夢から覚めたボクはまた夢を ≪2≫
「夢の中で君は、デジモンカイザーだったよ」
たったそれだけの言葉が思い出したくない過去の出来事を蘇らせてしまった事は明らかだった。息を呑む気配、俯いてしまって表情は伺えないけれど。
続けてもいいのかな?それとも……。
一乗寺くんの隣に座って、その体をこちらに向けさせる。
顔は以前背けたまま、向かい合うようにして座って、ボクはなんだかこれじゃ、君を苛めているみたい。そっと頬に口付けたら、吃驚した君が顔を上げる。
「ねえ、ボク夢の中で君に欲情しちゃった」
掠れた声でそれだけ言ったら、一乗寺くんは意味が掴めないという風に眉を顰めてみせたので、ボクはちょっと鈍い君にもわかるようにはっきりわからせてあげなくちゃならなくなった。髪をかきあげて首筋に唇を落とす。
そのまま後ろに押し倒すと、ソファの肘の所に君の頭が丁度良く乗っかった。
首筋を強く吸い上げたら、流石に一乗寺君は抵抗してボクを押し返す。
そんなの予想の範囲内、手早くシャツの裾を捲り上げたら、白い肌がボクの目を射る。
パニック起こして暴れる一乗寺くんの腕を力で押さえつけ、肌のすべらかさに今朝の夢の名残を思い出して、しばらくうっとりしてしまう。
体を跨いで押さえつけ、暫くするとおとなしくなるのを不思議に思うと、一乗寺くんは恐怖に竦んでいるようだった。これから起こる事、以前、力で押さえつけ激情の赴くままに殴りつけた事、それらが彼を怯えさせている。
「怖がらないでよ、酷くしないからさ」
ボクの言葉聞こえてるんだか。おとなしくなったのをいい事に、一乗寺くんの服に手をかけて全て脱がせる。
流石に下着を剥ぎ取られる時には若干の抵抗を見せるけど、それが却ってボクを煽るんだ。
全裸って、なんかすごい無防備なんだなあって冷静に考えてるボク。
無防備な自分を守る最後の砦よろしく、白い腕が体の前で交差してる。
「ボク、君の体、憶えておきたいんだけど。ねえ、良く見せてよ?」
邪魔な手をどけて、君の生まれたまんまの姿ってのを……。
こうして裸をボクの目の前に晒してる君は、あまりにも痛々しい。
小刻みに震える白い華奢な体、胸のうっすら色づいてる部分に指で触れる。
途端に大きく体が揺らいで、ボクから逃れようと。
「ここ、感じちゃう?女の子みたい」
大袈裟に驚いてみせるそんなボクの様子に、君が酷く動揺しているのが見て取れる。
唇噛み締めて堪えてる姿なんか、哀れを通り越して、なんだか……なんだかすごく淫ら。
白く血の気を失った唇に口付け、きつく閉じられた歯の隙間を無理にこじ開けて、舌をもぐり込ませる。
柔らかくってぬめってて、絡めとると気持ちいい、ダイレクトに快感を与えてくれる不思議な行為。ボクはキスが好き、君とするキスは最高に気持ちいいから大好き。
君の声をこうして間近に聞いてるからか、ボクの理性が粉々に吹っ飛んでしまいそう。
いつまでもその感触を味わってると、ボクの下で撥ねる君の体は、しまいには力を失ってぐったりしてくる。
ボクは昂ぶってきてる自分自身を取り出して、軽く擦りあげる。
抵抗しないのをいい事に、一乗寺くんの脚を思いっきり押し広げ、堅くなったそれを無理やり押し込もうと、奥まったその部分にあてがうと、微かに声が漏れた。
夢中で腰を押しつける、幼い故に知識もなく、まだ誰かを受け入れた事のない、固く閉ざされたその場所へ。自分の欲望を満たす為だけに。
ボクは一足飛びにオトナになりたい。誰よりも早く。
ほんとは言いなりになんてなりたくなかった、いくつかの遠い日の出来事。
泣いて嫌がっても結局は丸め込まれて、都合のいいようにされて。
だからボクはいつからか学習したんだ。泣いても喚いてもそれが叶えられないのなら。
子供なんだからって理由で、なにもわからないだろうからなんて。
今まで振りまわされてきたその分だけ。
少しづつ……ボクは変わっていって、ものわかりのいい息子を演じ、手の掛からないいい子ねって言われる度に、
唾棄したい気持ちでボクは張り裂けそうになる。
そうやってボクは、短い子供時代に決別したんだ。
無邪気で居られる他の子供達の幸福を羨む反面、蔑んで。
結局ボクは妬ましかっただけ。
ボクが早々に捨て去らなければならなくて、でもどんなにそれに未練を感じていたのかを思い知らされる度に、
暗澹たる気持ちになって。
青ざめた頬、怯える瞳、震える体、何もかもが。
ボクの心の底の醜い感情を刺激して、君に酷くしたい、怖がられたい。
君をボクと同じ場所まで引き摺り下ろしたい。
結局は満たされていて、欲しい物は全て揃っていて、ただ今まではそれが見えていなかったというだけの。
体に妙に力が入るもんだから、ボクは少しも君に受け入れてもらえる事なく。
押しつけても拒まれて、擦られるだけの快感に堪らず熱く溢れさせてしまい、
それで終わってしまったボクの初めての。
居たたまれずに,黙って一乗寺くんの体の上から、のろのろと。
ボクを受け入れてくれなかったその部分に残る残滓を、君の指が拭う。
震える指に絡みつくそれが君を打ちのめしているのが、どこかボクを満足させる。
君は、自分にされた仕打ちに黙って唇を噛み、深呼吸して乱れた感情を必死になって取り繕って、
言いたい事も全て胸のうちにしまっちゃうんだろう。
だからボクは……。
君を汚したい、喚かせて泣かせて、いつもは隠し通す心のうちで。
ボクなしじゃ生きていけないって。
ボクは君に言わせたい。
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