クルマに乗ると、人が変わる・・・?
作:逃げ馬
皆さんは、深夜の高速道路を車で走られたことは、ありますか?
昼間と違い、車の走っている数は少なくて、快適なクルージングが出来ますね。
走っていると、たまに追い越していく車の音のほかには、自分の車のエンジン音と、タイヤが拾う、道路の継ぎ目を越える単調な音くらいしか、私たち、運転をしている人間には、聞こえません・・・。
窓の外に目を移すと、真っ暗な中に、町の家の明かりが、ゆっくり流れていきます・・・たまに通過する、トンネルの、オレンジ色の照明が、神秘的な雰囲気を感じさせます・・・。
その日、大学の新学期が明日から始まるので、僕は、車の少ない夜に、大学まで直接、車で行くことにした。
夜中に走って、翌日眠らずに講義を受けることになるが、若いので体力には、自信がある。何よりも僕は、車の運転が好きだ。一日乗っていても平気だ。だから、友達は、僕とドライブに行くのは、嫌がる。
友達に言わせると、「おまえは、クルマに乗ると人が変わるから・・・。」ということになる。
確かに、小柄な身長と、女顔、人と話すのが苦手という性格とは反対に、クルマに乗って、山奥の林道を突っ走ったり、サーキットでタイムトライアルをするのが趣味なんだが・・・。
愛車は、青色のステーションワゴン・・・水平対向エンジンに、WRCで活躍している車と基本的に同じシャーシ・・・軽い車体と太いマフラー、精悍なフロントマスクで、僕のお気に入りの車だ・・・。
深夜・・・いつものように、制限速度+αで、高速道路を走る・・・。
車の中に聞こえてくるのは、ボクサーエンジンの心地よい音と、タイヤが、道路の継ぎ目を拾う一定のリズムの音だけだ。
窓の外では、町の明かりが流れていく・・・町を抜けると、あとは、たまに民家の明かりが見えるだけだ・・・。
『コトン・・・コトン・・・コトン・・・。』
道路の継ぎ目を拾う音が、眠気を誘う・・・。
「まずいなあ・・・このままじゃ眠っちゃうよ・・・。」
僕は、呟いた・・・。
この先には、10kmほどの長さのトンネルがある・・・いつも通る度に、「出口がないんじゃないか?」と錯覚するほどだ・・・。
僕は、首の後ろを『トントン』と叩くと、少しスピードを上げて、トンネルに向った・・・。
「トンネルを越してしまえば、サービスエリアがあったな・・・一休みしよう!」
僕は、呟いた・・・。
僕の車が、トレーラーを追い越す・・・。
『ゴーーッ』というエンジン音が聞こえた。
そしてトンネルのオレンジ色の照明の中に飛び込んだ・・・。
トンネルの中に、クルマのエンジン音が反響する・・・先の見えない、真直ぐなトンネル・・・走っているうちに、僕は、眠たくなっていった・・・。
そのとき・・・彼の胸は、ムクムクと膨らんでいった。髪の毛は、どんどん伸びて、サラサラのセミロングの髪になる・・・体は、一回り小さくなっていき、ウエストがキュッと細く引き締まる。ズボンの中で、ヒップは、大きくなっていく。
しかし、本人は、全く気がつかない・・・ただ、前を見ているだけだった。
次に、シャツは、柔らかい素材のブラウスになってしまった。大きくなった胸を、ブラジャーが締め付ける・・・ズボンの中では、滑らかな肌触りの下着が、ピッタリ覆った。ズボンは、どんどん長さが短くなると、膝の上で止まった・・・二本の足のトンネルがつながると、柔らかい生地になり、襞が刻まれていく・・・グレーのプリーツスカートになってしまった・・・。
しかし、本人は、全く気にもとめていない・・・。
クルマは、深夜の高速道路を滑るように走っていく・・・。
夜が明けた・・・車の窓に映る山の向こうから、朝日が昇ってくる・・・。
私は、フロントのバイザーを下ろして日差しを防ぐ・・・。
「ちょっと眠たいなあ・・・。」
私は、呟いた・・・さすがに、女の子の深夜のドライブはきつい・・・。
大学の駐車場に入って、車を止めた・・・。
「大丈夫だった?」
待っていた友達の言葉に、
「平気平気・・・!」
私は、車から降りると答えた。
「可愛い車だね!」
「でしょう・・・!」
私の愛車・・・シルバーメタリックのステーションワゴン・・・すっきりしたデザ
イン・・・中には、キャラクターグッズのぬいぐるみが並んでいる・・・。
「さあ・・・行こう!」
私は、講義室に急いだ・・・。
そう・・・彼は、クルマに乗って“人”が変わってしまった・・・。
こんにちは、逃げ馬です。
この作品はmkさんのホームページに投稿したSSです(^^)
作中でも書きましたが、深夜の高速道路は、なかなか独特の雰囲気です・・・。ちょっと神秘的です。
そんなときに友人と、「ハンドルを持つと人格が変わる奴!」という話をしていて思いつきました(笑)。
今度は、ちょっと別のストーリーも考えてみます・・・そろそろ、車とは、違う話を・・・。
ではでは、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2001年4月 逃げ馬