THE DAYS20-夕暗
嫌な雨じゃのう…。
大木は窓から外を見上げ、そう思った。
ここまで降られると、畑だって荒れてしまう。
もう一度空を仰ぎ見るが、雲が空全体を真っ黒に覆い尽くし、
大粒の雨が地面めがけていっせいに叩きつけることにかわりはない。
家の中にも雨が入ってきたので、大木は窓を閉めた。
雨音が、ほんの少し遠くなる。
すると直後、突然に、家の戸を激しく叩く音が響いた。
「先生!!大木先生!!」
「この声は…鉢屋か?」
わずかに濡れた床から、大木は腰をあげた。
「大木先生!大木先生!!」
片腕にを抱いて、三郎は精一杯の声で家主を呼ぶ。
雨音に掻き消されてしまわないように、精一杯の力で戸を叩いた。
「先生!!早く…早くあけてください!!大木先生!!!」
さらに腕を振り上げたとき、ようやく戸が開けられた。
「…!?」
大木は、目に飛び込んだ三郎との姿に息を呑んだ。
三郎は、大木の顔を見るなり、切羽詰った口調で訴えかける。
「先生、が、がおかしいんです!山賊みたいな奴に襲われて…。
それで、俺がそれを食い止めに置いていって、それからおかしいんです!」
「鉢屋、落ち着け!」
「俺が目に入っていなかった…『兄上』と…、それしか言わないんです!」
大木の目の色が変わる。
「なんだと…」
「『兄上』って誰なんですか、こいつに何があったんですか!?」
三郎はさらに激しく問い掛ける。
そのとき。
「…う」
が目を覚ました。
「!」
はぼんやりと目を開くと、あたりを見回す。
「兄上はどこ…?」
三郎の、顔が固まった。
「兄上って誰だよ…」
三郎の呟きは滝のような雨音に消えた。
しかし目だけは真っ直ぐにを捕らえていた。
は怯えるように三郎の腕をすり抜ける。
「兄上じゃない…」
「そうだ…、よく見ろよ…俺はお前の兄じゃない!!」
「嫌!離して!!兄上!兄上!」
三郎はの肩を強く掴み、はそれを強い力で振り払った。
それでも三郎はさらに強い力でを捕まえようとする。
「俺を見ろよ!俺はお前の兄なんかじゃねえ!!!」
「いや!!兄上ぇえ!」
「!」
「鉢屋、もうやめろ!」
大木が割って止めに入る。
は大木にしがみついて、兄上、兄上、とうわ言のように呼び続けた。
「何なんだよ…っ、わけわかんねえ…、なんで…」
「鉢屋、ひとまずお前は学園に帰れ。はわしが預かる」
「!応えろよ!」
「学園長にその賊のことも報告しろ」
「先生、俺はと話したい!」
「鉢屋!!」
大木の怒声が薄暗闇をつんざく。
後には先程と変わらぬ雨音が残った。
「ひとりにしないで…会いたい…あにうえ…」
の嗚咽が大木の背中越しに聞こえる。
三郎は呆然と、立ち尽くした。
「………お前なら、を救えると思ったのにな…」
そう言い残して、大木はを連れて家に入った。
…涙の雨が、降り注ぐ。
大降←→涙雨
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