引きつる。
「・・・・な、なんのことかなぁ〜っ?」
必死に誤魔化そうとするが、ま○りんの追及は止まらない。
「てゆ〜か、そのニヤケ顔は?」
「えっ!? あの・・・・それは・・・・そのぉ〜」
「・・・・はっ、まさか!?」
いきなり大声を出すま○りん。
「はい?」
「まさかほーちゃん、れずれずだったの!?」
「違ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜うっ!」
雄叫びほーこ。
(あ〜〜〜どぉしよう! せっかくここまで作り上げた、サッ○ー顔負けなわたしのピュアでうるわしいイメージがぁ・・・・!!)
ちょい待て、なんで○ッチーやねん!?(虚構に満ちた・・・・なんちゃって)
とにもかくにも、自称『声優界の女王の筆頭候補』、最大のピンチである。
これまで幾多の危機を当意即妙の?名判断で乗り越えてきた
ほーこの頭脳は、めまぐるしく回転を始める。
しかし、かなり動転しているせいか、なかなかどう切りぬけ
ればよいか、いい案が思い浮かばない・・・
「ああっ!あたしの清楚で色白な美少女声優(?)としての
キャリアもここでおわって、次からはレ○ビアン声優としての
第2の人生がはじまってしまうのね?お父さん、お母さん、ごめん
なさい。ほーこは今まで幸せでしたっ・・・
ところで、レ○ネタでここまで引っ張ったのは誰なのーっ!
作者出てきなさ〜いっ!」
そのとき、ほーこたちの乗った観覧車が、終着点に近づくのが
見えた。・・・と、ひらめいた!
「違ぁう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!でもねっ、でもねま○りん・・・
あたし、今の状態、もう我慢できないのっ・・・もう、だめっ・・・」
「げっ、ほーこちゃんってやっぱりれ○れ○だったのねっ」
と思い、動転しそうになるま○りん。そのとき・・・
「終点ですよっ」
係員のお兄さんが、観覧車のドアをあける。その瞬間・・・
「おトイレ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!!!」
ほーこは一目散に観覧車をおりると、化粧室へ向かって駆け出した・・・
「な〜んだ、さっきからちょっと様子がおかしいって思ってたら、こんな
ことだったのっ!
そうかっ!気を紛らわすために、想像の世界へ飛んでたっ、てわけかっ?
もしかしてれ○れ○?なんて、あたし思わずばかなことを聞いちゃったなっ!」
と思う、能天気なま○りんであった。
さて、なぜか発作的に「おトイレ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」と叫んで、その場を
外したほーこだが、読者諸兄もお分かりのように無論、トイレに行きたかったわけではない。
「ああっ!あのときは思わずああいっちゃったけど、花も恥らう(ような年か?:筆者注
失礼・・・)お年頃のあたしが、あんなこと言っちゃうなんて、結構回りに人いたし
どうしよう・・・」
まさか、いつまでも化粧室にいるわけにもいかず、意を決してそこを出ると・・・
「大丈夫?ほーこちゃん」
気遣うように寄りそうま○りん。
「あっ、あのさほーこちゃん。さっき言ったことはあ、あ、あのっ、忘れてねっ。
ほーこちゃん、辛いの我慢するためにああやって凌いでたんだねっ。なのにあたし
ったら・・・」
あれっ、苦し紛れでしたことなのに、これで事態が収集できそう、と思い、ホッと
するほーこであった。
「でさっ、さっきの『桃源郷』ってなに?ど〜んな想像してたのっ!」
と、すぐに話題を切り替えるま○りん。
「いやっ、あんな状態だとっ、トイレも桃源郷なのさっ!あははっ!」
「な〜にそれ、ほーこちゃんったら、うふふっ!」
なんとなくうまくまとまり、レ○疑惑を終息させた、ほーこであった。
その後ふたりは、遊園地を出て帰りの電車に乗った。
そして2駅くらい過ぎた頃だろうか。ほーこがしきりにそわそわしたような顔で辺りを見回した。
「? どうしたの、ほーちゃん」
訊ねるま○りんに、ほーこは耳打ちする。
「ねえねえ、まち○ん?」
「・・・・ほーちゃん、ナニゲに伏せ字の位置が違うわよ・・・・」
「あいたたたたた!」
「もう、ほーちゃんったらおばかさんなんだからぁ!」
「こりゃまいったわ! あっはっは!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・終わりかいっ!
「それで・・・・」
「ほえっ?」
「ほーちゃん、なにか用?」
「ああ、そーだそーだ」
スコポンと忘れていたほーこは、そこで表情を厳しくして、改めてま○りんに耳打ちした。
「なんかあたしたち、つけられてない?」
「えっ?」
ま○りんは驚いて、辺りに目を配る。
「・・・・誰?」
「あっち、ドアの辺りでスポーツ新聞読んでる人」
言われて見てみると・・・・なるほどたしかに怪しい男がふたり、新聞紙に開けたふたつの穴から目ん玉をギョロギョロさせて、こちらを見ている・・・・って、それじゃバレバレだろ・・・・(^^;
「・・・・もしかして、ストーカーかなぁ?」
ま○りんは恐ろしくなってつぶやくが、ほーこは・・・・
「・・・・すばらしい、すばらしいわ」
「へっ?」
「だってそうじゃな〜い!?」
こらこら! 電車の中で騒ぐなっ!!
「こうしてイッちゃってるおっかけさんがついてくれるなんて、あたしたちが一流声優になったなによりの証拠じゃない!? お父様、お母様、ほーこはついにやりました!」
祈るのもダメッ!
「これで声優業界は、あたしのものですわ!!」
「違うでしょほーちゃんっ!」
ドアが開く。ま○りんはあわててほーこの手を引き、電車から飛び降りた。
「あ〜ん、ま○りぃ〜ん! まだここ降りるとこじゃないよぉ〜っ!!」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ〜が!」
ホームを走り抜け、階段を駆け下り、改札口をくぐる。
で、後ろを振り返ると、男たちはしっかり追いかけてきている。
「ふえ〜ん! いったいなんなのよぉ〜っ!?」
「○ちり〜んっ! ちょっと引っ張んないで、手が痛いよぉ〜!!」
「え〜いまた『○』がズレとるわァ! ・・・・へ〜い、タクシー!!」
大通りに出たふたりが手を挙げると、すぐに1台のタクシーが停まった。
「ほーちゃん、乗って!」
「どこ行くのぉ?」
「いいから乗れっちゅ〜に!」
ま○りんはボケまくるほーこをタクシーに放り込み、自分もそれに飛び乗った。
「運転手さん、とりあえずあの変態オヤジを引き離して!」
なんだなんだ、今度は逃亡ものアクション巨編に突入かぁ!?
どうやらそのようである。ま、レ○ネタで引っ張るよりは問題なか
ろう(^^;
後ろを一瞥すると、男たちもタクシーを捕まえ、ほーこたちの後を
追ってくるではないか!
「きっ、来たわね!大丈夫よほーこちゃん、あたしがついてるから
ねっ!」
ま○りんは緊張気味な面持ちだが、一方のほーこといえば・・・
「ついにイッちゃってる追っかけさんに付きまとわれる身分になっ
てしまったわっ!ああ、あたしたち、これからどうなっちゃうのかし
ら☆」
などと、こちらは事の重要性をあまり理解してないようだ・・・
「ところでま○り〜ん、どこまでいくのかなっ?料金メーターの
数字、結構イッちゃってるけど、あたしそんなに持ち合わせないよ!」
「えっ・・・」と、絶句するま○りん。
そう、なにしろ今日はタダ券使って遊園地に来たので、二人とも、財布
の中身は、さほど潤沢ではなかったのである。
ただならぬ事態を感じ取ったのか、タクシーの運転手さんが一言。
「払うもんはちゃんと払ってもらうよ。こっちもボランティアでやってる
わけじゃないからね」
「でっでも〜、あたしたち今、へんな男の人に追っかけまわされていて大変
なんです〜」
かわいらしく?事情説明をするま○りん。
「ふ〜ん、こないだもそんなこと言って、タクシー代踏み倒しやがったねーち
ゃんがいたなぁ・・・」
疑わしげな目を向ける運転手氏。
「そんなこと知らないわよっ!あたしたちは・・・」
なにか言いかけたま○りんに、ほーこが一言。
「あ、またあがったよっ!」
そんなものをぼんやりと傍観している場合ではない(笑)。ま○りんはタクシー
を止め、財布の中身をあらかた支払いに当てると、ほーこの手を引っ張って外には
しりだした。
するとその近くに、件の男たちが乗ったタクシーもストップ。
降りてきた男たちは、全速力でほーことま○りんの後を追いかけてくる。
「だめっ!逃げ切れないわ・・・」
「ま○り〜ん、あたしもう疲れたよ〜っ。もしかしたらそんなに危ないファンじゃ
ないんじゃない?ちょっとお話して、サインをあげたら、喜んで引き上げるかもよ」
「ばかっ!危なくないファンなら、普通ここまでしないでしょっ!よ〜し、こうな
ったら・・・」
ま○りんは意を決したように立ち止まると・・・
「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!このエッチ!変態!すけべっ!あたし
たちを捕まえて、○△×☆させたり、*○☆♪をしたりするつもりでしょ〜っ!!!
誰か、誰か助けてえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!」
ここの管理人殿にも立場というものがあり、桑島嬢にこの小説が贈呈されることを考え、
伏字はご勘弁を(笑)
さすが声優だけあって、凄まじい声量と内容である(^^;
すると・・・
男たちは苦笑し、そのうちの若い方がおもむろに口を開いた。
「どうやら我々は痴漢かストーカーにでも間違われていたようですな・・・やれやれ」
「痴漢やストーカーじゃなかったらなんなのよっ!花も恥らう?ような年頃のか弱い?
女の子を追い掛け回したりしてっ!ファンならファンとしてのマナーをちゃんと守ってよっ!」
お怒りま○りん。
「ファンって・・・あなたたち、どういう関係のご職業ですか?」
「は〜いっ!青○プロダクションが誇る二大看板美少女声優のほーことま○りんで〜すっ!」
素っ頓狂な声で答えるほーこに、面食らった表情を見せるお二人さん。
こういうときくらい、ちゃんと本名を名乗りなさいよ(^^;
「私たちはこういうものですが・・・」
といって二人の男が懐から取り出したのは、なんと警察手帳!
「え、警察の方だったんですか・・・?」
バツの悪そうな顔をするま○りん。さっきの絶叫は、やはりまずかったか(笑)
一方のほーこはというと、顔面蒼白。
「ああっ、警察ってことは、ブティックの件がばれたのかしらっ。あれってやっぱりいけない
ことだもんね。それとも、わんこそばアタックでま○りんを気絶させたのが傷害罪とか?
でっでもっ、あれは不可抗力だもん。ど〜しよう・・・」
警官たちは、二人のそれぞれの心中など解さぬように、口を開いた。
「実は最近あの沿線で、二人組の女性のスリが出ていてね。目撃者の話だと、若くて美人な
二人組の女性だそうで。我々は、調査のためにはりこんでいたのですが、そこで偶然あなたたち
に鉢合わせたわけですよ。
いきなり我々を見て逃げ出したんで、これは間違い無い!と思ったんですが、どうやら違う
みたいですね。済みませんでした。驚かせてしまいましたね。」
年配の方が、済まなそうに頭を下げた。
これを聞き、ようやくほっとした、ま○りんとほーこであった。
「ま○りん凄いねっ!さっき警官の人たちに叫んだ言葉。あれ伏字にしなかったら、管理人
さんのサ○ダボールさんの立場ないよ。し○んさんは喜ぶかもしれないけどっ!」
ほっとした反動からか、早速ま○りんをからかうほーこ。
「なっなによっ!仕方ないでしょっ。ほーこちゃんだって今日、観覧車乗ったとき、
『おトイレ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!』て絶叫したじゃない、あれだって凄いよ」
「でもあれは、放送禁止用語じゃないもんっ!」
「それになーによほーちゃん。さっき警官の人にご職業は?って聞かれて、『美少女』声優
なんて!自分で自分のこと美少女って言うのは、セー○ームーンとい○ねまだけで十分よっ」
相変わらず、楽しい二人であった。
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Wrote by :竜虎斎殿、ふくろう殿、みくづき・しおん殿、Less and Less
タイトルネーム:竜虎斎殿
ありがとうございました。