「しつこいな?!」
あなたは吐き捨てるように言うと右へ曲がった。
必死に走るあなた。
後ろを振り返ると・・・やはり彼女は、微笑みを浮かべて息を切らせもせずに走ってくる。
しかも、あなたとの差をどんどん縮めてくるではないか? こちらはすでに息も切れ切れになるほど全力で走っていて、しかも相手は女性だ?
「クソ〜〜〜ッ?!」
気合を入れるために大声で叫ぶあなた。
後ろを振り返る。
もう彼女との差は2メートルもない。
『やばい!』
奥歯を噛みしめ前を向き、もうひと頑張り・・・しかし、
「アッ?!」
前からポニーテールの髪を揺らしながら別の女性・・・“鬼”が・・・?
「しまった?!」
『ボン!』
あなたの視界を赤い閃光と光り輝く白煙が覆った。
公園の景色も、何よりもあなたにカードを張り付けた、あの女性の姿も見えなくなった。
「何が起きたんだ?」
周りを見回すあなた。辺りは白く光り輝く空間だ。
ふと、体の異変に気がつくあなた。
「・・・体に・・・力が入らない?」
公園の道に立っていたはずだ・・・しかし、今のあなたは『地面に立っている』という感覚を感じる事が出来ない。
柔らかい物の上に・・・いや、違う! ふわふわと体が浮いているような今までに感じたことのない感覚だ。
「?!」
頭がムズムズする。
あなたは頭に手をあててみた。
自分のものとは思えない、細くしなやかな感触が・・・それだけではない、髪が少しずつ伸びてきて、今では肩に掛かるほどになってしまっている。
髪を触っていた手の感触に違和感を感じるあなた。
手を目の前にかざす・・・そう、自分の手のはずだ。
しかし、それは見慣れた自分の手・・・武骨な男の手ではない。細くしなやかな白い指。力仕事をしたことも無いような小さな手に変わってしまっている。
「アアッ?」
あなたは自分の体に変化が起きている事を、視覚でも体の感触でも知ることになる。
シャツの胸の部分を、何かが押し上げてくる。
そして・・・今あなたの胸に出来つつあるバストが服を押し上げていく感触を、あなたの脳細胞に伝えてくる。
「まさか・・・」
そう呟いたあなたは、その後の言葉が出なかった。
呟いたあなたの声は、自分の声とは似ても似つかない可愛らしい・・・そう、女の子の声になっていたのだ。
あなたの体の変化は続いている。
胸だけでなくズボンのお尻の部分は、はち切れるのではないかと思うほどに膨らんでいる。
ベルトが小さな金属音をたてた。ふと見るとウエストがブカブカになっている。
両手を腰に当ててみるあなた・・・信じられないほど、ウエストは細くなってしまっている。気がつけば足も内股になっている。
急に涼しくなってきた?・・・いや、違う?! あなたの履いているズボンはどんどん短くなり、シャツも袖が短くなり、胴の部分も短くなって肌が白くなりほっそりとしてしまったウエストを露わにしていく。
短くなったズボンは鮮やかな色に変わり、あなたの大きく膨らんだヒップを包みこんでいく。
シャツも同じ色に変わり、あなたの大きく膨らんだ胸を包みこみ、その大きな“果実”の存在感を際立たせている。
「これって・・・まさか?」
『すっかり女の子になったわね・・・』
どこからか女の声が聞こえてきた。
「どこにいる・・・出て来い!」
あなたは白く光り輝く空間に怒鳴った。
『そんなに可愛くなったのに、そんな言葉使いはするものじゃないわよ』
『フフフッ』という笑い声が聞こえてくる。奥歯をきつく噛みしめるあなた。
「ふざけるな! 僕は男だぞ!!」
突然、あなたの前に銀色の光が集まってきた。光は四角い形に集まると、それは大きな姿見に変わった。
「なっ・・・?!」
姿身を見て驚くあなた。
そこに映っているのは、豊かなバストと抱き締めれば折れてしまいそうな細い腰、大きく膨らんだヒップと健康的な脚線美・・・その体を鮮やかな色のビキニで包んだ16・7歳に見える美少女だったのだ。
その美少女が、鏡の向こうから大きな瞳を見開いて、鏡に映る自分の姿に驚いている。
『その姿の、どこが男なの? 貴方は女の子・・・・可愛らしい女の子なの・・・』
突然、眩い光があなたを包んだ・・・。
「・・・」
誰かがあなたの名前を呼んでいる。
「保奈美ちゃん、こっちに視線をくれる?」
あなたはスタジオにいた。
髭面のカメラマンが、ファインダーを覗きながら、あなたにポーズの注文を出す。
ビキニを着たあなたは、人懐っこい笑顔を振りまきながら、カメラマンの注文に応えてポーズをとる。
あなたは、抜群のプロポーションを持つグラビアアイドルになってしまった。
GAME OVER
<エピローグ>