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ガールズ・ファイターシリーズ



南洋からの使者

(前編)

作:逃げ馬




南西諸島近海 日本海軍・潜水艦「はやしお」CIC


「停止!」
艦長 早瀬道隆少佐が命じると、間髪を入れず、
「停止!!」
航海長が復唱し、航海士が素早く操作していく。
「停止しました!」
計器に視線を走らせた操舵士が報告する。

「ソナー、目標は?」

早瀬がソナー室に尋ねると、

「ソナーより艦長、方位0-9-0、大型艦1、小型艦7!」

「了解!」

早瀬が答えてマイクを置いた。
そうか、おそらく輪形陣を組んでいるな・・・・・早瀬は海面の様子を想像した。
やれやれ、対潜水艦戦についてはおそらく、艦隊の中では一番鼻の利く相手に対して戦わなければならない。
早瀬の顔に苦笑が浮かぶ。

「このまま、目標が接近するのを待つ!」

早瀬が命じると、「はやしお」の艦内は静寂に包まれた。



南西諸島近海 日本海軍・第11護衛艦隊旗艦・DDH「かつらぎ」CIC


「ソナーより艦長、目標の音響をロスト!」

「了解!」

第11護衛艦隊司令官“代理”・「かつらぎ」艦長 吉岡貴弘大佐は、ソナーからの報告に答え、マイクをホルダーに戻した。
この先の海中には、『オオカミが息をひそめながら待ち構えている』
さて、どうするか・・・・・黙考している吉岡の耳に、
「『オーシャン』より通信、対潜ヘリを発艦させるとのことです!」


サザンランド海軍・空母『オーシャン』


護衛艦『かつらぎ』から5000メートル後方では、合同演習に参加をしているサザンランド海軍の空母『オーシャン』が今まさに対潜ヘリコプターを発艦させようとしていた。
2機のヘリコプターのエンジン音が高まり、ふわりと浮かび上がると若干機首を下に向けながら飛び上がっていく。
その前方では、『かつらぎ』の後部甲板からSH-60が1機、発艦した。

『オーシャン』のブリッジでは、艦長 ジョン・ブラウン大佐が、前方に展開していく3機のヘリコプターを見つめていた。

視線を左右に移す。

『オーシャン』の左を航行するサザンランド海軍 フリゲート艦『コーラル』と、右を航行するフリゲート艦『ブリザード』からも対潜ヘリコプターが発艦し、左右の海中の捜索を始めた。


日本海軍・潜水艦「はやしお」CIC

「ソナーより艦長、空母と護衛艦艇からヘリが離艦。 こちらを捜索中!」

「了解、ソナー!」

答えた早瀬の額には、うっすらと汗が浮かんでいる。
鼻の利く“猟犬たち”を相手に、“大物”‥‥・空母を仕留めることができるのか?
今は、音を立てずにじっとしていることしかできない・・・・・。



サザンランド海軍・空母『オーシャン』

この艦のブリッジの一角、飛行甲板を見渡せるウイングでは、この場には不釣り合いなグレーのスーツに身を固めた中年の日本人の男が、その様子を見つめていた。

城南大学講師、そして、しなの総研主席研究員でもある井出俊博は、サザンランドから日本への帰国に際して、この艦に“便乗”したのだった。

今、彼が乗艦している『オーシャン』は、すでに艦齢が50年を超えた6万トン・・・・・かつてこの海を日本本土から沖縄を目指した大型戦艦とほぼ同じ大きさの航空母艦だ。
そして、左右を守るフリゲート艦は、アメリカ海軍のノックス型とOHペリー型の“お下がり”・・・・・一線級の海軍には大きく見劣りするものだが、サザンランド王国にとっては、虎の子の“新鋭艦”だ。

『それにしても・・・・・』

井出は思う。
どうしてこの国は、“自分を慕う者”には、これほど冷たいのだろうか?
“親日国”として、誰もが知っているサザンランド海軍との合同演習に日本海軍が参加をさせたのは、1970年代に建造された二線級の旧式艦ばかりだ。

これが日本の外交、そして国防の方針なのか・・・・・井出は、大きなため息をついた。



今、彼・・・・・井出の視線の先の海上では、この演習での「日本艦隊」の旗艦『かつらぎ』が、海中に潜む”敵の潜水艦”の音に聞き耳を立てている。
そして、彼自身が乗っている『オーシャン』の周りを、『きさらぎ』、『ふみつき』、『さつき』、『ながつき』の4隻の小ぶりな護衛艦が、先頭を航行する『かつらぎ』、そしてサザンランド海軍の『コーラル』、『ブリザード』と共に周囲を固めている。
日本側の5隻の護衛艦は、半年前に発生した「東シナ海事件」で被弾をしてドック入りしていたが、2週間ほど前にドックから出渠して沖縄に回航されたばかり・・・・・つまり、その最初の演習の相手がサザンランド王国海軍というわけなのだ。

サザンランド王国、太平洋の”ど真ん中”、マリアナ諸島南方にあるサンゴ礁に囲まれた島々で構成された国家だ。
大航海時代に、荒天にあって流れ着いたヨーロッパ人「コスワース家」が、いつしか”国王”に祭り上げられた”王国”。
20世紀には世界を巻き込んだ大戦争で日本が南洋に進出をして、海軍の艦隊泊地として利用をした。
意見は分かれるところではあるのだが、その時期日本政府は、サザンランド王国の自治を奪わなかった。
むしろ、王家が存続することでの”現地の安定”を望んだ。
当時の日本政府は、サザンランド王国の環礁を海軍の泊地として利用し、島の一角を海軍航空隊の基地とすることと引き換えに、学校や病院を建設し、教師や医師を派遣した。
当時としては稀だったのかもしれないが、日本人と現地のサザンランド人との交流は、友好的だった。
だが、その友好的な交流も長くは続かず、太平洋戦争後半、日本海軍・サザンランド基地は、アメリカ軍機動部隊による大空襲で、航空隊、在泊艦艇ともに壊滅してしまった。

第2次大戦後、サザンランドでは石油の大規模油田や天然ガスが発見され、一大資源大国となった。
多くの大国が資源を狙い、言葉巧みにサザンランド王国へ接近しようとしている。
だが、第2次大戦での教訓が、この南洋の大国の”情報感度”を大幅に上げ、南洋の王国が世界の大国を、ある意味では”手玉にとって”いた。

第2次世界大戦から74年余り・・・・・21世紀の今も、サザンランド王家・国民は、日本に対する友好的な姿勢は変わらないのだ。

だが、日本政府はどうなのか・・・・・?



「先生?」
井出が振り返ると、フライトスーツに身を固めたブロンドの髪の青年が、微笑みながら彼を見つめていた。
彼の姿を見た瞬間、井出の脳裏に5日前のサザンランド王国での出来事が甦ってきた。



5日前・サザンランド王国首都・コナシティー 国立大学 スプリング・ユニバーシティー

ブリーフケースを手にしたスーツ姿の井出が、キャンパスを校門に向かって歩いていく。
アジア系の、ヨーロッパ系の、ラテン系の若い男女たちが、井出の姿を見ると皆、一礼をしてすれ違う。
南洋の光が降り注ぐキャンパスを出ると、井出は手を挙げてタクシーを止めた。
タクシーに乗り込むと、アジア系の初老の男性運転手に目的地を告げた。

「わかりました!」

運転手が後部座席を振り返り、流暢な日本語で答えた。
その顔には微笑みが浮かび、年を重ねて深くなった目尻の皺が、一層深くなる。
運転手が前に向き直り、古い日本車のタクシーを発進させた。
井出は後部座席で、車窓を流れる街の景色を眺めていた。

サザンランド王国は主に、巨大なサンゴ礁に囲まれた中にある「スプリングアイランド」、「サマーアイランド」、「オータムアイランド」、「ウインターアイランド」、そして王国の中で一番大きな「フィッシュアイランド」の5つの島で構成されている。
今、井出がいる首都・コナシティーは、スプリングアイランドにある王宮や国会、外国の大使館。そしてこの王国の主要企業の本社や、外資企業が拠点を置く文字通り、この王国の中枢都市だ。
中東の産油国や、鉱物資源が豊富なオーストラリアに匹敵する資源大国、サザンランド王国の首都。
だが井出の目に映るその首都の町並みは、せいぜい日本の地方都市の県庁所在地の街並みといったとこだ。



タクシーは、年代物のVWやオペル、フィアットやトヨタ・日産といったこの王国からすれば「外国車」と行き交いながら目的地、「スピリングホテル」の車寄せに到着した。
井出はタクシーの料金を少し多めに(チップもプラスして)支払うと、車を降りてホテルのロビーに入っていった。
ホテルのスタッフたちが、井出に向かって一礼した。
女性スタッフが井出にメモを手渡した。

「ありがとう」

井出は女性に礼を言うと、エレベーターに向かって歩いていく。

ロビーのソファーには、角張った顔つきのアジア系の男が新聞を持ちながら、ロビーを歩く井出に視線を向けていた。
男は新聞を畳むと、ゆっくりと立ち上がりエレベーターに向かって歩いて行った。

エレベーターは、11階建てのホテルの10階。レストランフロアーで止まった。
ブリーフケースを手にした井出がエレベーターを降りると、その後ろからアジア系の男が降りてきた。
井出は気にする素振りもなく、フロアーの一角にある和食レストラン「ゆうだち」に入って行った。

「いらっしゃいませ!」

和服姿のヨーロッパ系の女性が、井出の右手からブリーフケースを受け取ると、

「お連れ様が、お待ちです」

ブリーフケースを手に先に立って、井出を奥の座敷に案内していく。
その後ろから、井出も奥に向かって歩いていく。

その様子を見ながら、四角い顔の男は、露骨に舌打ちをした。

「いらっしゃいませ!」

和服を着た釣り目の顔立ちのアジア系の女性が、四角い顔の男に声をかけた。
二人は複雑な顔つきで、目交ぜを交わす。
四角い顔つきの男は、女性に100ドル札を3枚手渡し、彼女に微笑みかけた。



井出の前を行く女性が、腰を落として襖に手をかけた。

「お連れ様が、お着きになりました」

「どうぞ」

部屋の中から男の声がすると、女性が静かに襖を開けた。
襖の向こうの和室・・・・・畳の上には、小太りの体に丸顔の男。
その男が眼鏡に手をやりながら、

「よお・・・・・さあ、入った入った!」

エビスビールの瓶を手にしながら、ニヤッと笑った。
しなの総研主席研究員、そして六甲大学経済学部“特任講師”の森沢正輝(もりさわ まさてる)が、彼を待っていた。
井出は部屋に入りながら、

「森沢さんから連絡があったときには、本当に驚きましたよ・・・・・」

こちらに来ておられたとは・・・・・井出は、呆れたように森沢を見つめながら、森沢の向かいに腰を下ろして、置かれていたおしぼりで手を拭いた。

森沢は、井出と同じ長野県に拠点を持つシンクタンク『しなの総合研究所』の主席研究員だ。
国際政治学を専門とする井出と、経済学を専門とする森沢は、いわば『畑違いの二人』だが、気になることがあればお互いの部屋を訪れディスカッションを行う。 井出にとっては森沢は、年齢が2歳年上の「気難しい男」だか、妙に馬の合う男なのだ。

「いつも、このホテルに泊まっているのですか?」

井出が手にしたコップに、ビールを注いでくれる『先輩』に尋ねると、

「ああ・・・・・そうだ」

森沢がにやりと笑った。



部屋の外では、少し釣り目気味の女性が、部屋の中の様子に聞き耳を立てていた。
後ろから迫る”影”には気を留めずに・・・・・。



「このホテルは、“掃除”が行き届いているからね・・・・・」

「掃除・・・・・?」

井出が、怪訝な表情で森沢に問い返したその時、部屋の入り口、襖の向こうで物音がした。
井出が森沢に視線を向けたが、森沢は素知らぬ顔で、ビールを飲んでいる。
井出は席を立ち、襖を開けた。

誰もいないし、何かが壊れたり、物が落ちているわけでもない。

「掃除が済んだようだな・・・・・」

井出の背中の向こう側から、森沢ののんびりとした声が聞こえた。



井出が襖を閉めて、森沢の前に座り直した。
井出の視線の先では、森沢が焼き魚の身をほぐして口に運び、日本酒を旨そうに飲んでいる。

「君も飲んだらどうだ? 久保田の萬寿だ・・・・・旨いぞ」

「はい・・・・・」

答えたものの、井出は酒には手を伸ばさない。
森沢の口元に、笑みが浮かんだ。
視線を、向けもせずに、

「さっきの物音のことか?」

森沢の問いに、井出は無言で頷いた。

「このスプリングホテルは、サザンランドでは一番古く、格式のあるホテルだ。 外国の要人も宿泊するし、首脳会談も行われる」

森沢は一旦言葉を切って、井出の様子を見た。
井出は無言で先を促している。

「要人が宿泊し、外国との交渉が行われると言うことは、セキュリティー・・・・・とりわけ、情報管理が成されていることが必要だ・・・・・」

残念ながら、わが国は笊だけどね・・・・・と、森沢は笑った。
森沢が日本酒を口に運ぶ。
井出は、黙って森沢の話に聞き入っている。

「この国は、情報の重要性を知っている。 だから場合によっては・・・・・」

「命を奪うと言うのですか?!」

森沢は静かに頷いた。

「ロビーには、情報分野の人間らしい外国人がいた」

君は気がついたかい?・・・・・森沢に言われて、井出は何も言えない。全く気がつかなかった。

「しかし、僕はただの貧乏学者ですよ? そんな人間に・・・・・?」

「君がただの貧乏学者なのか、そうでないのかを決めるのは、君ではないんだ・・・・・君が持っている情報の価値を、彼らが決めるんだ」

君が望まなかったとしてもね・・・・・。
森沢が微かに笑った。

「それに、今日は・・・・・」

森沢が言おうとしたそのとき、襖の向こう側で、人の気配がした。
二人が黙ると、

「お連れ様が、お着きになりました」

誰が来たのだ? 井出が訝しげに森沢を見た。
森沢は、微笑みを浮かべたまま頷いた。

「どうぞ・・・・・お入りください」



襖が静かに開いた。
その向こう側では、日系人らしい和服姿の女性・・・・・仲居が、襖を開けていた。
そして靴を脱ぎ部屋に入ってきたのは、ブロンドの髪、碧眼の瞳の青年。その男が濃紺のスーツに身を固め部屋に入ると正座をして二人を見た。

「・・・・・まさか・・・・・?」

井出は、一瞬緊張した。
青年が森沢に軽く頭を下げた。
森沢も会釈をすると、

「井出君、こちらはピーター・ステーシーさん、サザンランド軍の軍人だ」

「ステーシーさん・・・・・こちらは井出俊博“博士゛です。 私と同じしなの総研で国際政治学を研究されています。 外交や国防分野のエキスパートです」
国立のスプリング・ユニバーシティーで教鞭も取っておられますから、ご存知かもしれませんが・・・・・。

森沢が紹介をすると、ステーシーが井出に向き直った。

「初めまして、ピーター・ステーシーと申します・・・・・」

流暢な日本語で挨拶をし、すっと自然に頭を下げる・・・・・その洗練された自然な動きが、彼の持つ教養を井出に感じさせていた。

「初めまして、井出俊博と申します・・・・・」

よろしく・・・・・と、井出が頭を下げる。
挨拶が終わると、森沢が仲居を呼んで、ステーシーのための席を用意させた。
用意が終わり仲居が部屋を出ると、森沢が井出とステーシーの盃に酒を注いだ。

「では、今日の出会いに・・・・・」

盃を掲げて、森沢が言うと、二人も杯を掲げてにっこり笑った。
二人が杯を干すのを確認して、森沢が井出に向き直ると
徐に口を開いた。

「今日、この席を用意したのは、ステーシーさんが君の意見を聞きたいと仰ったからなんだ」

「僕にですか?」

井出が怪訝な表情を森沢とステーシーに向けると、ステーシーが、

「森沢博士にお願いをして今日、井出博士にご意見を伺いたいのは、我が国に流れ込んで来ようとしている外国資本の問題についてです」

ステーシーによると、ここ数年でサザンランド王国では外国資本による開発が進んでいるらしい。
その中でも、今や世界第2位のGDPを誇る”パンドラ”が、インフラ開発を進めようとしているのだ。
それに歩調を合わせるかのように、かつては日本も共に戦った紛争の傷から立ち直ろうとしている半島国家が”パンドラ”とともに、『合同での開発』を推し進めようとしているのだ。

「パンドラは、インフラだけではなく軍事装備もわが国に買わせようとしています・・・・・私は、この状況に懸念を抱いています」

ステーシーは、パンドラはサザンランドに低い利率での国土開発や武器購入の資金補助を提案していると説明した。

「井出博士は、どのようにお考えですか?」
井出は、しばらく黙考すると、

「パンドラは今、アメリカと対抗するために世界各国にインフラ整備を提案して資金を貸し付け、返済ができなくなると港湾の権益や、場合によっては島の権益を得て、半ば自国の領土としています」

井出は、置かれていた湯飲みからお茶を飲み、しばらく湯飲みの中のお茶を見つめて考えをまとめた。

「・・・・・パンドラのインフラ開発は、その対象国の国民を雇わず、パンドラ人が”すべてを仕切る”・・・・・インフラを開発してもらった国に残るのは、そのインフラと借金であり、”技術力”は残りません。 それではインフラが老朽化したときに、その国はどのように対応するのか・・・・・少し不安ですね」

「・・・・・軍事装備についてはどうですか?」

ステーシーが、井出の目を覗き込むように尋ねた。
森沢は微笑みを浮かべながら、その様子を見守っている。
井出は、小首を傾けて黙考した。

「・・・・・サザンランドは、太平洋の十字路であり、良港もあります。 パンドラとしてはインフラや武器をたっぷり売って、その担保に資源や港の権益が欲しいのではないでしょうか?」

もしかすると島を一つ租借地としてよこせくらいは言い出すかもしれませんね・・・・・井出が呟くように言うと、

「日本は、我が国の開発を支援してはくれないのでしょうか?」

ステーシーは、ここが知りたいところだという力強い視線を井出に向けた。

「日本はパンドラの顔色を伺う部分があります。 かつて大災害で多くの被災者が出た時でも、パンドラからの救助隊が入るまで海外の救助隊を受け入れなかったほどです」

井出は苦笑し、森沢はフンと鼻を鳴らした。

「今のままでは、パンドラの顔色をうかがいながら、そのおこぼれ・・・・・小さな開発支援といったところになるのではないでしょうか?」

そうですね・・・・・井出は腕組みをしながら、

「何らかの形で、日本を引き込むきっかけを作るのが良いでしょう」

「わかりました・・・・・」

ステーシーは一礼をすると、

「明日、サザンランド王宮にお越し願いますか? 国王に説明をお願いします」

「私がですか?!」
井出は思わず、ステーシーに向かって目を剥いた。

「スプリング・ユニバーシティーの外国人講師なんだ・・・・・国王に謁見しても不思議ではないだろう?」

森沢が笑った。
この人、全てのシナリオを描いたな・・・・・井出は思わず苦笑した。

「それでは明朝、迎えをよこしますので・・・・・」

失礼いたします・・・・・ステーシーは丁寧に挨拶をすると、部屋を出ていった。
部屋の襖が静かに閉まった。
井出は我慢しきれず、

「森沢さん、あのステーシーという人は・・・・・」

「彼はピーター・ステーシー・・・・・」

今はそれで良いだろう・・・・・森沢はそう言って杯を干して、席を立った。



翌日 サザンランド王国 首都 スプリングホテル



身支度を終えた井出がエレベーターに乗り、ホテルの一階ロビーに降りてきた。
ロビーを見渡すと、彼に向かって手を挙げている森沢を見つけた。
井出は、ソファーに座る森沢の向かいに腰を下ろして、コーヒーを注文した。
すぐに少し肌の色が浅黒い東南アジア系のボーイが、コーヒーを持ってきてくれた。
「ありがとう」と声をかけて、コーヒーを受け取り、早速一口飲んでんた。
なるほど、さすがは一流ホテルだ・・・・・少し得をした気分だったが、森沢の声で現実に引き戻されることになった。

「君に、迎えが来たようだぞ」

井出が振り向くと、こちらを見つけたのだろう・・・・・スーツ姿の日に焼けた青年が、こちらに向かって歩いてくる。
昨夜、彼と話をした“ピーター・ステーシー”ではないようだ。
彼は二人の傍らに立つと、

「初めまして、サザンランド空軍中尉、タン・ファムです。 お二人を御迎えに上がりました」

「おいおい、僕もかい?」

森沢が言うと、

「はい、お二人をお連れするように、上官から命じられています」

森沢の傍らに置かれた、大きなスーツケースを見て、ファム中尉が微かに笑った。
森沢が帰国しようとすることを見越して、彼・・・・・ステーシーが命じたかもしれないな・・・・・井出は思った。

「仕方がないな・・・・・」

さすが情報の国だ・・・・・逃げ遅れたよ。 森沢が苦笑しながら立ち上がった。
ファム中尉が、森沢のスーツケースを引っ張りながら先に立つ。
二人はホテルのエントランスに止めてあったオペル・アストラの後部座席に乗り込んだ。
ファム中尉は森沢のスーツケースをトランクに積み込むと、運転席に座り、車を発進させた。
ファム中尉は、バイクや車、自転車が行き交う通りをスムーズに車を走らせている。
車はコナシティーの繁華街から官庁街に入ってきた。
いつしか、車窓を見つめていた森沢の視線が、真剣になっていた。

「ファム中尉?」

後部座席から森沢が呼び掛けた。

「はい?」

ファム中尉がバックミラー越しに森沢に視線を向けた。

「すまないが、“コナ・セントラルパーク”に寄ってもらえるかな?」

彼に見せてやりたいんだ・・・・・森沢が、井出を指さしながら言うと、

「あまり長い時間は取れませんが・・・・・?」

謁見の時間は決まっておりますので・・・・・ファム中尉が、少し困った顔をしていたが、

「ああ、いいよ」

よろしくお願いします・・・・そういうと、森沢は再び車窓の景色に視線を戻した。



ファム中尉は運転するオペル・アストラを、コナ・セントラルパークの駐車場に停めた。
三人が車を降りると、森沢が井出を促して歩き始めた。

「ここで、君に見せておきたいものがあるんだ・・・・・」

三人がきれいに整備された公園を歩いていく。
公園では、カップルや家族連れが、楽しい時間を過ごしている。
5分ほど歩いただろうか?

「君に見せたい場所は、ここだ」

そういうと、森沢は噴水のある広場で足を止めた。
井出は、傍らに立つファム中尉の顔が強張っているのに気が付いた。
三人の視線の先には、高さ5メートルほどの銅像が立っていた。

「サザンランド王国、初代国王のジャック・コスワース国王の像だ」

森沢が言った。
慈しむような眼で、三人を見下ろす初代国王の銅像、しかし、井出は大きな”違和感”を感じていた。
やがて、その違和感の原因に気が付いた。
国民を見守る国王像の周り・・・・・20メートル四方が、真っ赤に塗装された頑丈な柵で囲まれていたのだ。
美しい公園と、国民を慈しむ国王の像とは全くそぐわない、巨大な真っ赤な柵。
まるで国王と国民を引き裂こうとする強い意志すら感じられる柵・・・・・。

「何ですか・・・・・これは?」

井出が問いかけたのだが、

「時間がない、行こう・・・・・」

森沢が厳しい表情のまま、銅像に背を向け歩き始めた。
駐車場に着くと、三人は黙り込んだまま車に乗り込んだ。
ファム中尉が車を発進させて、三人は王宮に向かった。

「あれはいったい、なんなんですか?!」

井出は、さっき見た光景が忘れられず、森沢に詰問口調で尋ねた。

「あの公園は、パンドラの経済援助の象徴として、リニューアル工事が行われた・・・・」

森沢は、井出に視線を向けずに、話し続けた。

「あの銅像は、初代国王が崩御した後、国民がお金を持ち寄り作り上げたものだ。 それが今、あのような形になっている・・・・・」

井出がバックミラーに視線を向けた。
ハンドルを握るファム中尉は、唇をかみしめていた。

「・・・・・僕は、国王陛下に謁見する前に、今のサザンランドが置かれた状態を、君に見せておきたかったんだ・・・・・」

三人の乗るオペルのフロントガラスの向こう側に、サザンランド王宮が見えてきた。



ファム中尉は、王宮正門に立つ衛兵に身分証明証を見せて、耳元で何かを囁いた。
衛兵は、車を進めるように指示を出すと、後部座席に座る二人に敬礼をした。
ファム中尉は車を発進させると、美しく整備された庭を貫く道を300メートルほど走り、ヨーロッパ風のデザインの、立派な王宮のエントランスに車を着けた。
素早く二人の衛兵が駆け寄り、後部座席のドアを開けた。
もう一人の若い衛兵は、トランクから森沢のスーツケースを出している。
森沢がスーツケースを受け取ろうとすると、

「お戻りになるときに、空港までお運びします」

ご心配なく・・・・・笑顔で言われて森沢は、

「やれやれ、逃がさないつもりだな・・・・・」

井出と顔を見合わせて苦笑した。
エントランスに立つ二人に、恰幅の良い日系人男性が歩み寄ってきた。
男性を認めた森沢が軽く会釈し、傍らに立つ井出に、

「井出君、こちらはサザンランド王国の内務大臣、ヤスオ・アンダーソンさんだ」

初めましてと手を差し出す井出に、

「井出博士、ようこそお越しくださいました・・・・・」

アンダーソンは微笑みながら、

「国王陛下が、お待ちかねです」

どうぞこちらへ・・・・・と、二人を先導するように歩き始めた。
二人の左右には、さりげなく衛兵がついた。

5人が厚い絨毯が敷かれた王宮の廊下を歩いて行く。
歩いているうちに森沢は、あることに気がついた。

「大臣、井出君の国王陛下への謁見は、『謁見の間』で行われるのですか?」

大臣が足を止めて振り返ると、

「いいえ、陛下は御二人とゆっくり話したいと仰られておりますので、今日は執務室で御二人とお会いになります・・・・・」

そう言うと、大臣は再び歩き始めた。
井出が森沢の顔を見た。
森沢が目配せして、再び二人が、そして二人を見守っていた衛兵たちが歩き始めた。
謁見の間ではなく執務室を選んだ。 ”個人的な意見”をじっくりと聞きたいのだろう・・・・・これは責任重大だな・・・・・森沢は思った。
前を歩いていた内務大臣の足が止まる。
彼の前には、立派な黒光りする木製の扉があった。

「こちらになります・・・・・」

内務大臣が、扉を軽くノックする。

「お着きになりました」

「どうぞ」

扉の向こう側からの声を聴いて、内務大臣はゆっくりと扉を開いた。



扉が開き、内務大臣が森沢と井出に部屋に入るように促した。
その部屋には、大きな窓から南国の陽光が差し込んでいた。
そして、大きな机の前に座る白髪の老人が、見ていた書類から視線を上げて二人を見た。

「やあ・・・・・ようこそお越し下さいました」

そう声をかけて椅子から腰を上げたのは、サザンランド王国現国王、ロジャー・コスワースだった。

「今日は、いろいろとお話を聞けるのを楽しみにしていました」

そう言いながら二人に握手を求めてきた国王は、ポロシャツとスラックスといったラフなスタイルだ。
それが逆に80歳を越えた国王を、若々しく感じさせていた。

「お招きいただき、光栄です」

国王と井出が握手を交わす。

「お掛けください」

国王がソファーに座るように促した。
国王が、そして井出がソファーに腰を降ろした。
森沢は扉の前でその様子を見ていた。
視線を感じて隣を見ると、内務大臣が森沢を見て・・・・・そして微笑みを浮かべながら、森沢にソファーに座るように促した。
森沢は小さくため息をつくと、井出と並んでソファーに座った。

こうしてサザンランド王国国王と日本の学者二人の会談が始まった。



会談は、国王の質問で始まった。
質問内容は、昨晩にステーシーが井出に対して行った質問に、国王と内務大臣が、細かい部分について質問をして、可能性を探るというスタイルだった。
森沢は、この会談場所に王妃がいない理由が解った気がしていた。
サザンランド王国の今後の外交・防衛問題の選択肢を考える会談。
確かに王妃がいる場所ではないな・・・・・。
いつしか話題は、サザンランド王国軍の軍備に移っていた。

「わが国を守る軍の装備は、日本に比べると40年は遅れています」

国王の口調は、真剣そのものだ。

「わが国も日本同様に周囲を海に囲まれ、国民生活に必要な物資を輸入し、そのための外貨は船で資源を輸出することで得ています・・・・・」

海上交通路を守るための軍の装備の近代化が必要です・・・・・国王が力説した。

「それほど遅れているのですか?」

井出が小首をかしげた・・・・・彼がスプリング・ユニバーシティーで教えているのは、国際政治・・・・・政治に絡んでくるため国防に関する知見はあったがサザンランドの軍の装備までは、把握をしていなかった。

「海軍の艦艇は、就役後50年を超えたものが多くありますし、新鋭のフリゲート艦は、アメリカ海軍を退役したものを購入して使用しています」

内務大臣が説明した。
ふと、何かを思いついたようだ・・・・・彼は国王に向き直ると、

「国王陛下・・・・・博士たちに、空軍基地をご覧いただいては、いかがでしょうか?」

「博士たちに空軍基地を?」

何のために・・・・? 首をかしげながら自分見つめる国王に、

「はい、博士たちにわが国の国防の現状を、実際に見ていただいた方が、有意義な助言がいただけるのでは・・・・・と・・・・・?」

「ふむ・・・・・?」

国王はしばらく考えていたが、傍らに置かれた電話に手を伸ばすと、受話器を取り、ボタンを押して二言三言話しをして受話器を置いた。
しばらくすると、ドアをノックする音がして、ドアが開き、軍服を着た男が入ってきた。
直立不動で敬礼をする男性を見た井出は、素早く男の階級章をチェックした。
腰に短剣を付けた軍人、襟の徽章は中佐だ。

「近衛武官の空軍中佐、トンタット・タンであります。国王陛下の命で、御二方をコーラルフィールド空軍基地へご案内いたします!」

井出と森沢が戸惑っていると内務大臣が、

「どうぞ、我が国の国防の実情をご覧ください」

それを聞いていた国王も頷いた。
井出と森沢が顔を見合わせた。
乗りかけた船だ・・・・・そういった思いで森沢が目配せをし、井出も頷いて立ち上がった。

「それでは・・・・・」

井出が立ち上がって一礼をし、森沢もソファーから腰を上げた。
二人がトンタット中佐とともに国王の執務室を出て、宮殿の入り口に停められていたオペル・アストラに向かって歩いていく。
待っていたファム中尉が後部座席のドアを開けた。
その姿を目ざとく見つけた森沢が、

「中尉! 私のスーツケースを返してくれないか?!」

ファム中尉は、悪戯っぽい眼差しを森沢に向けた。

「わかりました、戻りましたら上官と相談いたします」

「やれやれ・・・・・」

いつになったら解放されるのかな・・・・・森沢は笑いながら後部座席に乗り込んだ。
井出が、そのあとに続く。
トンタット中佐が助手席に乗り、ファム中尉が運転席に乗り込んで、車を発進させた。

「これからお二人をご案内するコーラルフィールド空軍基地は、私たち空軍と海軍が共同で使用しているサザンランド王国最大の航空基地です・・・・・」

トンタット中佐が、ミラー越しに後部座席の二人を見ながら説明を始めた。

「海軍が、対潜哨戒機P3Cが10機と航空母艦『オーシャン』に搭載する艦載機30機と対潜ヘリコプターを・・・・・そして空軍が近衛部隊を兼ねる第1飛行中隊と、第2飛行中隊の40機と、”予備兵力”の合計45機の戦闘機を駐留させています・・・・・これに輸送機C130とヘリコプターCH47とUH-1が若干数といったところです」

「なるほど・・・・・」

井出が素早くメモを取った。

「戦闘機の機種は?」

「それは、実際に見ていただいた方が良いかと思います・・・・・」

それが、国王陛下の御意思なので・・・・・トンタット中佐が、あいまいに笑った。



白い砂浜で寛ぐ観光客を横目に見ながら、車はエメラルドグリーンの海沿いの道路を走っていく。
突然、彼らが乗る車の上・・・・・空から轟音が聞こえてきた。
次の瞬間、車内に爆音が響くと同時に、四機の小型ジェット機が彼らの上空を通過して急上昇していった。

「中佐、またですよ・・・・・」

ファム中尉が呟くように言うと、

「全く・・・・・あの連中は・・・・・」

トンタット中佐が、呆れたように飛び去って行く飛行機を見つめていた。

車はコーラルフィールド基地の正門に到着した。
警備兵が彼らの乗った車を停めて、ファム中尉が差し出した許可証と、後部座席に座る二人のスーツ姿の日本人を珍しそうに見比べると、

「どうぞ」

その顔に微笑みを浮かべ、彼らに基地構内へ進むように身振りで示した。
ファム中尉が車をゆっくりと発進させた。
車のフロントガラスの向こう側には滑走路が・・・・そして左右に格納庫が並んでいる。

「左手が海軍の区画、右側が空軍の区画になります」

トンタット中佐が井出と森沢に説明をしていると、ファム中尉はハンドルを右に切り、オペル・アストラを格納庫の一つに入れて車を止めた。

車を降りた4人に、格納庫にいた整備員やパイロットたちが、さっと敬礼をした。
ファム中尉とトンタット中佐は敬礼を返し、井出と森沢は目礼をした。
二人の目の前には、灰色一色にペイントされた整備中の戦闘機がある。

「この機体は、第1飛行中隊所属のF-5EタイガーU・・・・・サザンランド王国空軍の主力戦闘機です」

トンタット中佐の説明を聞いた井出が、複雑な表情を浮かべた。

「サザンランド空軍の主任務は、防空ですか?」

井出がトンタット中佐に尋ねると、

「はい、わが国は日本と同様に海洋国です。 ですから空軍は防空任務を、海軍は海を侵攻してくる敵を攻撃する任務を担っています」

「海軍が対潜水艦戦でP-3Cを運用しているとおっしゃっていましたが、戦闘機は・・・・・?」

トンタット中佐が格納庫の入り口に視線を向けた。 その向こうには滑走路が見える。

「あれです」

井出と森沢がトンタット中佐が指さす方向に視線を向けた。
滑走路を離陸していく海軍の戦闘機・・・・・F-4ファントムが空に舞い上がっていく。
井出は小さなため息をついた。
南洋の資源大国サザンランド王国・・・・・その国を守る軍の装備は、東西冷戦の時期で止まっているのだ。

「しかし・・・・・・?」

森沢が徐に口を開いた。

「サザンランド王国は、太平洋のほぼ真ん中にある。 周囲は広い海だ。 他国から侵略されるとは思えない。 故に軍事装備も最低限で良いのではないですか?」

今のサザンランド王国は平和ですし・・・・・森沢が言うとトンタット中佐とファム中尉はお互いに顔を見合わせて困惑した表情を浮かべ、それを見た井出は、吹き出しそうになるのを懸命に堪える事となった。
森沢さんは、あえて反対意見の立ち位置で発言をした。ここでの自分の役割は議論を深めることだ。
すぐにこういった対応ができるのが森沢さんのすごいところだ・・・・・井出は森沢の横顔を見ながら思った。
だが、その反対の立ち位置の意見は・・・・・それは、話を深めるためにしているのだが・・・・・彼をの存在を快く思わない者によって、それを揚げ足取りに利用されて、日本国内では自分の意見を発表できない立場にまで追いやられてしまったのだが・・・・・。
井出は微笑みを浮かべながら森沢に、

「森沢博士の意見も一つの考え方だと思いますが、今のサザンランドは外国の資本が流入しつつあり、援助を得てインフラを開発した結果、その国の『意志』を色濃く見せるものが見受けられます。 それが後々、サザンランド王国の危機に繋がらないとは言い切れないと思います」

そのためにも、兵器の更新は必要なのでは・・・・・そう問いかける井出の目を森沢はしばらく見つめていた。
やがて、顔に笑みを浮かべ、眼鏡に手をやりながら、

「まあ、そうかもしれないな」

森沢の言葉を聞いて、トンタット中佐とファム中尉がほっと安堵の吐息を漏らした。



井出は格納庫で整備を受けているF-5Eに視線を戻した。
この機体も世界各国で配備をされたのは1970年代。
いろいろと改修を受けているとはいえ、現在の一線級の機体と戦うには荷が重い。

「先生には、わが国の軍備はどのように見えますか?」

井出が振り返るとそこには、スーツ姿のピーター・ステーシーが立っていた。
井出と森沢が目礼をした。
ステーシーも微笑みながら目礼を返した。
井出は、格納庫にいる軍人たちが、さっきまでとは違い緊張をしていることに気が付いた。

やはり、彼は・・・・・?

その疑問を隠しながら、井出は答えた。

「空軍のF-5や、海軍のF-4は機体の寿命や装備を考えれば機体の更新は急務でしょう・・・・・しかし・・・・・」

井出は小首をかしげながらステーシーに向き直った。

「サザンランドほどの資源大国ならば、他国から最新の機体や艦船の売り込みがあると思うのですが?」

「売り込みはあります」

ステーシーが頷きながら、

「おそらくは提案をしてくる機体は自国の同機種のダウングレード版で、購入にあたって対価として資源の権益なども要求していますが・・・・・」

その時、格納庫の上から爆音が聞こえてきた。
4機の小型機が格納庫の上から滑走路上空を超低空でフライパスしていく。
A-4スカイホーク・・・・・アメリカ製のベストセラー攻撃機だが、F-5同様に年代物の機体だ。

「あの機体は、空軍の予備兵力として運用をしています」

ステーシーが言った。

「ヴァーゴ飛行戦隊。 女性パイロットで構成された飛行戦隊です」

戦隊と言っても、4機だけですが・・・・・ステーシーが言い、井出はそれを聞いているトンタット中佐やファム中尉をはじめ、周りの兵士たちが顔をしかめていることに気が付いた。

「やんちゃなお嬢様達ですよ・・・・・」

ファム中尉が森沢に囁き、ステーシーが中尉に視線を向けた。
ステーシーの視線を受けて、ファム中尉は小さくなってしまった。
森沢が苦笑を浮かべた。
井出はその様子を見ながら、ダイヤモンド編隊を組みながら飛び去って行くスカイホークに視線を戻した。

「女性戦闘機パイロットは、日本にもいますが・・・・・」

井出の中で、何かが閃いた。

井出はステーシーとトンタット中佐に、彼のアイディアを伝えた。
二人の質問に答え、さらにアイディアを肉付けをするのには30分もかからなかった。
3人の話し合いが終わると、ステーシーはサザンランド王国国務省に向かい、トンタット中佐は基地からヘリコプターUH-1に乗って国防省に向かった。
井出と森沢は、ファム中尉の運転するオペル・アストラに乗り、王宮にいる国王にアイディアを提案することになった。
トランクに積み込まれたままの森沢のスーツケースは、再び王宮に戻ることになる。




ガールズ・ファイターシリーズ
南洋からの使者(前編)
おわり





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