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梅雨も明けて、真夏の暑い日差しがアスファルトを照らしている。
その日差しの下、一生懸命自転車をこぐ、僕にはその暑さは苦にならなかった。
そう、今日は大学で・・・・。



今日、わたしの家に来ない・・・?
わたしの作った料理を食べてほしいんだけどな・・・?

講義室から出ようとした僕に声を掛けてきたのは、ゼミの男子学生憧れの女性だった。

とまどっている僕の目をその大きな瞳で覗き込むように、

来てくれるわよね・・・・。

彼女が僕の名前を耳元で囁いた瞬間、僕はなぜか断ることができずに・・・・うつろな目で頷いていた。



家に着いた。
僕は家に入ると、さっそくシャワーを浴びた。
そう、汗臭い体で出かけると、彼女に失礼だから。
シャワーが終わると、選択をしたばかりのシャツとジーンズを着て、再び家を出た。



メモに書かれていた、彼女の住むマンションの部屋の前にやってきた。
チャイムを押すとドアが開き、
「いらっしゃい」
人懐っこい微笑みを僕に向けてくれた。
「ど・・・・どうも・・・・」
僕がぎこちなく挨拶をすると、彼女はクスッと笑った。
「さあ、はいって・・・・」
彼女は僕を部屋に招き入れた。



「そこに座ってくつろいでいてね」
すぐに準備をするから・・・・・彼女はそういうと、キッチンに向かった。
僕は、リビングのソファーに座り、カウンター越しにキッチンで料理をする彼女を見つめていた。
長い髪を後ろで束ねて、てきぱきと料理を盛り付けていく。
そして、僕の視線に気がつくと魅力的な微笑みを浮かべた。そして・・・・。
「おまたせ、できたわよ♪」
彼女はサラダやステーキ、パスタなどを綺麗に盛り付けた皿を手にリビングに歩いてきた。
彼女はリビングテーブルに皿を並べていく。
皿に盛られた料理は、どれも僕の食欲をそそった。
「さあ、遠慮なく食べてね」
「うん、いただきます!!」
僕はテーブルに並べてあったフォークを手にすると、まずサラダを一口食べてみた。
「?!」
何だこれは・・・・驚きのあまり言葉が出ない・・・ただのサラダなのに?!
彼女が小首をかしげている。
「・・・不味いの?」
「・・・・い・・・・いや・・・・そういうわけじゃあ・・・・」
僕は曖昧にほほ笑みながら、前菜を口に運んだ。
「・・・・・」
美味しい・・・・いや、その言葉だけでは正確ではないだろう。
どう言えばよいのだろうか・・・・・そう、何かが僕の体の中に染み込んでくるような感じがするのだ。
それが何であるかは、わからないが。
ふと視線を前に戻すと、彼女がテーブルの上に頬杖をつき、微笑みを浮かべながら僕を見つめている。
「美味しい?」
「うん・・・・美味しいよ」
「よかった・・・♪」
ワインを持ってくるわね・・・・彼女は腰を上げるとキッチンに向かって歩いていく。
窓から差し込む夏の日差しが、彼女の白いワンピースをきらきらと輝かせて、まるでスポットライトに照らしだされたアイドルのように、彼女の美しいプロポーションを際立たせていた。
その時、僕は今まで感じたことのない感情を感じていた。
『うらやましい・・・・・』
胸の二つの膨らみ、キュッと引き締まったウエストからヒップに続く曲線。
僕もあんな体に・・・・。
そう思った瞬間、僕は自分の考えに驚き、背筋に冷たいものが走った。

僕は、いったい何を考えているんだ?!

僕は大きく深呼吸をして、自分を落ち着かせようとした。
「どうしたの?」
彼女が悪戯っぽい微笑みを僕に向けている。
彼女はワイングラスをテーブルの上に置き、その中に赤いワインを注ぐと、一つを僕に手渡した。
彼女もグラスを手にすると、
「それでは・・・・・」
グラス越しに、彼女の微笑みを浮かべた眼差しが見える。
「・・・うん・・・・」
僕たちは乾杯をすると、グラスのワインを飲みほした。
彼女はグラスをテーブルに置いた。
そして僕の目をじっと見つめている・・・・僕は、まるで彼女の目に吸い込まれてしまうような“錯覚”を感じていた。
「ねえ・・・」
彼女が僕の目を見ながら小首を傾げる。
「・・・うん・・・・?」
「・・・女の子になってみない・・・・・?」
彼女の突拍子もない言葉を、僕は咄嗟に理解できなかった。
「・・・・なんて・・・・言ったの?」
「女の子になってみない?」
彼女は大きな瞳で、僕の顔を覗き込むようにしながら言った。
次の瞬間、僕はお腹を抱えて笑い出してしまった。
「そんなこと・・・できるわけないじゃん!」
笑いすぎて涙がこぼれ、大きく息をついて、ようやく笑いを抑えると、
「・・・頂くよ・・・」
「どうぞ・・・」
グラスの赤ワインを一口飲むと、再び料理を食べ始めた。
彼女は僕の前に座ると、微笑みながら僕が料理を食べる様子を見ている。

その時、僕は気がつかなかった。

料理を一口食べるたびに、僕の体に・・・。

心に・・・・。

変化が起きていたことを。

サラダを食べると、腕がほっそりとして指が自分のものとは思えないほど細く、しなやかな女性の腕になった。
スープを一口飲むと、髪が細くなり、それが少しずつ伸びて肩にかかるほどになっていた。
ステーキを食べると、ヒップが丸く膨らみ始めてジーンズのお尻の部分が、はち切れそうなほどパンパンに膨らんでいた。
シャツの下では、平らな胸板に脂肪が集まりその下には乳腺ができ始めた。そして胸板が少しずつ柔らかくなり、やがて丸く膨らみ始めた。
その先にある乳首はピンク色に変わり、いつもより倍ほどの大きさになると胸から突き出し、まるで”何かを主張”しているようだ。
パスタを食べると、ウエストがキュッと引き締まり、足が自然に内股になり、太腿から脹脛、足首に続く曲線が美しい脚線美を作り出していた。

だが・・・食べるのに夢中な僕は、自分に起きている変化に気がついていなかった。

僕の様子を見つめている彼女が、微笑みながら言った。
「ねえ・・・」
「うん?」
僕は食事をする手を止めて、彼女に視線を向けた。


「女の子になりたくない?」


彼女の言葉に、
「まだ、そんなことを言っているのか?」
思わず鼻で笑っていると、
「でも、あなたの体は、もう・・・・」
「エッ?!」
彼女は、僕の体を指さしながら言った。
僕はフォークを手にしたまま、思わず立ち上がった。
そして、僕は信じられないものを目にした。
そう、男性の服に包まれた女性の体だ。
「どうして・・・?」
呟いたその声も、まるで女の子のような声だ。
「どうして・・・・?」
彼女がクスッと笑った。
「それは、私が魔法使いだから・・・・」
この料理には、あなたが女の子になるように術をかけてあったの・・・彼女は人差し指で、僕の顎をスッと触った。


「ねえ・・・女の子になってみない・・・・」


わたしの力で・・・・・身も心も・・・・彼女が囁く・・・その言葉が、まるで僕の体に、心に沁みこむように効いている僕の体が熱くなってくる。

「・・・・」

僕は、自分でも知らないうちに頷いていた。
彼女の顔に微笑みが浮かぶ。
彼女の顔が僕に近づいてくる。
僕が目を閉じると、唇に柔らかい何かが触れた。
そう、彼女が僕にキスをしたのだ。
唇が離れると、僕はゆっくり目を開けた。
目の前には彼女の顔がある。
彼女がある場所を指さしている。
彼女の指差した方向を見ると、そこには彼女と向き合っている、夏らしいスカイブルーのワンピースを着た女性が同じようにこちらを見ていた。
そう、それは僕自身だ・・・。

「これから私がいろいろ教えてあげるわね・・・・女の子のすべてを・・・・」

彼女が囁くと、わたしは頬を赤らめながら頷いていた。





(おしまい)









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