この世界が朽ち果てるまで 1








「高石っ!」

彼の声がボクの名を呼んで、それだけで、背筋がぞくぞくしちゃう、ボクはその 呼びかけに笑顔で応える。君は慌てて踵を返して逃げて行こうとするから、少し 乱暴な手段に出なくてはいけなくなった。きつく腕を捩じ上げて、柔かな下草に 組み伏せる。恐怖に引き攣る端正な顔。そんな顔しても駄目、ボクは情け容赦な く、君を痛めつけたい気分なんだ。


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皆で会う事になってる例の夏の日。少し背が伸びたみたい、幾分大人びた表情で 、一乗寺くんは待ち合わせ場所にやって来た。割と久しぶりに見るせいで、なん だか妙に眩しく見えるその姿。


彼が笑う。いつもはあまり声を出して笑う事なんてないけど。
大輔くんがふざけて、子供みたいに纏わりついて。しょうがないなって、少し困 った風に眉を寄せながらも、犬のようにじゃれついてくる大輔くんの仕草に、耐 え切れなくなった君は声立てて笑う。


少し離れた所からそれを見ていたボクは、不思議な感慨を持って、その光景を冷 ややかに分析する。頑なに仲間というものを拒んできた一乗寺くんは、大輔くん の熱意にほだされて、今や二人はお互いを、なくてはならない親友として、共に 戦いをくぐり抜けてきた戦友として、日々友情を深め合ってる。そして一乗寺く んは大輔くんといると、普段の警戒心が脆くも消え失せて、まったくの無防備に なる。



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彼を待つ間のほんの一時、堪らなくいやな気持ちに襲われて、ボクは人気の無い 夜の校舎、壁に手をついて、嘔吐感を逃そうと。こんな気持ちならいらないと何 度も思って。心の中に巣食うどろどろした感情が、ボクを打ちのめす、ボクを取 り込んで全身隈なく、黒く染め上げる。最後の最後まで、なんとか抵抗を試みた けれど、それは叶わなかった。ボクは所詮、弱い人間だから。でもだからこそ、 欲望には忠実。

「具合悪いんじゃないか?」

心配そうにボクを覗き込んでくる、一乗寺くんの顔。
揺れる黒い髪がボクの視界に入り込んで。ふふん、人の心配なんかしてる暇ある の?って心の中でボクは。




学校の裏門、そこから鬱蒼と続く木々の小道。夏は木陰を提供してくれる、静か で穏やかなそこは、日が落ちると人目の届かない暗い森。一乗寺くんと夜に学校 の前で待ち合わせて。ゆっくりその森へと足を踏み入れると、最早ここは現実の 世界ではあり得ない。君を罠に誘い込むには、ほんの少しの知恵が必要。幸いな 事にボクにはそれの持ち合わせがあるから。静かな暗い森の中、不意をついて君 を捕まえる事なんて造作もなく。掴んだ腕の頼りない細さ。体中で驚愕してるの を、ボクはゆっくりと君の唇から恐怖を味わう。舌で絡めた君の震える柔かなベ ルベット。欲望の起爆剤になって、ボクをの精神の高みに押し上げる。捕らえら れた子うさぎは、どんなに幼くても自分の運命を知る。瞳に絶望の色を滲ませて 、それでも逃げられずに。




用意周到、リュックの中潜ませてた紐で、手早く一乗寺くんの手首を括る。そし て君は陵辱の予感にすっかり怯えて、ボクを見上げて、助けを請うような仕草で 泣くがいい。気丈にも君は震えながらも、ボクを問い詰める。

「こんなこと、なんの意味がある?傷つけたいならもっと簡単な方法、いくらで も」

「意味なんてないよ。だからこれでいい」





                                


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