THE DAYS19-大降





「つっ…」

雨が目に入った。
あんまりのザンザン降りで、まるで本物の滝に飛び込んだかのような感覚に襲われる。
服が水を吸って重い。
落ち葉の下が泥に変わって、足を取られてうまく走れない。
返り血はこの土砂降りのせいでとっくに流された。
殺してはいない、が、ひょっとしたらこの雨で体温を奪われて、いずれそうなるかもしれない。
情けはかけた。
後はどっちだって知ったこっちゃない。
それくらいのことをした男だったのだから。
その罰し方を、俺は生まれてからこれまで教わってきたのだから。

…。
男を迎え討ちにいって、さっきの場所から少し離れた。
雨のせいで遠くが見通せない。
は逃げてくれたのか。
だが、さっきの様子からして、そんなに遠くまで行けたとは考えられない。
ひょっとしたら、同じ場所に留まっているかもしれない。
こんな大雨の中…。

ドドド…と、もう決して雨音とはよべなくなってきた轟音のなか、三郎はを探す。

…!」

は何とか見つかった、安堵するが、それは一瞬にして驚愕に変わる。

大木の陰から覗いていたのは、崩れ落ちた体。
生い茂った木の葉に守られる事もなく、その身は雨に打ち付けられてた。

!!」

慌てて駆け寄って、体を抱き起こす。

!」

雨で頬に張り付いた髪を取って、体を揺さぶり起こした。

「…う…」
!」

意識が戻った。
三郎は、ようやく安堵の息を漏らす。
はゆっくりと目を開き、三郎の方に視線を向けた。

「は………よかっ」
「…………………何しに来たの」

雨の轟音さえも遮って、はぽつりとそう呟いた。

「………え…?」

一瞬、時が止まった。

は三郎の腕の中から身を起こして、駆け出そうとした。

「!おい、待てよ!、どういうことだよ!?」

すんでのところでの腕を掴んで三郎が引きとめる。
は濡れた髪を振り乱して必死に逃れようと身を捩った。

「離してよ!」
「何しにきたって、どういうことだよ!?」

三郎も声を荒げて問い詰める。

「私のこと置いて行っちゃうんなら、最初っから優しくなんてしないで!」
「何で…帰ってくるって言っただろう!」
「私が邪魔だったんでしょ!?だから置いていったんでしょ!?」
「そんなわけないだろ、何言ってるんだ!?」
「じゃあ何で置いていったの!!」
「それは…危険だから…!」
「前もそうだった…私は何も出来ないから、一人でいっちゃったんだ」
「前…?」
「私なんていなくなればよかったのに!私がいなかったら兄上は死なずに済んだかも知れないのに!」
「兄上…?、どういう…」
「母さんだって、私が生まれてなかったら、お父さんと別れてなかった…」
「おい、!」
「兄上、いなくなっちゃいや…、独りにしないで、私を独りにしないで!!」
!!」
「あにうえ、あにうえ、兄上…帰ってきて、兄上ぇぇぇ!」
「くっそ…!」

いくら声を荒げても、はますます取り乱す ばかりで埒があかない。
三郎はぎゅっと目を閉じ、の鳩尾に拳を埋め込んだ。

「ア…」

は短く息を吐いて、がくりと三郎の肩に落ちた。
意識を飛ばしたを背負って、三郎はとにかく杭瀬村に向けて走った。

「一体どうなってんだよ…!」







雨は弱まる事を知らない。




















岐路←→夕暗
















テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル