2001/12/10  社会不適合になりたい



私がコーヒーショップのお昼のバイトを始めたのは十月の末の事だ。
自分で云うのもなんだが私は物覚えの良い方なので直ぐに大体の仕事を覚える事が出来た。 入った頃は本当に良い人たちと良い職場を見つけられたと嬉しかった。 みんな優しいし仕事も楽な方だと思う。それに休みの融通が結構利くというのも魅力だった。 ここでしばらく働こう。そう思っていたし家族や友達にもそう云った。凄く良い職場なんだよって。 でもそれはそう自分に言い聞かせようとしていただけだった。
十一月の末に私はインフルエンザにかかった。最初は治ったら直ぐに復帰するつもりだった。 でも家に一人で居ると言い聞かせていた部分がどんどんと剥がれていった。
きっと私はあそこの職場に馴染む事は出来ない。良い人たちばかりだけどみんな大人だし 気の合う人も居ない。きっと又私は全員に気を使いながら得意の愛想笑いをしなければならない。 高校の時と同じだ。又私は同じ事を繰り返す。
良い部分だけで見逃していた筈だった部分が溢れ出した。休んだ一日目と二日目には連絡を 入れたが、三日目には無断欠勤をした。四日目も連絡を入れた。五日目には又無断欠席をした。 怖い。そればかりが頭に付いた。人付き合いが怖い。人間はみんな嘘の固まりだ。 又私は同じ事を繰り返す。あそこは学校と変わらない。
無断欠勤をした日には電話が来た。まだ調子が悪いと嘘を付いた。ある意味嘘ではないのだけど。 それがインフルエンザの所為ではなくて鬱の所為だというだけの話で、調子は悪いことには 変わりはない。五日目の電話で「それ位酷いならもう一週間休みなさい」と店長に云われた。
そして私は一週間休み、今日やっと復帰になった。
当たり前のこと過ぎるけれど、私は完全に信頼を失っていた。それなりにみんなは心配してくれたけど ただただ私は沈んでいく一方だった。卑屈なのは解ってる。でも居心地が悪かったのは事実で。 仕事の始めにもう厭だと思った。もう厭だもう辞める。そう思った。 でも当然のように私は笑顔で仕事をした。笑顔で楽しそうに生き生きと働いた。 心の中には厭な感情が積もっていった。
私がお昼に働いているのは実家だからだ。本当はお昼の長期バイトなんて私には向いていない。 人付き合いが出来ない訳ではなく、苦手なのだ。何時だって私は人の顔色ばかりを伺っている。 本当は夜に働きたい。それで昼には短期のバイトだけしたい。でも私は実家だから。 前に夜働いていた時も父親には内緒だったし、私は最近芝居を始めたから「仕事もしないで 芝居なんかやってるのか」と父親に思われるのが怖い。だから父親への定性を守る為にお昼 も働かなければならない。
本当は夜に働きたい。でもお昼にも働かなければならない。
でももう厭だ。あそこではもう働きたくない。
どんどんと私は鬱になって、一睡も出来ずに朝を迎えた。




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