リスタート
作:逃げ馬
晩秋の朝。
青空から降り注ぐ陽光で銀色の車体を輝かせながら、その電車は駅に滑り込んできた。
『御茶ノ水です、お出口は・・・・・』
車内に流れるアナウンスを聞きながら、僕は座っていた席を立ち、ドアに向かって歩きだした。
電車が止まりドアが開くと、乗客たちが一斉にプラットホームに降りる。
電車に乗ろうと待っている大勢の乗客たちの間を縫いながら、僕は改札口に向かって歩いていく。
しかし、朝のラッシュ時のプラットホームは、なかなか思うようには歩くことが出来ない。
その間にも、銀色の車体にオレンジ色のストライプが入った電車が駅に入ってくると、新たな乗客たちがホームに降りてきた。
自動改札を抜けて、朝の街を歩いていく。
道路では車が行き交い、歩道にはサラリーマンやOL、制服姿の中・高校生たちが、会社や学校に向かって歩いている。
この辺りには、大学のキャンパスが多い。
学生たちは、それぞれの大学へ向かっていく。
知らない人が見れば、僕も彼らと同じだと思うだろう。
制服をではなく、トレーナーの上にジャケットを着て、ジーンズを穿いてリュックを背負って歩いているが、僕の目的地は彼らとは違う。
僕は人の流れから外れて脇道に入った。
100メートルほど歩くと、きれいなビルが建っている。
『帝栄州ゼミナール』・・・・・この業界では有名な進学予備校だ。
そう、僕は20歳の予備校生・・・・・『最高学府』と言われている東都大学を二年連続で受験をして、見事に不合格になってしまった。
『滑り止め』ということで、『そこそこ名のとおった大学』には合格していたのだが・・・・・僕はやはり東都大学で勉強をしたかった。
結果、僕は二年連続でこの『帝栄州ゼミナール』で予備校生として勉強をしている。
ビルの入り口を入り、エレベーターのボタンを押した。
エレベーターを待っていると、顔を見慣れた仲間たち・・・・・そう、僕と同じ予備校生たちがやって来た。
「よお!」
「おはよう!!」
同じ境遇の仲間たちが挨拶を交わしているうちにエレベーターのドアが開き、僕たちはエレベーターに乗った。
教室のあるフロアーでエレベーターを降りて廊下を歩いていくと、壁に貼られた制服姿のイケメン男子とかわいらしい女の子のポスターが目に飛び込んできた。
ポスターの中から僕に向かって爽やかに微笑みかける二人を見て、僕は毎朝、苦笑してしまう。
僕も二年前は、この二人と同じだったはずだ。
でも、今は・・・・・?
僕はポスターの中で微笑んでいる女の子を見て小さなため息をつくと、仲間たちと一緒に教室に入った。
この時期の僕のスケジュールは、模擬試験の点数を上げるために授業を受けて、授業のない時間帯には自習室で勉強をして、夜の9時頃にアパートに帰るという単調なものだ。
今日も授業の間の時間には自習室に向かった。
空いている席を見つけると、席に腰をおろして、机の上に参考書を出してページを広げた。
高校生の頃から東都大学に入学する事を目指して勉強をしてきた。
不合格になってからは、この場所で弱点の補強をしたり、過去問題をチェックする毎日だ。
そして毎日、同じ事を続けていると・・・・・?
『・・・・・』
おもむろにポケットからスマートホンを取り出して、インターネットサイトやツイッターのチェックや、ゲームを始めてしまう。
予備校生二年目は、集中力・緊張感を保つのが大変だ。
ふと見ると、制服姿の高校生の女の子が、こちらを見ながら笑いをこらえているようだ。
少し恥ずかしくなった僕は席を立つと、自習室を出た。
その日の夜、僕は予備校の近所の店で夕食を食べ終わると、授業を受けるために教室に向かった。
リュックからノートや筆記用具を机の上に置いて顔を上げた。
また授業が始まる・・・・・小さなため息をついて首を動かしてリラックスしようとしていたのだが・・・・・。
「・・・・・」
何かを感じて教室を見回した。
すると・・・・・。
「?!」
通路を隔てた後ろの席に、自習室にいた高校生の女の子が座って僕を見ていた。
視線が合うと、にっこり笑って会釈をしている。
僕も会釈を返すと、前に向き直った。
やがてドアが開くと、講師が入ってきて授業が始まった。
翌日
翌日の午後、僕はいつものように自習室にいた。
午後3時を過ぎると、人間であれば勉強をする集中力が切れてしまうのは当然のはずだ。
僕は気分転換のために、スマートホンでゲームをしていた。
すると突然、耳元で・・・・・。
「こんにちは」
かわいらしい声で、誰かが囁いた。
驚いて顔を上げると、そこには僕の驚いた顔を見てクスクスと笑っている制服姿の高校生の女の子・・・・・そう、あの女の子の顔があった。
「息抜き・・・・・ですか?」
彼女が悪戯っぽい視線で、僕を見ている。
「うん・・・・・まあね・・・・・」
予備校の自習室でゲームをしている・・・・・あまり誉められたシチュエーションではない。
僕はスマートホンをポケットに戻すと、
「君は、今日も授業があるの?」
当たり障りのない質問で、スマホゲームから彼女の注意を逸らそうとした。
「はい・・・・・受験まで、あまり時間はないですから」
彼女は微笑みを浮かべながら答えた。
「この自習室へも、いつも来ていますよ♪」
つまり、僕が『息抜きのために』スマートホンをいじっているのは、しっかり見られていたわけだ。
彼女の悪戯っぽい視線を受けながら、僕は苦笑いをしてしまった。
「いつも頑張っておられますね・・・・・」
どこの大学を受験されるのですか?・・・・・彼女は、ショートカットの艶やかな黒髪を微かに揺らしながら尋ねた。
僕が『東都大学』と答えると、彼女は納得したように頷いた。
「それならば、わかります・・・・・大変ですね」
「君は、どこを受験するのかな?」
僕の質問に対する彼女の答えは、東都大学と同レベルと言われる女子の名門大学だ。
「凄いね・・・・・」
僕は小さく肩を竦めながら、
「頑張ってね」
自分が頑張らないといけないのだが、彼女を励ますと、彼女は頷いた。
少しからかってやろう・・・・・そう思った僕は、
「僕が女子なら、そこを受けられるレベルなら、東都大学を受けるけど」
彼女は再び、悪戯っぽい笑顔になった。
「それなら、スマホを触らないで、過去問題を解いた方が良いかも知れませんね・・・・・」
僕は思わず吹き出しそうになった。
強烈なカウンターパンチ。
冗談に直ぐに反応できる頭の回転の速さ。
さすがは名門女子大学を目指す女子高校生だ。
「そうだな・・・・・気をつけるよ・・・・・」
ありがとう・・・・・そう答えると、僕は参考書のページをめくろうとした。その時、
「集中力が・・・・・続かないのですか?」
彼女が僕の顔を覗きこみながら言った。
「うん・・・・・まあね・・・・・」
長丁場だから、そんな時期もあるさ・・・・・僕は笑った。
彼女は床に置いていたスクールバッグを机に置くと、バッグから小さな瓶を取り出した。
「両手を出して下さい」
小瓶を手にした彼女が言った。
「・・・・・こうかな?」
僕は手のひらを上に向けて、彼女の前に出した。
彼女は僕の両手首に小瓶から淡いピンク色の液体を一滴落とすと、人差し指で手首に伸ばしていった。
それが終わると、彼女は小瓶から細い指に液体を塗ると、僕の後ろに回り、両耳の下に指で液体を塗っていく。
やがて微かに花のような香りを感じた。
「これは・・・・・?」
「アロマオイルです・・・・・きっと集中力を高めてくれますよ」
彼女は僕に微笑んだ。
集中力を高めてくれる・・・・・「ありがとう」僕は彼女にお礼を言った。
視線を机の上に置いた腕時計に移した。
「そろそろ授業だから・・・・・」
ありがとう・・・・・彼女にもう一度お礼を言うと、僕はリュックを手にして立ち上がった。
自習室を出て行く僕の後ろ姿を、彼女は微笑みを浮かべながら見送っていた。
僕が部屋に戻った時には、夜の11時を過ぎていた。
帰り道のコンビニで買った弁当をテーブルに置いて、背負っていたリュックを机の脇に下ろした。
リモコンを手にとりテレビのスイッチを入れると、コンビニの弁当とペットボトル入りのお茶で、遅い夕食を食べ始めた。
テレビを観ながら弁当を食べている手が、時折止まる。
テレビ画面にはコマーシャルが流れていて、可愛らしい女性アイドルの笑顔が映っていた。
僕はアイドルの笑顔を観ながら、予備校で会った女子高校生の笑顔を思い出していた。
女子高校生らしい爽やかさと可愛らしさ、そして明晰な頭脳を合わせ持つ女子高校生・・・・・『天は二物を与えず』と言うけど、何事にも例外はあるらしい。
僕は自分の状況と比較をして、ほろ苦い笑いを浮かべていた。
現役女子高校生として名門女子大学を目指す彼女と、東都大学を二回受験をして不合格になった僕・・・・・。
気がつけば僕は、彼女よりも二歳年上なのだ。
僕は弁当を食べ終わると、空になった容器をゴミ箱に捨てて、浴室に向かった。
浴槽にお湯を沸かして入れば疲れは良く取れるのだろうが、一人住まいだと『勿体ない』という意識が働いてしまう。
服を脱ぎ、下着を脱いで洗濯機に入れると、浴室のドアを開けて中に入った。
給湯器のスイッチを入れて、シャワーで温かいお湯をたっぷりと浴びる・・・・・肩に、首筋に・・・・・そして、頭から体全体に・・・・・。
「・・・・・?」
何か匂いがする?
そうだ・・・・・予備校で、あの女子高校生がアロマオイルを付けてくれたからだな・・・・・しかし、今まで残っていたのか?
すると・・・・・?
「?!」
浴室の中に、甘い香りが立ち込めてきた。
これは・・・・・・?
まるで何かに酔ったように、思考力が鈍ってくる。
出しっぱなしのシャワーのお湯が、僕の白い肌の上を玉になって滑っていく。
お湯が胸の膨らみの上を・・・・・キュッとしまったウエストを、そして膨らんだヒップの上を流れていく。
胸の膨らみ?
ヒップ?
僕は男なのに?!
ぼんやりとした頭のまま、浴室の鏡を見た。
そこに映っていたのは、女の子の裸体だった。
ここには、僕しかいないのに?!
あまりのショックで、そこで僕の思考は途切れた・・・・・。
部屋の中に、カーテンの隙間から陽射しが射し込んでいる。
ベッドの中で眠っている人は寝返りをうった。
ベッドの中から、かわいらしい寝息が聞こえてくる。
「う・・・・・ん・・・・・」
再び寝返りをうつ・・・・・テーブルの上に置いてある赤い目覚まし時計が鳴り出した。
ベッドの中から、細い腕が伸びてきて、テーブルの上の『何か』を探している。
持ち主を懸命に起こそうとしている目覚まし時計を見つけると、しなやかな白い指がスイッチを見つけた。
目覚まし時計の音が止まると、細い腕はベッドに戻り再び寝返りをうった。
数分後、ベッドの上で人が起き上がった。
軽く伸びをして体をほぐす・・・・・。
「・・・・・♪」
僕は両手を頭の上で組んで体を伸ばした。
口から可愛らしい声が、微かに漏れた。
組んでいた手を離すと、両手をベッドの上に下ろした。
「・・・・・?」
何かがおかしい?
両手を下ろした時に、胸で何かが・・・・・?
視線を下ろすと、ピンク色のストライプが入ったパジャマの胸元が、ふっくらと膨らんでいる。
なぜだ・・・・・?!
僕は両手を胸に置いた。
その手も白く細い・・・・・『まるで女の子の手』のようだ。
両手からは、ちょうど手のひらに収まるほどの柔らかい膨らみと、を感じた。
そして胸からは、両手で胸を揉まれる感覚が?
ということは、僕の胸が女の子のように・・・・・いや、違う?!
僕は両手を自分の目の前にかざした。
まるで力仕事をしたことのないような白く細い指・・・・・その手は、自分の意思のとおりに動く。
まさか・・・・・?!
僕は右手を股間にあてた。
パジャマの上からだが、そこには何も感じない・・・・・ということは?
僕はベッドから降りると、クローゼットの横にある、大きな姿見の前に立った。
姿見には、ピンク色のストライプが入ったパジャマを着た女の子が映っていた。
女の子は不安そうな眼差しで鏡の中から僕を見つめている。
鏡に映る女の子が、両手を頬にあてた。
僕の両手から、スベスベの女の子の肌の感触を感じる。
両手をパジャマの上から胸に置いた。
両手の中に、柔らかい膨らみを感じる・・・・・自分の胸に、女の子の『おっぱい』があるのか?
僕の心臓の鼓動が速くなる。
細い指がパジャマのボタンを外していく。
左右の留め方が男性用とは違うせいか、外すのに手間取った。
全てのボタンを外すと、ゆっくりとパジャマを脱いでいった。
パジャマの下から、白く肌目の細かい肌が、ふっくらとした胸の膨らみと桜色の乳輪と乳首が、そして美しいウエストのラインが現れた。
細い指がパジャマのズボンにかかる。
ゆっくりと脱いでゆくと、白いショーツに包まれたヒップと、健康的な脚線美が現れた。
ショーツに包まれた股間には、昨日まであったはずの物の痕跡は全くない。
やはり僕の体は、女の子になってしまったようだ・・・・・。
「マジかよ・・・・・」
思わず呟いた自分の声に驚いた・・・・・本来の自分の声とは全く違う、まるでテレビアニメのヒロインのような可愛らしい声だ。
鏡に映る下着姿の女の子は、不安そうな眼差しで僕を見つめている。
いっぱい何故、僕は女の子に?・・・・・頭の中に、昨夜の浴室で見た光景がフラッシュバックする。
でも、僕は・・・・・?
「?!」
テーブルの上に置いてあるスマートホンが突然、着信を告げた。
スマートホンの画面には『桜木千佳』という名前と、セミロングの髪の知的な顔立ちの女の子の画像が表示されていた。
部屋にスマートホンの着信音が響いている。
『桜木千佳』・・・・・僕は恐ろしい物を見るように、鳴り続けるスマートホンを見つめていた。
震える手を伸ばし、スマートホンを手にして耳にあてた。
「・・・・・もしもし・・・・・?」
『もしもし、奈央? おはよう♪』
「・・・・・奈央・・・・・?」
奈央って・・・・・誰? 僕が尋ねると、
『もう・・・・・また寝ぼけてるね、奈央?!』
スマートホンの向こうで、女の子の呆れたような声が聞こえた。
『早くしないと学校に遅刻するよ? これから智恵理と一緒に行くからね・・・・・』
そう言うと電話は切れた。
いったいどうなっているんだ?
桜木千佳、智恵理? 僕は二人を知らない。
学校に遅刻する?
予備校の事なのか?
その時、僕の視線は部屋の一転で止まった。
そこには、ハンガーで吊るされたブレザーの制服があった。
「制服・・・・・?」
僕は姿見の前から、吊るされたブレザーの制服にゆっくりと歩み寄った。
歩いている時、僕の足の爪先は、産まれた時からそうだったかのように内側に・・・・・『まるで女の子であるかのように』内股になって歩いていた。
「これって・・・・・?」
ハンガーに架かった紺色のブレザーと、チェック柄のプリーツスカートを見ながら、僕はため息をついた。
そのため息すら、『可愛らしい女の子』を感じさせる事が、『男としての自分』を苛立たせるのだが・・・・・。
僕は軽く舌打ちをすると、
「・・・・・まさか、自分の・・・・・」
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「奈央、おはよ〜♪」
玄関から、二人の女の子の声が聞こえてくる。
どうしよう?・・・・・そう考えた瞬間、自分の今の姿に気がついた。
ショーツとブラジャー・・・・・『女の子の下着』を身につけた姿・・・・・これでは人前には出る事ができない。
「奈央?起きているの?」
玄関から再び声が聞こえた。
僕は脱いだばかりのピンク色のストライプの入ったパジャマをもう一度着ると、小走りに玄関に向かい、玄関のドアを開けた。
そこには、壁に架かっていたものと同じ制服を着た女の子が二人立っていた。
『この娘たちは・・・・・?』
誰なんだ・・・・・戸惑っている僕に向かって、
「おはよう、奈央♪」
艶やかなボブカットの黒髪を微かに揺らしながら、目の前に立つ女の子が、にこやかに言った。
「君たちは・・・・・?」
「呆れた?!」
ボブカットの女の子は、少しおどけたような口調で、
「まだ眠っているんじゃないの? 智恵理、何か言ってあげてよ」
声をかけられ、微笑みを浮かべながら僕の前に歩み寄ったのは昨日、予備校で話をしたショートカットの髪の女の子だった。
「奈央、おはよう♪」
彼女は、明るい声で僕に声をかけた。
相変わらず事態を飲み込めず二人を見つめていると、
「奈央、しっかりしてよ・・・・・」
彼女は予備校で会った時と同じ明るい笑顔を浮かべ、知的な眼差しで僕を見ながら、
「あなたは、塚本奈央(つかもと なお)。彼女は、桜木千佳(さくらぎ ちか)。あなたのクラスメイト」
桜木千佳と呼ばれたボブカットの女の子が、僕に向かっておどけたような仕草で小さく手を振っている。
「そして、わたしは黒川智恵理(くろかわ ちえり)。 わたしたち三人は、聖峰女子学園高校(せいほうじょしがくえん)の三年生」
わかる?・・・・・おどけた口調で言われて、僕は頷いた。
頷いた・・・・・頷いたのだが、それは納得をしたから頷いたのではない。
取り敢えず今の『状況を理解した』という意味だ。
そもそも、突然女の子の体になり20歳の予備校生から高校三年生に、しかも『クラスメイト』と名乗る女の子が『毎朝来ています』といった雰囲気で現れたこの状況は、理解をしろというのが無理というものだ。
すると、『黒川智恵理』と名乗ったあの女の子が言った。
「奈央、まだパジャマを来ているの? 着替えないとね♪」
「エッ?」
戸惑っている僕に、
「早くしないと、遅刻しちゃうよ」
桜木千佳が、あの女の子・・・・・黒川智恵理と一緒に、僕を部屋の中に押し戻した。
「さあ、さっさと着替える着替える♪」
「ちょっと・・・・・? 僕は・・・・・?」
戸惑っている僕にはお構い無しに、彼女たちは僕の部屋に上がり込むと、僕が着ていたパジャマを強引に脱がせて、
「はい、ブラウスを着て♪」
桜木千佳が、真っ白なブラウスを僕に手渡した。
仕方なく僕は、パジャマを脱いで、ブラウスに袖を通した。
「ハイ♪」
あの女の子・・・・・黒川智恵理が、手にしたチェック柄の布を差し出した。
「・・・・・それは・・・・・?」
スカート・・・・・? 僕は、彼女の顔を見ながら首を振った。
僕は男だから・・・・・そう言おうとしたのだが、なぜか僕は口をきくことができなかった。
「はい、奈央・・・・・早くこれを穿いて」
彼女にそう言われると、不思議なことに僕の身体は、僕の意思を無視してパジャマを脱ぐと、その『女の子だけが身につけることを許された衣服』・・・・・スカートに足を通し、腰まで引き上げるとファスナーを上げてホックを止めた。
昨日まで穿いていたズボンと、今はいているスカート・・・・・この素足が空気に曝されている頼りなさに耐えられず、僕は思わず両足をこすり合わせてしまい、それが逆に『女の子の素肌の感覚』を感じさせる形になってしまった。
それからしばらく、僕は二人にとって『着せ替え人形』と同じだったのかもしれない。
桜木千佳は、起きた時のままだった髪を、優しく整えてくれた。
あの女の子・・・・・黒川智恵理は、顔を洗った僕の唇にリップクリームを塗ってくれた。
身支度を終えた僕は、自分の意思など関係なく、二人に手を引かれて部屋を出ると学校・・・・・聖峰女子学園高校に向かった。
その日は、戸惑うことばかりの一日だった。
まず、『女の子の衣服の感覚』が、男である僕には馴染むことが出来ない。
歩く度に太股に空気の流れを感じ、スカートの布地が滑らかな肌を優しく撫でる。
歩く度に胸にある『自分の胸の膨らみ』が揺れ、それをサポートする『女性だけが身に付ける下着の感覚』を意識してしまう・・・・・昨日まで間違いなく男性であり、ズボンを穿き、胸には膨らみなどなかった僕に受け入れることなどできるわけがない。
さらに驚いたのは、部屋にあった学校指定のバッグに『自分の定期券』が入っていて、『僕の制服のポケット』には、澄まし顔の写真を貼り付けた聖峰女子学園高校の学生証が入っていたことだ。
『自分の』学生証や定期券を、僕は恐ろしい物を見るように見ていたらしい。
彼女たちは、「奈央は、まだ寝ているのかな?」などと言って笑っていたが・・・・・。
予備校で出会った女の子・・・・・今は『僕のクラスメイト』であるらしい・・・・・黒川智恵理は、その可愛らしい顔に微笑みを浮かべながら僕の目を見ると、
「奈央は、聖峰女子学園高校の三年生なんだもの・・・・・持っていない方が変だよ・・・・・」
彼女の澄んだ瞳に見つめられて言われると、なぜか『そうだな・・・・・』と、納得してしまったのだが・・・・・。
聖峰女子学園高校に着き、彼女たちに促されて『僕たちのクラス』の教室に入った。
黒川智恵理と桜木千佳は、明るく弾んだ声で挨拶を交わし、昨夜のテレビ番組の話題で話がはずんでいるようだ。
「奈央、おはよう♪」
『クラスメイト』が声をかけてくれているが、
「アッ・・・・・おはよう・・・・・」
僕が返す挨拶は、ぎこちない。
「奈央は、まだ目が覚めてないね」などと言って彼女たちは笑っているが、もちろん理由は違う。
そもそも昨日までは予備校生だった僕にとって、聖峰女子学園高校の生徒である彼女たちは、クラスメイトではない・・・・・たとえ今、僕が『女子高校生の姿』であっても・・・・・。
そして何よりも、僕の今の姿だ・・・・・。
教室の窓に視線を向けると、彼女達の姿と共に、制服姿の可愛らしい女の子が、こちらを見ている・・・・・それが昨日までは男だった自分の姿だと理解しろというのが無理だろう。
少し視線を落とすと制服の胸元を、下から押し上げている膨らみがある。
男性では、ありえないことだが・・・・・。
自分の胸に、女性だけの持つ膨らみがある・・・・・その事実を改めて感じ、小さくため息をついた。
その時、
「?!」
誰かが、僕の胸を掴んだ。
「ちょっと・・・・・?!」
やめて・・・・・リズミカルに胸から伝わってくる刺激から逃れようと、思わず身体をくねらせてしまう。
「ふむふむ・・・・・奈央のバストも、少しは成長したかな?」
僕の後ろから、桜木千佳の声が聞こえてきた。
昨日までなら、彼女の腕から、簡単に逃れる事が出来ただろう。
しかし今の僕の身体は、後ろにいる彼女と体力の差は、さほどないだろう。
なんとか彼女の両腕からのがれた僕は、息を弾ませながら桜木千佳を睨んだ。
彼女は、クラスメイト達と一緒に、明るく笑っている。
その中には、あの予備校で出会った彼女・・・・・黒川智恵理もいる。
「・・・・・もう!」
僕が声をあげようとしたその時、教室ののドアが開き、教室に先生が入ってきた。
生徒達が席につくと、先生が出席をとり授業が始まった。
しかし、なぜ僕は『塚本奈央さん』と呼ばれて、『当たり前』のように返事をしていたのだろう?
僕は、昨日までの自分の名前を覚えている。通っている予備校も、履修している授業も・・・・・それなのになぜ?
その時、前の席に座っている女の子から、小さく折り畳んだメモが回ってきた。
紙を開くと、
『さっきはゴメンね 桜木千佳』
可愛らしい文字で書かれていた。
思わず顔に笑みが浮かんでしまう。
前を見ると、桜木千佳と黒川智恵理・・・・・並んで座っている二人が、僕を見つめながら微笑んでいた。
『久しぶりの高校生生活』は、不思議な感覚だった。
『高校生として』受ける授業は予備校の授業よりも授業内容が、すんなりと頭に入っていった。
そう、きっと集中していたからに違いない・・・・・なぜって? 授業を聞いている間は、『昨日までとは違う自分の身体』も、女性の下着や制服のスカートの感覚も、全てを忘れることが出来たからだ・・・・・。
しかし、体育の授業の時には、困惑することになってしまった。
なにしろ『男性』である僕が、たくさんの『女子高校生』達が着替えをしている『女子更衣室』で着替えをすることになってしまったのだから。
入れないと言う僕に、「何を恥ずかしがっているの?」と、予備校で出会った彼女・・・・・黒川智恵理は僕の手を引っ張って、女子更衣室に入って、さっさと着替えを始めてしまい、僕は思いがけず女子高校生達の着替えを見ることになってしまった。
しかし、何も出来ずに呆然と突っ立っている僕を見たクラスメイト達によって、僕は無理矢理、体操服とブルマに着替えさせられてしまったのだが・・・・・。
その日の体育の授業は、バスケットボールだった。
しばらく予備校生生活を続けていて、運動不足気味だった僕は、バスケットボールなど出来るのかと不安だった。
しかしゲームが始まると、信じられないことに昨日までよりも軽快に身体を動かす事ができ、相手の選手からボールを取り、ドリブルをしながら相手のディフェンスをかわしてシュートを決める・・・・・自分でも信じられないプレーが出来たことで、久しぶりに爽快感を味わう事ができた。
しかしドリブルをしながら走ると、ブラジャーに包まれた胸の膨らみが揺れるのには、『今の僕は、女の子の身体なのだ』と意識させられてしまった。
彼女たちと学生食堂に昼食を食べに行った時にも、『女の子の身体』を意識させられた。
彼女たち・・・・・黒川智恵理と桜木千佳・・・・・と一緒に学生食堂へ行き、食券を買う生徒たちの列に並んだ。
列に並び順番を待つ間、僕は黒川智恵理と桜木千佳・・・・・二人のお喋りを聞きながら、生徒たちの持っているトレーに載った定食の料理を見て思った。
『足りない・・・・・』
この聖峰女子学園高校は、当然ながら女子校だ。
したがって当然ながら学生食堂の料理も『女子向け』になる。
『男性である僕』にはボリュームが足りない。
列が進み、僕が食券を買う順番が回ってきた。
お金を入れて、メニューを見ながらボタンを押す僕を見て、周りの生徒たちは目を丸くしていた。
僕が定食の他にカツ丼とコーヒーを注文したからだ。
「奈央・・・・・そんなに食べれるの?」
桜木千佳が、目を丸くして僕を見ている。
「もちろん・・・・・」
まだ足りないかもしれないよ・・・・・そう答える僕を見ながら、黒川智恵理は微笑んでいた。
昨日までなら、これでも足りなかっただろう。
しかし今日は・・・・・いや、この『女の子の身体』では、定食を食べ終わると、お腹がいっぱいになってしまったのだ。
そして、コーヒーを飲んで、僕は顔をしかめた。
僕は普段は、コーヒーをブラックで飲んでいる。
今日も同じように飲んだのだが、いつもは美味しく感じていた『苦味』が、ただの『苦さ』にしか感じられないのだ。
味覚までが女の子になっているのか?・・・・・僕はコーヒーに砂糖とクリームを入れながら、ショックを受けていた。
そんな僕を見ながら、彼女たちは「奈央は天然だね」と、笑っていたのだが。
その日一日を、僕は聖峰女子学園高校で高校三年生の女子高校生『塚本奈央』として過ごした。
一日の授業を終えた時には、ぐったりと疲れてはいたが同時に、しばらく感じていなかった充実感も感じていた。
そう、『今日一日、いろいろと学んだ』という充実感だ。
一日の授業が終わり『自分の席』に座ってボーッとしている僕に、
「奈央、智恵理と一緒に帰りにケーキを食べに行かない?」
すっかり帰り支度を終えた桜木千佳が、声をかけてきた。
彼女の隣で、黒川智恵理も僕に向かって微笑みかけている。
ケーキか・・・・・僕は甘いものは、それほど好きではない。
少し躊躇ったが、
「行こうか・・・・・」
机に置いたままになっていた教科書やノートをバッグに片付けながら答えた。
三人の女子高校生が、聖峰女子学園高校の校門を出ていく。
前を歩く二人は、楽しそうにお喋りをし、後ろからついていくもう一人の女の子は、澄ました顔で二人を見つめている。
時々、前の二人が振り返り彼女に話を振ると、ちょっと驚き、時には戸惑い、困惑して途方にくれる・・・・・そんな彼女を見て、二人は明るく笑い、また明るく彼女に話しかけている。
街を行き交う男性たちは、そんな彼女達を視線で追いかけている。
ある者は羨望の眼差しで。
またある者は、『自分のものにしたい』という欲望の視線で。
そしてある者は、若さへの憧れの視線を向けながら、ため息をついている・・・・・。
その男性達の視線に曝されながら、僕は女子高校生『塚本奈央』になってしまったことを改めて意識してしまい、自分の頬が赤くなっていくのを感じていた。
自分も昨日までは、あんな視線で彼女達を見ていたのだろうか?
そして今、自分は彼らから『女子高校生』として見られている・・・・・僕が男性の一人に視線を向けると男性は、ばつが悪くなったのか、スッと視線を反らした。
「奈央、早く・・・・・行くよ♪」
桜木千佳と黒川智恵理、前を歩く二人に声をかけられて、僕は慌てて二人の後を追った。
僕が二人に連れて来られたのは、駅に程近いお洒落な外観のケーキショップだった。
店に入ると、ずらりとケーキが並んだショーケースの向こう側から、かわいらしい女性店員か「いらっしゃいませ」と、迎えてくれた。
二人はショーケース を見ながらケーキを選んでいる。
本当に女子は、ケーキがすきなんだな・・・・・楽しそうにケーキを選んでいる二人を見ながら、僕は思った・・・・・なぜ僕は、この店にいるんだろう?。
「奈央も選びなよ」
声をかけられて、我に帰った。
ショーケースの前に立つと、中にはいろいろな種類のケーキが、ずらりと並んでいる。
それほどケーキが好きではない僕にすれば、『目移りする』というよりは、『よくこれだけの種類があるな』という思いがあった。
彼女達二人は、迷いながらも既に決めたようだ。
特に食べたいわけでもない僕は、典型的なケーキ・・・・・イチゴのショートケーキを注文した。
「ケーキセットには、ドリンクが付いていますが?」
店員が伝票を片手に持ちながら尋ねたので、僕はコーヒーを頼もうとした。
すると、
「奈央、私たちと同じ紅茶にしない?」
「お昼に飲んでいたときに、合わないみたいだったしね・・・・・」
二人に言われて僕は、仕方なく紅茶を注文したのだった。
それぞれのケーキセットが届くまでの間、僕たち三人は店内の陽当たりの良い席に座って待っていた。
僕の前に座っている黒川智恵理と桜木千佳は、よくこれだけ話せるものだと呆れてしまうほど、お喋りが止まらない・・・・・時々思い出したように僕に話が振られるが、僕には彼女たちのようには話せないし、話したくもない・・・・・今は何故か女の子の姿だが、男なのだから・・・・・。
僕は視線を楽しそうに話をしている二人の女子高校生から、喫茶室の外に移した。
大きな窓から、店の駐車場の横にある桜の古木を中心にして、美しい庭が作られている。
あの花の名前は、なんと言うのだろう・・・・・今まで花の名前などには興味はなかったのだが・・・・・この不思議な状況を忘れたいためなのだろうか?
「お待たせしました」
女性の声が聞こえてきて、僕は想像から呼び戻された。
「来たよ!」
「美味しそう♪」
二人の女子高校生が、大きな瞳をキラキラさせながら、自分の前に置かれたケーキを見ていた。
僕の前にも、注文をしたイチゴのショートケーキとレモンティーが置かれた。
目の前に置かれたケーキを見ると、不思議なことに自然に微笑んでいた。
「さあ、食べよう」
「いただきます♪」
二人の声に促されて、僕もケーキを一口食べた。
クリームの甘さが口の中に広がると、自然に笑顔になってきた・・・・・甘いものは、それほど好きではなかったはずなので、自分でも不思議だ・・・・・。
ティーカップを手にとり、紅茶を口にした。
ティーカップからあがる湯気と共に、良い香りが鼻をくすぐる。
今まではコーヒーの香りが好きだったが、紅茶もいいな・・・・・自分でも不思議に思う新たな『発見』だった。
いわゆる『食わず嫌い』だったのだろうか?
いや、僕だって紅茶は飲んだことくらいはあるのだが・・・・・?
しかし、ショートケーキの生クリームの美味しさは、今まで感じた事のない味だ。
イチゴのショートケーキだって、今まで何度も『お付き合い』で食べたはずなのに・・・・・?
今日の僕は、味覚がおかしいようだ・・・・・。
ケーキショップで、黒川智恵理と桜木千佳・・・・・二人の『クラスメイト』とケーキを食べながら、まるで『放課後の女子高校生のような時間』を過ごし、自分の部屋に帰ってきた。
「フウ〜〜ッ」
教科書やノートが入ったスクールバッグを机の上に置き、思わずため息をついた。
そして、制服を着たまま部屋の真ん中で、仰向けに寝て、大の字になった。
男の部屋の真ん中で、美しい黒髪と制服のスカートが広がったまま、大の字になって天井を見つめる女子高校生・・・・・広がったスカートから伸びる白くむっちりとした太ももと、紺色のハイソックスに包まれた足・・・・・健康的な美脚を惜しげなくさらしている。
このかわいらしい女子高校生の『心』が、実は男性だから気にならないのだが・・・・・。
僕はスカートのポケットに手を突っ込んであるものを手に取ると、寝転がったまま、改めてそれを見た。
『塚本奈央』と書かれた学生証・・・・・『この高校生の女の子』の学生証だ。
そして、それは『今の僕自身を証明するもの』でもある。
僕は勢いよく床から起き上がるった。
制服のプリーツスカートが、健康的な白い太ももを優しく撫でる・・・・・昨日までなら、絶対に味わうことのなかった感覚だ。
僕は、ローゼットの横に置いてある姿見の前に立った。
制服を着た17歳・・・・・高校3年生の女子高校生。
自分のクラスメイトなら、間違いなく声をかけているであろう魅力的な女の子。
しかし、鏡に映っている女の子は、今の自分自身なのだ。
思わずため息をついて、鏡の前を離れた。
ケーキを食べて帰ったからだろうか?
夕食を食べようという気は起きない。
昨日までなら、同じ状況でも今頃は『カツ丼と蕎麦の定食』を食べているだろう・・・・・どうやら胃袋も『女の子』になっているらしい。
僕は、そんな状況が気に入らない。
「仕方ない・・・・・勉強でもするか・・・・・?」
僕は机の前に座り、今日の授業の復習を始めた。
春
桜の花が美しく咲くなかを、スカートスーツを着た若い女性が、胸を張って歩いていく。
街を行き交う男性たちは、ついつい彼女に視線を向けてしまうようだ。
わたし・・・・・塚本奈央は今日、東都大学の入学式の日を迎えた。
あの日、予備校で不思議な女の子・・・・・黒川智恵里と出会い、聖峰女子学園の女子高校生になってしまってから、『女の子になったことを忘れるため』に勉強に集中した。
そして・・・・・東都大学に、合格することが出来た。
しかし・・・・・?
僕は、聖峰女子学園の校門の前で足を止めた。
『僕は』か・・・・・思わず苦笑いをしてしまう。
彼女達の前で、『僕』と言うと、いつも言われたものだ。
『奈央はかわいいのに、ぼくなんて言うのは変だよ』
そして、明るく笑うのだ。
いつも言われるので、彼女達の前では『女の子のように話し、行動する』ように注意をするようにした。
今では、自然に女の子らしく会話をして、行動できる。
しかし以前の僕は、間違いなく男性だった。
僕は、聖峰女子学園の校舎を見ながら思った。
彼女達・・・・・黒川智恵里と桜木千佳・・・・・と共に、東都大学の合格発表を見に行った。
自分の受験番号を見つけた時には、彼女達と抱き合って喜んだ。
そう、『彼女達』とだ・・・・・。
しかし、気がついて見ると、彼女・・・・・黒川智恵里の姿はなかった。
その場にいた桜木千佳に尋ねると、「黒川智恵里って・・・・・誰?」
桜木千佳によると、二人で東都大学の合格発表を見に来たというのだ。
そして彼女は笑った「奈央は、天然だね」・・・・・と・・・・・。
しかし、僕には彼女の記憶がある。
予備校の自習室で、初めて会った時。
桜木千佳と一緒に、僕の部屋にやって来たとき。
学校の食堂で、男だった時と同じように食べようとした僕に呆れていた時。
そして、一緒に受験勉強をしていた時。
僕には、彼女の記憶がある。
今もそうだ・・・・・。
僕は校門を離れ、大学に向かって歩き始めた。
僕は、彼女と一緒に頑張ったことで、志望校に合格をすることができた。
あのまま、予備校で勉強をしていたら・・・・・大学に合格できただろうか?
もしかすると、彼女は・・・・・?
僕は首を振った。
長い髪が、陽光を反射しながら揺れた。
制服姿の女の子が、スーツ姿の女性の後姿を見つめている。
彼女は美しい微笑みを浮かべると、光の中に消えていった。
リスタート
(おわり)
この作品に登場する団体・個人は、実在のものとは一切関係のないことをお断りしておきます、
2015年12月
逃げ馬
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