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スピラ ミラビリス
渦巻 螺旋 変化しつづける
スピラ ミラビリス
アーアー
スキ・ピオの夢・・・。


「アセンズ、『スピラ・ミラビリス劇場』の歌曲だね。確か題名は『スキ・ピオの夢』・・・。」
 満月が門前都市アル・ロークを明るく照らす夜、グレイ・グロリアスが街外れの丘で一人、歌っていた女性に声をかけた。
「そう・・・。良く知っていたわね。」
 その女性、・ブロウィン・ウインド・はグレイの声に歌を止め、ゆっくりと振り返る。
「一応、有名に歌だからな。」
「私ね、本当は歌手になりたかったの。親が神官だったから、無理な夢だったのだけれど。」
「綺麗な声じゃん。今すぐにでもなれるさ。」
「無理よ・・・。神官戦士の仕事があるし、今度はミストブレイカーズとしての責任もあるわ。」
 彼女はそう答えを返すと、グレイの横を抜けて、宿の方へと戻っていった。彼女の後ろ姿を見ながら、グレイはポツリとつぶやく。
「やれやれ、もっと肩の力を抜いていいのになぁ。仲間はいっぱいいるのにさ。」

イーラ PBM 「フロス島」エリア
霧幻想
MIST BRAKERS
−ミスト ブレイカーズ−
           エリア担当 川本 直紀



第二話「逆襲」
−霧幻遊戯−



 

ACT.1

「なぜです!なぜ、エル・ロークを武力で制圧するのですか?ウルザ様に呼ばれてここまで来たと思えば・・・。こんなことは教団の騎士団がするべきことではありません!」
 ショートで茶髪の髪を振り乱し、・サナ・ウェレス・は自分の直属の上司、ハールーン・アイケイシアに抗議する。歳が同じこともあるのだろう。普段は仲の良い二人は、逆に言いたいことも言える仲なのである。
「聖花騎士団の力は信徒を守るためのものであって、その騎士団があろうことか信徒に対してその力を行使するなんて、絶対あってはならないことだ!」
 ここはヒューム山大神殿。その一室でハールーンとサナは話をしていた。この部屋は六花公専用の部屋で、かなり広い。窓も広く明るい。部屋にあるソファーに座り、二人は対面して紅茶を飲んでいる。
ハールーンは「ふう。」と軽く息をつき席を立つと、困ったように語りかける。
「私も実際この戦いが、本当に聖戦なのかわからない。かといって、私自身が出向くことはできない・・・。サナ、君が行って見てくれないか?そしてその姿を私に報告してくれ。それから考えよう・・・。」
「わかりました。見てきましょう。全てを・・・。行くぞっ、皆のもの。あたしのミスト「真紅の聖者」(カルメジンロット・ハインリケ)を出せっ!!」
 サナは扉の外で控えている一般兵にそう命令する。
「ふん、赤薔薇騎士団の筆頭になったからといっても、好き勝手するのは慎む方がよいのではないか?」
 扉の外で24、5位の男が、じっとサナを見ていた。
「これはこれはジェイラム殿。どうです、自分のミストは見つかりましたか?ま、ギャンブルは程々に・・・。」
 サナが皮肉っぽい笑みを浮かべる。実はジェイラム、酒を飲んで酔っぱらっている時、自分のミストを賭けてギャンブルをし、見事に取られたのであった。もともと赤薔薇騎士団筆頭の地位にいた彼は、ハールーンの激怒にあい、こうして一般兵にまでなってしまったのである。
「うるさいっ!見ていろ、すぐにミストを奪い返してやるからな。」
 彼はそう捨てぜりふを吐くと、その場から去っていった。
「ん?」
 サナは通路の影に隠れている少女を見つける。「確か・・・イレイシア・シュタイナーさんだったっけ?どうしたんだい?ハールーンに何か用なのかい?」
「い、いえ・・・何も・・・。」
 イレイシアはおずおずとその場から離れていく。
「あっ、ちょっと・・・。ふぅ、可哀相に・・・。彼女にミスト特性があったばかりにこんなことになってしまって・・・。」
 イレイシアはリヒター家に引き取られて育った。そして今ではリヒター家の一人娘、・レミィ=リジーナ・フォン・リヒター・(レィリィ)の家庭教師兼お目付け役をしているのだ。
 彼女とレイリィがフロス島、ヒューム島に来たのはただの観光であった。だが、この事件に巻き込まれてしまい、彼女たちは教団側に拘束。さらに、ミスト特性があると判断されたイレイシアは、レィリィを人質に、教団への服従を強要されたのであった。
 イレイシアは自分のミストが置いてある格納庫へと歩を進める。
「天帝ローク様、私は・・・私の今している事は、きっと間違っています。でも私には、他にどうしていいのかわかりません。私が教団に逆らっても、死んでもきっとレィリィは殺されてしまう・・・。」
 彼女は自分のミスト「ニケの翼」(Wingof Nike)の前に立つ。
「ならば手柄をたてなければ。あのアレンスン様のミスト、セラの聖騎士を必ず倒す!」

 もう一つの部屋では、菫公テフェリー・ドレイクが、藍色の髪の美しい女性と一緒にいた。
「テフェリー様、どうか私もエル・ロークへ派遣してください。龍胆公のミストだけでは、エル・ロークを取り戻すべく戻ってくる者たちと戦うには心もとないと思うのです。」
 彼女もまた、エル・ロークへの出撃を希望しているのである。
「よいか、・リオ・サージュ・。ミシュラは我々に手出しをするなと言って出ていった。それを破って私の方から兵を出せば、我々の信頼関係に大幅な支障をきたしてしまう。それに出なくてもいい戦いに出撃し、兵力を消耗するなどもってのほかだからな。」
「しかし・・・。」
 冷たく出撃を拒否され、気落ちするリオを見かねて、テフェリーは言葉を続ける。
「だが、敵の情報は必要だ。何人か偵察要員を派遣しようと思うのだか、どうだ、やってくれるかい?」
「はいっ。」
「だが、絶対手出しするのではないぞ。」
「・・・はい・・・。」
 リオが部屋から退出すると、入れ違いに一人の青年が入ってくる。
「やれやれ、カタブツな女性をなだめるのも大変ですね。それとも、あういうのが好みなのですか?」
 そう言って彼は、テフェリーの隣に座る。
「・レオンハルト・ミュンツァー・か・・・。からかうのはよしてくれよ。本気で頼りにしているのは君だけだよ。」
 テフェリーは苦笑しながらも、懐なら一枚の護符を取り出す。
「何人の人間にそう言っているのだか・・・。・・・これは?」
「君の作戦を許可しよう。これは『対抗呪文』の護符だ。これでアズマイラが展開する結界も破ることができる。」
「本当に手助けだけなのですね。テフェリー様はミシュラの行動を黙って見ているのですか?」
「私は敵の情報も無いうちに、動いたりはしない。そのために君がいるのだし、リオがいる。」
 彼の腕が、レオンハルトの肩にまわる。
「わかりました。やってみましょう。」
 その腕を振り払い、彼は部屋を後にした。
 その夜、一体のミストが夜闇に紛れてエル・ロークへと飛び立っていった。

「むー・・・つまんないよー。イレイシアには全然会えないし、なんか『危ない』からってこの部屋から全然出してもらえないし。衛兵さんとかは優しいけど、神官さんとかみんな何かおっかないし・・・。ねぇ、精霊さんもそう思うよねぇ?」
 少女の周りには、風の精霊がふよふよ漂いながら、彼女の言葉にこくこくとうなづいている。
 この少女の名はレミィ=リジーナ・フォン・リヒター。イレイシアと一緒にヒューム島に来た、ファーレンの名門軍人家系リヒター家の一人娘である。
「何かおもしろいことあるかな・・・あれ?」
 レィリィは床の一つの石が、軽く動くことに気がついた。触ってみると、ガラガラという音を立てて、大きな穴が現れる。
「ううっ、これって抜け穴とか、隠し扉っとか言うんだよね。お父さんが昔、そんな話してくれたもん。よーし、行ってみようっ・・・とその前に・・・。」
 レィリィは部屋の隅にある竪琴を持ってくる。
「この『囁きの風』も持っていこっと。なんか愛着あるんだよね。突然あたしの胸から出てきたんだから・・・。」

        

ACT.2


「なぜだ!なぜあの結界が破れない!?」
 アズマイラのいる神殿の前で、ミシュラはイラついたように大声をあげる。
「やはり結界を破るには、テフェリー公の力を借りた方がよいのではないですか?」
「それはできない。他の奴らには手出し無用と伝えている。いまさらおめおめと助けなど呼べるか・・・。」
 龍胆騎士団筆頭、ガイトラッシュ・レイヴン(ガイ)の助言にミシュラは首を振って否定する。
 彼らの任務はエル・ロークを制圧し、アズマイラを「説得」すること。だが、神殿の前には強力な結界「花の壁」が展開しており、誰も近づけないでいるのだ。
「今はアズマイラの事よりも、敵の襲撃に対応する事の方が大事じゃねぇのか?」
 ふたりの間に、一人の眼鏡をかけた男が割って入る。マルセル・デサイー、ミストブレイカーズである。
「龍胆公、あなたは確かに都市の“制圧”はできたかもしれんが“防衛”はできるのか?そもそも向こうにはセラ・パラディンもあるし、ゲリラ戦もできるだろう。クロヴ公に援護をさせておいた方がよいのではないですか?」
 マルセルは出世を考えていない。大きな野望もない。だからこそ、そんなこともズバズバ言えるのだ。
「どいつもこいつも、他人の力ばっかりあてにして・・・。我等は神に選ばれた軍隊なのだ。あんな反乱軍など、我々の敵ではない・・・。」
「ちっ、わかってねーな・・・。」
 マルセルは憮然な表情でミシュラに背を向ける。
「待ってくれ。」
 ガイがマルセルの後を追う。
「貴公の提案、クロヴ公に伝えておこう。」
「ふん、勝手にしな・・・。」
 マルセルは無表情で、自分の宿泊地へと向かって歩いていく。
「よう、あいつらに何か言いに行ったのだろう。やめておけ。あいつらはミストの力しか信じない。ミストブレイカーズなんて胡散臭いものは、あまり使いたくないのさ・・・。」
 同じミストブレイカーズの男が彼の前に立つ。白銀の長髪に褐色の肌。右手には漆黒の鎌を持っている。
「あんたか。名前は・・・確か無かったよな?」
「ああ、『名無し』とでも呼んでくれ。」
 マルセルも「名無し」もお互いのことは何も知らないし、知りたくもない。無関心同士、何か気が合っていた。
「何だ?俺に会いに来たのか?」
「まさか・・・。」
 名無しは後ろを指さす。
「宿営地のほうで何かゴタゴタがあったらしい。面倒くさいから逃げてきた。」
「そうだな、俺も逃げよう。」
 二人はそう言葉を交わすと、宿営地から逃げていった。

 その宿営地でのゴタゴタというのは・・・。
「わっるいねー。このミストはトレジャーハンター、エスリン・ノベルが頂くよん。」
 少年っぽい女の子が、兵士たちの制止を振り切り、一体のA級ミストを起動させる。
「うーん・・・いい値になりそうだねぇ。」
 エスリンはコックピットの中で嬉しそうに値踏みすると、満月の夜空へと羽ばたいていった。

「アレンスン様、お久しぶりです。」
 通路を歩くアレンスンに、声をかける男がいた。
「あ・・・あなたはルーファーさん?お久しぶりですね・・・。」
 長い黒髪に端麗な顔だち。たが右頬には大きな傷痕がある。
「はい、ルーファー・デアネーベルです。自分は今から『堕天使』(フォーリン・エンジェル)でエル・ロークへ向かうところです。その前にアレンスン様にご挨拶をしようと思いまして。」
「まぁ、でもミシュラ様は他の騎士団の干渉を拒んでいたはず・・・。」
「龍胆騎士団の方からクロヴ公に援助の要請がありました。既に黒薔薇騎士団筆頭、・アイロス・シュナイダー・も『ラジク・マーログ』で飛び出しているはずです。」
「そうですか・・・。ルーファー、前から言ってましたけれど、白百合騎士団に入るつもりはありませんか?貴方ほどの騎士が、未だNO.2の地位にいるのはもったいないと思うのです。私の騎士団に入れば、すぐにでも筆頭になれるのに・・・。」
「その言葉、ありがとうございます。でも今は、戦いの事に集中したいのです。」
「・・・わかりました。御武運を・・・。」
 アレンスンの言葉に、ルーファーは敬礼で返すと、ミストの格納庫へ向かっていった。
「アイロスはもうエル・ロークに着いただろうか・・・。」

 超高速で鳥型のミストがエル・ロークへ向かって飛んで行く。後ろから着いてきた部下のミストは、もう影も見えない。
「少し、スピードを下げるか・・・。」
 アイロスは後ろを見てから、少しだけクロヴとの話を回想する。
「別に手柄を立てようとか、助太刀しようとは思わないでもよい。いいか、出来る限り死体を集めてくるのだ・・・。」
 クロヴの言葉が頭に響いている。
「死者を実験道具として使う・・・か。まぁいい。今はな・・・。」
 アイロスの前に、エル・ロークの街が見えた。

「よっと・・・。あれ?ここどこだ?」
 レィリィが抜け道から出てきた所は、暗く薄気味悪い通路の一角であった。
「あれ・・・誰かいるの・・・。」
 魔法士としての素質がある彼女は、神聖なこの神殿にある邪悪な気、妖魔の気配を近くの部屋から感じたのである。その部屋を見つけ、彼女は必死の思いで扉の窓にかじりつき、中を覗く。
「妖魔の女の人だ・・・。」
「こら、そこで何をしているっ!」
 ドカドカと何人かの衛兵が、彼女を見つけ、捕まえようとやってくる。
「あわわ・・・逃げなきゃ・・・。」
 ところが、その衛兵たちは途中で動きが止まると、ぐったりとその場に崩れ落ちた。
「フッ、お嬢ちゃんが気を引いておいてくれたおかげで、難なく片づけることが出来たぜ。」
 レィリィの前に、巨大な十字手裏剣を持った男が現れる。緋色のコートを着た、美形の青年だ。
「あ・・・両目の色違うんだね・・・。じゃなくて、ありがとう。おかげで助かったよ。」
「別に助けたわけじゃねェ。俺はただ、リンネに会いに来ただけだ。ウワサ通りに妖魔の血を持っ手いるかどうかな。俺と同じように・・・。」
「えっ?じゃああの女の人が皇女様?」
 レイリィは青年に抱っこしてもらい、一緒に窓を覗く。
「あ、そういえばお兄ちゃんの名前聞いてない。私、レィリィっていうの。よろしく。」
「ダース・ルッセ。」
「うー・・・愛想無いなぁ。」
「どなたです?」
 外でのバタバタを耳にし、リンネが扉の方へ目を向ける。
「あ、皇女様、元気?・・・ってこれじゃ元気も無くなっちゃうよね・・・。」
 結界だらけの部屋を見て、レィリィは悲しそうにつぶやく。
「だが、その槍。確か神の武具のはず。それがあればこんな結界などひとたまりもないだろ?なぜ逃げない?」
 ダースの疑問を、リンネは笑顔で答える。
「私は待っているのです。いつか誰かがここに助けにくることを・・・。じゃないと、決して奴には勝てない・・・。」
 不思議がる二人を残して、リンネはまた部屋の隅へと戻っていった。


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