あなたは迷った末に、まだ様子を見ることにした。

時折タイマーに視線を移し、時間を確かめる。
焦っているせいか、なかなか時間が進まない。

あなたは、また木の隙間から道の方を覗いた。
不安感が周りへの注意を促す。

「いる・・・いるよ・・・」
あなたは呟いた。

あなたの視線の先、公園の道を黒いスカートスーツの女性が歩いている。
時々立ち止まり、あたりに視線を走らせている。

「さっさと行っちまえ・・・」
そう呟いたあなたの声が聞こえたわけではないのだろうが・・・?
美女は立ち止まり、こちらを見た。
「・・・!」
視線が合った? いや、この距離でこの狭い木と木の隙間からの視線なんてわかるはずが・・・?
あなたはそう思ったのだが・・・?

「?!」

ボブカットの美女・・・“鬼”が走り出した。 こちらに向かってくる。
あなたはトンネルの中で立ち上がった。
『ここにくるのか・・・?』
信じられないという思いがあなたの動きを重くする。

その時、トンネルの反対側ではロングヘアの美女が、ボブカットの美女が走って行く様子を歩きながら見ていた。
ボブカットの美女が、植木と花で作られたトンネルに向かって行く?

ロングヘアの美女・・・別の“鬼”も猛ダッシュでトンネルの反対側に向かう。

あなたはボブカットの美女がこちらに向かっていることに気がついた。

『認めたくないものだな・・・自分の若さゆえの過ちを・・・』

どこかのアニメで聞いたような台詞を頭の中で呟きながら、トンネルの中を反対側に走り出す。

しかし、本当の『過ち』は、その直後に気がついた。
トンネルの中を、ロングヘアの美女がこちらに走ってくる。

「わあ〜〜?!」
叫んだときには、もう手遅れだった。
彼女が手にしたカードをあなたに張ろうとしている。
あなたの視線は、一瞬そのカードに注がれた。

綺麗な黒髪をツインテールにまとめた、セーラー服の美少女。

『僕は、こんな娘になってしまうのか・・・?』

そう思った瞬間、彼女があなたのシャツの胸にカードを貼り付けた。



『ボン!』



赤い閃光が輝き、次には白や青・・・色とりどりの光の粒があなたの周りで渦巻き、トンネルの中を強い風が吹き抜ける。
「アアッ? いったいなにが?!」
風が強くて目を開けることも、まともに息をすることもできない。
あなたは手で顔を覆った。
手に感じる顔の感覚が、いつもと違う。
そこに感じるのは弓のように細い眉と、長い睫・・・ふっくらと膨らんだ唇。すっかり細くなった顔のラインと、一番違うのは肌から手のひらに伝わる“女性の肌の感触”だ。
頭がムズムズする・・・伸びていく髪が、うなじにかかり肩の下まで伸びていく。
やがて、髪はひとりでにツインテールにまとまり、カラフルなヘアバンドで結ばれた。
胸がくすぐったい・・・・そう思った瞬間、あなたの胸はムクムクと膨らみ、逆にウエストが細くなっていく。
ずれ落ちそうになるズボンは、形良く膨らんでいくヒップで支えられた。
立っているあなたの足は、自然に内股になっていた。
しかし、風と光の渦の中に立っているあなたは、自分の体の変化を確かめることもできない。
白と水色、そして紺色の光の粒が、あなたの上半身の辺りで渦を巻く。
あなたの着ていたシャツは、光の粒に飲み込まれ、あなたの美しく膨らんだ胸は、集まった水色の光に包まれ、それはブラジャーに変わっていた。
白と紺色の光の渦が上半身を包むと、それはセーラー服に変わっていた。

あなたの足元で水色と紺色の光と風が渦巻いている。
ズボンはとっくに消滅し、あなたのすっきりとした股間を水色の光が包み、ブラとおそろいのショーツに変わっていた。
紺色の光が脚から膝下にかけてと、あなたのウエスト周りに集まってくる。
ウエスト周りに集まった光は、紺色のプリーツスカートになって、渦巻く風に舞っている。
足に集まった光は、紺色のハイソックスになって、あなたの足を引き締めている。
いつの間にか、靴もローファーの革靴になっている。

渦巻く風に耐えるあなたの鼻に、甘い香りを感じた・・・いや、それはあなたの体から出ている香りだ。

『女の子の匂い・・・?』

次の瞬間、あなたの意識は途切れていた。






『次は、カトレア女子学園前・・・』
バスのアナウンスを聞いて、あなたは目を覚ました。

『僕は、公園の中で・・・』
懸命に記憶をたどろうとするあなたの視線に入ってくるのは、紺色のスカートから伸びる健康的な足。
自分の手とは思えない細く綺麗な指でスカートの上から股間に手をあてる。
やはり、普段慣れ親しんだものの感覚はない。
スカートのポケットに、学生証が入っていた。
『聖カトレア女子学園1年A組 高橋美春』
済ました顔で写真に写っている美少女・・・これが僕・・・なのか?
あわてて、脇に置いてあった学生かばんを開けて手鏡を出して自分の顔を映してみる。
そこには、学生証と同じ・・・かわいらしい女子高校生の顔が映っている。

『聖カトレア学園・・・あの純愛女子学園と並ぶお嬢様学校じゃないか・・・?』
そこの生徒になるのか・・・ボク・・・あたしが・・・?

胸を、足を、体を触るたびに男性の部分が女性の感覚に書き換えられていくあなた。



あなたはお嬢様学校に通う、セーラー服姿の女子高校生に変わってしまった。







GAME OVER







                                        <エピローグ>


















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