■ 君が望む永遠・上 ■
――ヴェルトマー城・テラス
「…いよいよ明日か」
夜の闇に包まれた城のテラスでアーサーは呟いた。
その声に刻まれるは深い苦悩。普段の彼からはとても想像できない姿だ。
何が一体彼を追い詰めているのだろうか?
「アーサー!またそこにいたのね。どうして下に来ないの?」
人気のないテラスにやってきたのはユリアだった。
アーサーを心配してやってきたのだろう。
ちなみに階下ではヴェルトマー城制圧の祝いの宴が催されている。
「ん…俺は大人数…ってのが苦手でね。それに…明日はバーハラ攻略だろう?
決戦の前に宴会とは…のん気な事だな」
ユリアに背を向け…アーサーは嘲るようにそう言った。
「皆…不安なのよ。相手はあのユリウスだし…こうでもしていないと、ね。
…空、綺麗ね」
アーサーの隣に並び夜空を見上げるユリア。
「…『ユリウス』じゃない。『ロプトウス』だ」
低い声で訂正するアーサー。その声はどこか悲しげでもあり…また怒っているようでもあった。
アーサーの物言いにユリアは一瞬――ほんの一瞬―― 身を切られるような辛そうな表情を浮かべた。
もっとも、次の瞬間には元の表情に戻っていたが。
「…ユリウス、よ。間違えないで。あの人は…あの人以外の何者でもないわ」
その言葉を受けて…アーサーが寂しげな表情(かお)をした事にユリアは気付いただろうか。
「…そう思うなら...それでもいいさ。ただ…迷いは必ず命取りになる。…それを、忘れるな」
そう言って立ち去って行こうとするアーサー。この場から…逃げるかのように。
「…」
何も言わず、アーサーの方を見ようともせず…ただ、空を見るユリア。
その瞳は…涙で濡れていた。
…と、それに気付いた、というわけでもないのだろうが…アーサーは突然振り返るとユリアに近付き…
自分のマントをユリアの肩に、そっ…とかけた。
突然の事に驚くユリアを無視して、アーサーは再びユリアに背を向けた。
「夜空を見るのも結構だが…ずっとそうしてると風邪ひくぜ。ほどほどに…な」
そう言い置くと、アーサーは足早に立ち去った。
アーサーなりにユリアを心配しているのだろう。...少々不器用ではあるが。
「…ごめんね…アーサー…。私は…」
誰に聞かせるわけでもなく呟いたその言葉は…冷たい夜風にさらわれていくだけだった。





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