この世界が朽ち果てるまで 1








「高石っ!」

彼の声がボクの名を呼んで、それだけで、背筋がぞくぞくしちゃう、ボクはその 呼びかけに笑顔で応える。君は慌てて踵を返して逃げて行こうとするから、少し 乱暴な手段に出なくてはいけなくなった。きつく腕を捩じ上げて、柔かな下草に 組み伏せる。恐怖に引き攣る端正な顔。そんな顔しても駄目、ボクは情け容赦な く、君を痛めつけたい気分なんだ。


**********



皆で会う事になってる例の夏の日。少し背が伸びたみたい、幾分大人びた表情で 、一乗寺くんは待ち合わせ場所にやって来た。割と久しぶりに見るせいで、なん だか妙に眩しく見えるその姿。


彼が笑う。いつもはあまり声を出して笑う事なんてないけど。
大輔くんがふざけて、子供みたいに纏わりついて。しょうがないなって、少し困 った風に眉を寄せながらも、犬のようにじゃれついてくる大輔くんの仕草に、耐 え切れなくなった君は声立てて笑う。


少し離れた所からそれを見ていたボクは、不思議な感慨を持って、その光景を冷 ややかに分析する。頑なに仲間というものを拒んできた一乗寺くんは、大輔くん の熱意にほだされて、今や二人はお互いを、なくてはならない親友として、共に 戦いをくぐり抜けてきた戦友として、日々友情を深め合ってる。そして一乗寺く んは大輔くんといると、普段の警戒心が脆くも消え失せて、まったくの無防備に なる。



**********



彼を待つ間のほんの一時、堪らなくいやな気持ちに襲われて、ボクは人気の無い 夜の校舎、壁に手をついて、嘔吐感を逃そうと。こんな気持ちならいらないと何 度も思って。心の中に巣食うどろどろした感情が、ボクを打ちのめす、ボクを取 り込んで全身隈なく、黒く染め上げる。最後の最後まで、なんとか抵抗を試みた けれど、それは叶わなかった。ボクは所詮、弱い人間だから。でもだからこそ、 欲望には忠実。

「具合悪いんじゃないか?」

心配そうにボクを覗き込んでくる、一乗寺くんの顔。
揺れる黒い髪がボクの視界に入り込んで。ふふん、人の心配なんかしてる暇ある の?って心の中でボクは。




学校の裏門、そこから鬱蒼と続く木々の小道。夏は木陰を提供してくれる、静か で穏やかなそこは、日が落ちると人目の届かない暗い森。一乗寺くんと夜に学校 の前で待ち合わせて。ゆっくりその森へと足を踏み入れると、最早ここは現実の 世界ではあり得ない。君を罠に誘い込むには、ほんの少しの知恵が必要。幸いな 事にボクにはそれの持ち合わせがあるから。静かな暗い森の中、不意をついて君 を捕まえる事なんて造作もなく。掴んだ腕の頼りない細さ。体中で驚愕してるの を、ボクはゆっくりと君の唇から恐怖を味わう。舌で絡めた君の震える柔かなベ ルベット。欲望の起爆剤になって、ボクをの精神の高みに押し上げる。捕らえら れた子うさぎは、どんなに幼くても自分の運命を知る。瞳に絶望の色を滲ませて 、それでも逃げられずに。




用意周到、リュックの中潜ませてた紐で、手早く一乗寺くんの手首を括る。そし て君は陵辱の予感にすっかり怯えて、ボクを見上げて、助けを請うような仕草で 泣くがいい。気丈にも君は震えながらも、ボクを問い詰める。

「こんなこと、なんの意味がある?傷つけたいならもっと簡単な方法、いくらで も」

「意味なんてないよ。だからこれでいい」





                                


next




PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル