深夜
誰もいないはずの学校で、視聴覚教室から明かりがもれている。
壁に付けられた時計の針は、午前０時を指している。
暗い部屋の中で、コンピューターのモニター画面が明るく輝いている。
その前でスーツ姿の美しい女性が、微笑みを浮かべながらマウスを操作している。
画面には、立派な校舎と広い敷地を持つ学校や、戦国時代に作られた古城。繁華街や公園と言った画像が次々現れる。
彼女は一つの画像を選ぶと、肯きながらクリックした。
顔に美しい微笑みが浮かぶ。
「さあ、ゲームを始めましょう！」
「う・・・・う〜ん・・・？」
あなたは頭を振りながら、体を起こした。
辺りを見回すと、
「・・・なんだ？！」
あなたの周りでは、イルミネーションをつけた観覧車が回り、音楽に合わせてメリーゴーランドが回っている。
そして、轟音をたてながらジェットコースターが走って行く。
そう、あなたは自分の部屋にいたはずなのに、今はなぜか遊園地にいるのだ。
着ているジャケットのポケットに手を入れると、
「・・・？」
『ドコカノランド』と書かれた遊園地の地図が出てきた。
海沿いにある遊園地・・・広い敷地と駐車場、遊園地に繋がる運河に架かった大きな橋。多くのアトラクションや芝生の広場、ＳＬまでが展示されているようだ。
ここが自分のいる場所なのだろうか？
さらに、
「なんだ・・・これは？」
あなたの腕には、四角いデジタル時計・・・いや、タイマーがつけられている。
『６０：００』
と表示されている。
ふと辺りを見ると、
「アッ？！」
５人の男達が倒れている。
あなたは駆け寄ると、
「もしもし？ 大丈夫ですか・・・しっかりして下さい！！」
５人の体を揺すったり、頬を軽く叩くと、
「う〜ん・・・」
「アレッ？！」
男たちが意識を取り戻し、頭を揺すったり、体を解しながら体を起こした。
「ここは？」
あなたより年上に見える、スーツ姿の男が言った。
「『ドコカノランド』という遊園地らしいです」
「・・・知らない場所だな？」
「僕もです・・・」
あなたは苦笑いしながら、自分の記憶をたどった。
そして・・・。
「アッ？！！」
きっかけらしい一つの出来事にたどり着いた。
「どうしました？」
スーツ姿の男が尋ねた。
あなたは自分の名前を名乗ると、
「昨日の夜に怪しいメールが来たのです。 よくある悪戯だとは思ったのですが、そのホームページを見に行って・・・・そこで記憶が途切れているのです」
よくある都市伝説だと思っていたのですが・・・どうやら本当のようですね・・・と、あなたが言うと、
「・・・僕もだよ・・・」
「俺もです」
「俺もそうです！！」
倒れていた男たちが、皆答えた。
「私は、荒川達也だ・・・あなたと同じように、あのホームページを見ていてここに連れて来られた」
「俺は、伊藤智人です」
大学生くらいに見えるダウンジャケットを着た男が言った。
「坂本修一です」
頭を短く刈り込んだ、若い男が言った。
「内籐英治と言います」
高校生くらいに見える「少年」がぺこりと頭を下げる。
「畑野淳です」
まだ３０歳にはなっていないであろう・・・若々しい男が頭を下げる。
「さて・・・本当にこの出来事が、噂の都市伝説どうりだとすると・・・」
荒川が言うと、
『フフフフフッ・・・』
どこかから女性の笑い声が聞こえてきた。
「・・・やっぱり・・・そうなのか・・・？」
あなたが呟いた。
『そう・・・・あなた達は察しが良いわね』
空から声が響く。
『これからゲームを始めるわ・・・』
そして、あなたは見た。
「あれ・・・は・・・？！」
あなたの視線の先には、銀色の金属光沢を放つ４つの箱が置かれていた。
その中には、黒いスカートスーツを着た４人の美女が、まるで眠っているような状態で入っていた。
その手前には、６色の鎖の付いたボックスが置かれている。
『これから、一人ずつ鎖を引いてもらうわ・・・６本のうち一つが『はずれの鎖』・・・はずれを引けば鬼が放出されゲームが始まるわ・・・１時間逃げ切ればあなた達の勝ち・・・鬼に捕まれば・・・あとはわかるわね・・・？』
「ああ・・・わかるよ・・・」
あなたは、“鬼”の入ったボックスを見ながら呟いた。
「逃げ切ってやるからな！！」
畑野が空に向って怒鳴った。
『さあ、誰から鎖を引くの・・・？』
空から聞こえる女性の声が言った。