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あなたは売店へ向かって走り出した。
あなたが、真っ直ぐ逃げると思っていたのだろうか?
美女・・・“鬼”の対応は一瞬遅れた。
あなたとの差が広がった。
『しめた・・・』
あなたの顔に、笑顔が浮かんだ。
あなたは全速力で、売店に向かって走っている。
『あそこまでいけば、また奴から逃げられる・・・』
あなたはそう思い、必死に走っていた。
しかし・・・・あなたの視界の中で“黒い影”が動いた。
『エッ?』
一瞬、戸惑うあなた。
『まさか?!』
あなたの背筋に冷たいものが流れた。
あなたの前から、セミロングの黒髪を揺らしながら美女が走ってくる。
「しまった!!」
あなたが凍りついた表情で叫ぶ。
次の瞬間、あなたは眩い閃光に包まれていた・・・・。
「はい、次の問題は・・・・」
黒板の前で、教師は教室を見回して・・・一人の生徒を指名した・・・。
「さとみ・・・・さとみ?」
誰かがあなたの肩をつついている。
「?!」
あなたはハッとして、教室の前を見た。
教師が呆れた表情で、あなたを見つめている。
「疲れているのか? この問題を解いて」
教師がチョークで黒板をコンコンと叩く。
「はい!」
答えたあなたは、自分の体に違和感を覚えた。
自分の体を見下ろすと、
「?!」
あなたの胸を何かが締め付けている。
そして、あなたが着ているのはブルーのスカーフの付いたセーラー服だ。
足に触れているのは、濃紺のプリーツスカート・・・そして、純白のハイソックスとスニーカー・・・・パニックになったあなたは締め付けるものの正体を確かめるために胸を覗き込んだ。
膨らみ始めた“女性の胸”を、スポーツブラが包んでいる。
頭を動かすたびに、何かが揺れる。
あなたはそれを掴んだ。
細くしなやかな黒髪を、あなたはポニーテールに結んでいた。
『なぜ・・・?』
大きな瞳を見開いて、自分の体を見下ろすあなた。
「さとみ・・・どうしたの?」
あなたの後ろの席に座る女の子が、驚いた表情をあなたに向けている。
「だって僕は男なのに、こんな恰好に・・・?!」
「何を言っているのよ?!」
「居眠りをしていたからか?」
教室に笑いが起きた。
「あなたはここの生徒でしょう?」
中学一年生の女の子じゃない・・・皆の声を聞いているうちに、あなたの中で何かが変わっていく。
そうだ・・・わたしは中学一年生・・・だから体も変わっている途中だもんね・・・でも、なぜ男の子だなんて思ったのかな?・・・やっぱり居眠りをして変な夢を見たからかな・・・でも、男の人になって女の人に追いかけられるなんて変な夢だったな・・・。
「もういいかな? 早く問題を解いてくれ」
先生が苦笑しながら、あなたを見ている。
「はい!」
あなたは、すいませんでした・・・と謝ると、黒板に向かって歩いて行く。
あなたは、セーラー服姿の女子中学生になってしまった。
GAME OVER