深く舌を絡ませ、先程とは比べものにならないくらい求め合う。オレは松山の後ろ髪を掴むと顎を上げさせ、自分でも止まらなくなっているのがわかる程松山を求めた。どちらの唾液かわからない混ざり合った音が波より大きく耳に響く。
 濡れて張り付いたTシャツの裾から背中に手を差し入れ、直接素肌に触れると抱きしめたまま首筋や肩に夢中で口付けた。松山の体はどこに口付けても海水の味がした。
 耳の中に舌を差し入れると腕の中で松山がびくりと震える。告白する愛の言葉も無く、オレは松山の息が上がるよう執拗に愛撫を続けた。

 まだ触れてもいない胸の小さな突起が、張り付いたTシャツの上からわかる程プツリと勃ち上がっていた。親指でそこをかすめると無意識に松山がオレを押し遣る。オレがTシャツの上から舐め上げると、松山はこらえきれず初めて甘い声をこぼした。
 腕を上げさせ無理矢理Tシャツを脱がせる。ずぶぬれなのはオレも同様なので、自分が脱ぐのも一苦労だった。鎖骨から胸元に唇を這わせながらヤツのジーンズに手を掛ける。硬いその素材は濡れて松山の体にまとわりつき、ファスナーを下ろすだけでその振動が松山を震えさせていた。
「松山。脱がせらんねえ、腰上げろ」
「・・・っ、自分で脱ぐ」
 そう言って背中を小屋の壁に押し付け腰をわずかに浮かせた松山は、月の光で息を飲むほど色っぽかった。オレ自身も張り付いたジーンズがキツクなり、松山が脱ぐ間ボタンを外しファスナーを下ろした。
 再び口付けながら、腰骨のラインを辿っていた手のひらをゆっくり松山自身に絡ませる。強気に誘っておきながら、ギュッと閉じられた松山の目尻から耳たぶまで真っ赤なのは暗闇の中でもはっきりとわかった。強弱をつけながら扱き始めると、肩を掴んでいた松山の両手が爪を立てる。
 オレは何度も口付けながら手を動かし続けた。面白いくらいに松山の息が上がり、額を肩口に押し付けたその下でくぐもった声が漏れる。いつのまにか背中に回されていた松山の手がオレ達をいっそう近付けた。
「日向、もういいっ」
「何が?」
「も、それ以上されたら、でちまうっ」
「いいじゃねえか。先にイけよ」
「・・・っザケンナ!!」
 オレはおぼえたてのガキのようにやめなかった。松山からこぼれる声がどんどん切なくなり、オレを夢中にさせる。
「ひゅうがっテメッやんねえんならオレがオマエをやる!!」
 松山は恐ろしいことを口走り、オレを正気に戻した。
 すっかり潤んだ目でオレを睨み付けるが、大きく上下する肩が震えている。
「んっ」
 それ以上松山が脅迫めいたことを口走らないように唇を塞ぐと、オレは後ろにずらしていった中指を思い切って差し入れた。松山が大きく仰け反る。
「イテエ?」
「いたくな・・・っけど気持ち悪いっ」
 松山はオレにしがみつくようにして異物の挿入からくる悪寒をこらえているようだった。思ったよりもかなりキツイ締め付けに、うまく中指も動かせないままオレは人差指を加えた。
「イッ・・・・・たい!!」
 背中に回された松山の指が食い込む。松山は呼吸もうまく出来ないようで、短く吐いては引き攣るように呼吸を重ねた。
「マジキツイ・・・、力抜けねえか?」
 松山はわずかに顔を横に振ると、否定の意思を伝えてきた。オレは眉根を寄せ必死に痛みをこらえる松山に差し入れた指を抜くことも出来ず、片腕で松山を抱き締め直した。
「も・・・いいからヤレ」
「バッカ、出来るわけねえだろ!!」
「どっちみちイテエんだよ!だったらヤッちまえ!」
 ヤケにも思える松山の言動だが、その目は真剣だった。
「・・・、力抜けよ」
 差し込んだ指をずるりと抜き取ると、オレは既に滴をこぼしていた自身を宛がった。そのまま一気に押し込む。
「・・・!!」
 松山が声にならない叫びを上げる。オレの名前を呼ぼうとしているようだが言葉が綴れず歯をくいしばる。オレも、余りの締め付けに最初は言葉を失った。
「松山、力抜けっ、オレのモンが使い物にならなくなるっ」
「テメエでなんとかしろ!!」
 悪態をつきながらも松山の顔は真っ青だった。先程までしたたっていた海水とは別の、痛みからくる汗が額にびっしりと浮いている。オレは、どうしていいかわからず口付けた。
「やめんなよ、ひゅうが、オレのコト気にしなくていいからっ」
 オレは少しでも松山の気をそらせようと、再び松山自身に手を絡めると今度はゆっくりと扱き始めた。
「・・・っ、・・・ん・んっ」
 松山がオレの愛撫に応え始めると、小さく腰が揺れ誘われるようにオレも松山を突き上げ始めてしまった。
 強烈な締め付けだけではなく、松山を自身で貫いているという感覚がオレをどうしようもなく昂ぶらせる。オレの腰の動きにあわせて上がる嬌声に、オレはもう自分を失くしてしまっていた。
 求めていたように求められている。これ以上のことがこの世にはあるのか!?!




 オレは、グッタリとオレの肩に肘を乗せてくる松山の顔を上げさせた。死んでしまったかと一瞬思った。
 松山はイキナリオレにキスすると、上唇に噛み付いてきた。
「松山、やっぱこんなオマエにばっか無理させんのこれからはナシな」
「ったり前だ。でも後悔はしてないからな。ビビッてオマエが途中でやめそうだったからな」
「テメエ・・・」
 オレは松山の唇に噛み付き返した。だけどオレは気付いてしまった。うつむいて視線を合わせようとしない松山に。いつも必ず視線を合わせて話をする松山が、本人知らず抱かれた後の恥じらいを見せている。

 オレはシツコイと松山に殴られるまで何度もキスをした。




 国道に戻るとガードレールがなければ絶対トラックに轢かれる、というような細い歩道を一列になって旅館に戻った。
 先をゆく松山がオレの左手を握っている。悪い気はしなかった。
 トンネルの近くで松山が突然足を止める。
「こんなふうに日本で歩くのは、もう一生ないかもな」
 そんなことをさらりと言ってのける松山にオレが言葉を失っていると松山が声を立てて笑った。
「いま手のひらがギュッてなったぜ。オレオマエのそういうところ好きだよ。一生なんてないんだぜ。でもそういうこといちいち本気にするオマエがオレは好きだ」
 何を言われているのかわからなかった。ただ、嫌いよりは好きのほうが断然いいので、オレは松山に再び歩くよう繋がれた左手で促した。
 歩き始める直前、松山はオレの頭を抱き寄せキスをした。
 ゆっくり、ゆっくりとオレ達は唇を合わせた。トンネルから出てきたトラックのヘッドライトが、昼間見た海面に反射する太陽のようだった。
 どうみてもガタイのいい男同士にしか見えないオレ達のキスシーンを見てハンドルを切り間違わないはずはないので、運転手からオレ達は見えなかったと思うことにした。
「会えるとか会えないとか考える必要ねえんだよ。本当に会いたい時は会えるんだから」
 松山は振り向かず先を歩きながらポツリと言った。

 だけどやっぱり会えないことだってあるんだぜ。
 それでも別れることは出来ない、ただそれだけが共通の事実。
 オレは繋がれていた手を振りほどくと、無理矢理松山の腰に手を回し、べたべたすんなと殴られながら旅館に戻った。








END



 

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