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「どこかでみたぞ」シリーズ

シャンプー



作:逃げ馬






栗原真也は高校2年生。豪気体育大学付属高校に通っている。
真也には、純愛女子大学に通う大学生の姉、美晴がいる。
純愛女子大学は、幼稚園から大学までそろった世間では“女子の名門”と呼ばれている学校だ。何故か?学生も“美女”が多い。
高校のざっくばらんな気風に染まった真也と、名門女子大学で勉強をする姉。二人は何かというと喧嘩をしていた。
まあ、それも仲の良さ故なのだが・・・・。



この日も、高校での部活を終えた真也が家に帰ってきた。
「ただいま〜〜〜」
玄関から元気な声が聞こえてきた。
「おかえりなさい!」
母が台所から声をかけた。廊下をずんずん歩いてくる気配がする。
「ごはんは?」
台所へ来るなり真也は、母に尋ねながら大きなバッグをドンと床の上に置いた。
「はいはい! 出来ているわよ」
母は、笑いながらテーブルを指差した。 真也がこう言う事は見越していたのだろう。すでに料理が並んでいる。
「助かった〜・・・練習がきついから、おなかがペコペコだよ」
真也が椅子に座ると、母はまるでどんぶり鉢のような大きな茶碗にご飯を大盛りにすると、真也に差し出した。
「いただきま〜〜す!」
言うと同時に、真也はご飯をガツガツと食べていく。
「姉さんは?」
「まだ大学から帰っていないわよ」
「フウ〜〜〜〜ン・・・・」
その間も、真也の箸は止まらない。その時、
「ただいま〜〜」
玄関から声が聞こえた。姉の美晴が帰ってきたようだ。廊下を歩いて台所に来ると、
「なに・・・この臭い・・・・汗臭い?!」
顔をしかめながら、
「なんだ・・・・真也か?」
「なんだ・・・は、ないだろう?」
「なによ・・・そんな汗臭い体だから女の子にもてないのよ」
「そんな、わかりもしないくせに!」
「わかるわよ、だって、バレンタインにも肩を落として帰ってきたくせに?」
「ドキッ?!」
「いっそ、女の子に生まれてきていれば、ちょっとはもてたかもね?」
美晴がそのきれいな指で、真也の鼻先をちょんちょんと突いた。
「いい加減にしなさい」
母が笑いながらたしなめた。ふと、美晴の手にした袋に目をとめた。
「その袋はどうしたの?」
「これ? 大学の前で女の人が配っていたの」
ごそごそと袋の中から何かを取り出した。
「シャンプーらしいわよ」
「へえ〜」
悪戯っぽい視線を真也に向けると、
「さて、わたしは誰かさんみたいに汗臭くなりたくないから、先にお風呂に入ってくるわね」
「誰かさんって、誰だよ!」
頬を膨らませる真也を見て、「ウフフッ」と笑って風呂に向かった美晴。
「まったく・・・」
真也は、頬を膨らませながら、またご飯を頬張った。



食後、真也はリビングのソファーに座ってテレビを見ていた。
美晴が風呂に入ると言ってから、もう1時間以上たっている。
「まったく、姉貴の風呂は長いから・・・・」
ブツブツ文句を言いながらテレビを見ている。
「おまたせ〜〜〜」
パジャマ姿の美晴が、リビングに入ってきた。
「ア〜〜〜ッ、気持ち良かった〜〜〜〜」
思わず振り返った真也は、驚いてしまった。
いつも見慣れているはずの湯上りの姉の姿。それがこの日は、いつもとは違ったのだ。
黒く艶やかな髪、白く輝く滑らかな肌。 なんだか、ドキッとしてしまう。
「なに見ているのよ」
「べ・・・別に?」
真也は慌てて立ち上がると、着替えを持って歩き出した。
「風呂に入るよ」
「アッ・・・あのシャンプーを使っちゃだめよ! わたし、気に入ったんだから!!」
「わかったよ!」



真也が浴室に入った。
姉が使ったシャンプーの残り香だろうか? なんとなく良い香りがするようだ。
体に湯をかけると、浴槽に入った。
大柄な真也が入ると、浴槽からお湯が音を立てながら溢れ出す。
真也の目には、さっき見た姉の姿が焼きついて離れなかった。
見慣れているはずなのに、いつもとは違う・・・・姉に“女性”を感じてしまったのだろうか?
湯船から出ると、洗い場の椅子に座った。
シャワーの横の棚には、姉の持って帰ってきたシャンプーが柔らかな曲線で攻勢されたボトルに入って置かれている。
真ん中のくびれたボトルは、真也に女性の体を連想させていた。
思わず手を伸ばしボトルを手にする真也。
キャップを外し、シャンプーを手のひらに垂らした。
バラの花びらのような香りが浴室に漂い始めた。
たまらず、シャンプーを頭につけた。
力いっぱい、短く刈り込んだ髪を洗う。
泡が立つに連れ、バラの香りが強くなっていく。泡がどんどん増えて、体を覆っていく。
真也は、長くきれいな髪を洗い終えると、体を洗い始めた。
柔らかい腕と、滑らかな肌。
そして胸と足・・・・染み付いた汗の臭いをきれいに洗っていく。
何とかシャワーを掴むと、お湯を出して泡をきれいに流していく。
「ア〜ッ・・・さっぱりした」
浴室に響く可愛らしい声、
「エッ?!」
洗い場の鏡に映るのは、当然自分だ。
長く伸びた髪、胸の二つの膨らみ、細いウエストと大きなお尻・・・・これは?
「オレ?」
と言った声は、言葉遣いに似合わない可愛らしい声だ。そして、自分の体を見下ろせば、鏡に映ったのと寸分違わない体が目に入る。

「キャ〜〜〜〜ッ?!!」
浴室に“女の子の悲鳴”が響く。

「どうしたの?!」
浴室に美晴と母が飛んできた。二人とも、浴室にいる“女の子”の姿を見て固まってしまっている。
「姉さん、俺・・・・」
女の子が泣きながら美晴に抱きついた。
「あなた・・・・真也なの・・・?」
女の子が、大きな瞳に涙を浮かべながら頷いた。

「かわいい〜〜〜」

その夜、女の子になった真也は、高校の制服や体操服、水着に普段着と・・・一晩中、美晴の着せ替え人形になってしまった。
「俺・・・・明日からどうすればいいんだろう?」
「大丈夫よ・・・わたしが、うちの高校の先生に頼んでみるから・・・・」



誰もいない礼拝堂に、明かりがついている。
大きな聖母像の前に、光の粒が集まってくると、その中にブレザーの制服を着た少女が現れた。
少女は、にっこり微笑むと、
「また・・・一人増えたわね・・・・」
呟きながら、聖母像を見上げていた・・・・。


・・・TS女性は、美しい?





どこかで見たぞシリーズ
シャンプー

(おわり)



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これは、某化粧品会社のシャンプーのCMを見て思いついた作品です。


尚、この作品中で登場をする団体・個人は、実在をするものとは一切関わりのないことをお断りしておきます。

2009年4月 逃げ馬



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