12月23日、20時38分。
逆算して考えるとその位だと思う

気が付くと
目の前には失くしたと思っていた
小さなアヒルの置き物があった
そして随分と埃っぽい。

背筋が寒くなる感覚を受けて
私は一気に目を覚ました
ベッドの下で。

すっかり寝過ごしてしまった
昨夜は久しぶりに会った友人達と
飲み会に行ったはずで
でもその後の記憶があまりない
分かるのは2軒目に突入したところまでだ


胸元はなぜか濡れていて
頭はズキズキするし
床に伏せて寝たせいで
顔の半面がとても痛かった



時計を見ると
20時50分だった。
予想したより少し
早い時間だったので安堵した



約束の時間には1時間以上あるので
バスでシャワーに打たれながら
目を閉じて考えようとした
エンジに会うこと。
会っていいのかどうか。

だけど浮かんでくるのは
別の顔だったので諦めた





南海通りは相変わらず
多数の人で賑わっている。
街はすっかり夜の顔に変わって
ネオンが燦然と輝いていた

「なんば」は最も大阪色が濃い場所だ



噴水の脇で落ち着かない感じで
腰を浮かせてもたれている
エンジが居た。
足元に煙草が2、3本落ちている


近付くにつれ
自分から声をかける
タイミングが計れなくて
困った。

エンジは
ポケットに手を入れ
伏し目がちに煙草を吸っている。
横顔にとても哀愁があるので
通り過ぎる人の目を奪っている
端整、というより愛らしい。

周りを見渡すと
エンジの方を見て
囁き合っている女性が
数名、いや数組いた。

もしかして、
声を掛けようか相談してるんだろうかと
直感的に思った。
こんな所で
騒ぎになってしまったら大変だ
私は小走りに
エンジに駆け寄った

「・・あっ、おーはよ」


今回も、先を越されてしまった。
屈託のない感じの笑顔で
エンジが手をあげた

帽子は被っているけれど
サングラスは色つきではなくて
huvcoolのメンバーだとすぐ分かる

眼鏡越しなのに、
透き通った瞳が印象的で
挨拶だけすると
顔を見れなくて
軽く俯いてしまった

(なんだ、彼女連れじゃん)
人ごみの雑音に紛れて
そんな風につぶやく声が聞こえた

さっきの女性達だ。
容易く諦めて
また辺りを物色する様子を見ると
エンジだと気付いてなかったようで良かった
しかし、彼女ではないのだけど。

「ごめん、あんま時間ないんだ今日」
エンジを見ると
申し訳なさそうにしている

少し残念な気もしたけど
正直安心した。
エンジと会うのは打ち上げの日以来で、
本当に数える程しか会話もしてないし
一緒にいるだけで緊張してしまうからだ

「とりあえず」
とエンジが手を差し出した


お金を渡せということだろうか

バッグに手をのばそうとしたら
そのまま手を掴まれて
ものすごい勢いでひっぱられた


エンジは見た目では
想像つかないくらいの
足の速さで、
私はまるでひきづられるように
その後を走った

噴水の前にある人波が
モーゼの海の如く割れる
好奇の目を受けながら
私の顔は真赤になっているのに
エンジの背中は心地良さげに
風を切っていた










つづく
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