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あなたは左に・・・“鬼”の右側に向かって、まるでスライディングをするように滑り込んだ。
美女・・・“鬼”の顔に微笑みが浮かぶ。
二人の距離があっという間に縮まり、その間にもあなたの腕に付けられたタイマーのカウント・ダウンが進んでいく。
あなたの体が“鬼”の右側をすり抜ける。
次の瞬間、彼女・・・“鬼”はカードを持った右手を伸ばした。
あなたは滑りながら懸命に体を捻る。
あなたの右肩に何かが触れた。 見ると、あなたの肩にカードが・・・・?
「やられた?!」
次の瞬間、赤い光があなたの体を包んでいた。
「ここは・・・?」
我に返ったあなたは、辺りを見回した。
“ドコカノランド”・・・遊園地の中を逃げ回っていたはずなのに、今あなたがいるのは、ロッカーの並んだ部屋の中だ。
どうなっているんだ・・・・あなたは戸惑っていた。
「里奈?!」
ロッカーの向こう側から、テニスウエア姿のショートカットの髪の少女があなたに声をかけた。
あなたは彼女を見ながら、
『里奈?・・・誰の事だ? 僕は男だぞ?!』
そう思ったのだが、あなたの体は別の反応をしていた。
「うん?」
あなたは彼女に向かって微笑んだ。
「高原先輩たちが来ているよ・・・早く着替えて!」
「うん♪」
ショートカットの髪の少女は、髪を揺らしながら部屋を出て行った。
彼女が出て行くと、あなたは我に返った。
ハッとして自分の体を見下ろす。
いつもと変わらない男の体・・・さっきの会話からすると、今いるのは女子更衣室なのか?
「着替えろって・・・?」
何に?・・・それに男の僕がここにいても、なぜ騒がない?・・・しかも、男に向かって“里奈”なんて・・・?!
思わず苦笑した・・・その時、
「なんだ?!」
あなたは目の前のロッカーを開けた。
そこには、女子生徒のブレザーの制服とテニスウエアがかかっている。
「何をしているんだよ?!」
あなたは自分の行動に戸惑っていた。
あなたの手は、あなたの意志とは関係なしにロッカーの中からテニスウエアを取り出した。
そして・・・。
「まさか?!」
あなたは自分の服を脱ぎ、ハンガーからアンダースコートを外すと“慣れた手つき”で履いていく。
「やめろ!!」
あなたは思わず叫んだが、あなたの手は止まらない。
あなたは上着を脱ぎ、紺色のテニスウエアを頭から被った。
ウエアから頭を出すと、ポニーテールの黒髪がゆらりと揺れる。
ウエアの袖から出た腕は、白く細い・・・そしてなめらかな肌だ。
その細くしなやかな指が、プリーツの入った白いスコートにかかった。
「それは・・・やめて?!」
自分のものとは思えない可愛らしい声で叫ぶが、動きは止まらない。
筋肉がつき脛毛の生えた“男の足”をスカートに通して行くと・・・。
「?!」
スカートを通った脚は、脛毛など一本もない白く滑らかな”女の子の足”・・・スカートを腰まで引き上げてファスナーとホックを止める。
すると、あなたの股間に合った“男性”の感覚も消え去っていた。
ロッカーについている小さな鏡を見ると、ポニーテールの髪の美少女が、大きな瞳を見開いてこちらを見ている。
自分の体を見下ろすと、紺色のテニスウエアの胸元がふんわりと膨らみ、その胸を軽く締め付ける“何か”がある。
胸元から覗き込むと、スポーツブラがあなたの胸を”サポート”していた。
突然、
「里奈?! まだなの?!!」
ロッカールームのドアが開き、さっきのショートカットの髪の少女があなたに向かって大きな声で言った。
「ごめん、今行くから!」
あなたはロッカーからラケットを取り出すと、あわてて彼女の後を追った。
テニスコートには、まるでモデルのような体形のロングヘアの美女と、ショートカットの髪の活発そうな美女が立っていた。
「高原明日香先輩と、中尾洋子先輩だよ・・・」
さっきの少女があなたの耳元で囁いた。
「うん・・・」
あなたも頷いた。
「さあ、始めましょう・・・」
高原明日香と紹介されたロングヘアの美女は、あなたを相手に指名した。
あなたはコートに入ると、
「お願いします!」
あなたは一礼し、コートに入った。
「行くわよ!」
ネットの向こうで、明日香が微笑む。
ボールを高く上げて、タイミングをはかってジャンプをする。
『ジャンプサーブ?!』
次の瞬間、ラケットがボールを打つ音と同時に、猛スピードでボールが飛んでくる。
打ち返すあなたの細い腕には、ラケットから強烈な衝撃が伝わってくる。
そして、あなたの顔には同時に微笑みが浮かんでいた・・・そう、世界レベルのテニスプレイヤーとテニスをしているという充実感が・・・。
あなたはテニスウエアに身を包んだ、女子高校生になってしまった。
GAME OVER