THE DAYS-相違







授業が終わったあとの放課後の時間を、鉢屋三郎は図書室で過ごす事が多かった。
図書委員の親友、不破雷蔵に付いていき、雷蔵が仕事を終えるまで適当に本を読むのが習慣となっていた。
三郎は、実の所結構な読書家であったので、いくら図書室にいても退屈したりすることは無かった。

しかし、最近は少し違う。
が、図書室に来なければ、妙に落ち着かなくなるのだ。

三郎はかなりの速読で、一日に一冊程度軽く読み終えてみせる。
これまで、頁をめくる手の動きが遅くなることはなかった。
だが、と付き合い始めてから、その手が遅くなる事が多くなっていた。
大抵、三郎と雷蔵は、放課後に誰よりも早く図書室に来る。
それから雷蔵はカウンターで仕事をはじめ、三郎は入り口に一番近い席に座って本を読み始める。
それから暫くしたら、が食堂の手伝いを終えて、図書室にやってくるのが日課になっていた。
そのの来訪がすこしでも遅くなると、三郎の手の動きが鈍り、何度も何度も入り口を見やったり、
話の筋がわからなくなって、もう一度前から読み直したりということになるのだ。

今日は、「来訪」が少し遅れている。
さっきから何度目か、三郎はちらと入り口を見やった。
雷蔵は、それを見て浅く溜息をついた。

「何だ雷蔵」

三郎は、それに気付いて疑問符を浮かべる。

「あのね、三郎」

雷蔵はカウンターから出て、三郎の前の席に腰を下ろした。

「そんなにいちいち気にしなくっても、ちゃんはいつもちゃんと来るじゃないか」

三郎ははじめ、何の事を言っているのかわからないような顔をしていたが、暫く考えて、

「俺、そんなに気にしてたか?」

がくっ。
無自覚なのか!
雷蔵は今度はふかーく溜息をついた。

「雷蔵先輩、そーいったって、三郎先輩にはさんしか見えてないから仕方ないですよ」

ひょいと書棚の影からきり丸が顔を出した。

「一年の間でも有名なんスよ、三郎先輩とさんのことは」
「そうなの?」

そっすよ、ときり丸がへへ、と笑う。
きり丸は手に持っていた本を棚において、二人が座っていた席の横にやってきた。

さんと三郎先輩が一緒にいるとこを見かけない日は絶対無いっていってもおかしくないし」
「そうだねぇ、ちゃんイコール三郎っていっても過言じゃないねえ」
「そうかあ?」
「「そうなの!」」

きり丸と雷蔵が同時に叫んだ。
そのとき、

、ただいま参りましたー」

入り口からひょっこりが顔を覗かせた。

「や、三郎。今日は授業さぼらなかった?」
、俺が毎日サボってるとでも思っているのか」
「ほぼ毎日でしょうが」

べし、と軽く三郎の頭を叩いた。

さん、さん」
「何、きり丸君?」
「さっき迷わず三郎先輩に声かけましたよね。雷蔵先輩と三郎先輩の区別、できるんですか?」

はきょとんとして、

「ああ、そういえば」

何でだろうねえ、と笑って首をかしげた。

「教えてくださいよー」
「えー、そういわれても、何てったらいいんだろ…」

ふうん、とは腕を組んで一人ごちる。

「んー、あえていうなら、目?」
「目?」
「そ。こー…、雷蔵は穏やかーで円い目をしてんだけど、三郎は、なんか…何でも見切ってますって
感じ…なんだよねえ。こう、全く対照的なわけよ!」
「へ…ぇ」
「説明すると良くわかんないけどねー、あ、今日はもうおばちゃんの手伝いに行かないと」

が席を立つと、三郎もそれに次いで

「俺も行く」
「え、残らないの?」
「いいんだよ」
「あ、そう?じゃ、二人ともまた明日〜」
「じゃーな」

ぱたん、と図書室の扉が閉められた。
そして、残された二人。
しばしの沈黙の後に、きり丸がポツリと口を開いた。

「…雷蔵先輩」
「何、きり丸君?」
「結局の所、愛の力っていうわけなんですよね?」
「…そういうことだよね…」











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