「んんっ・・・んぅ・」
 何かを言おうとして、松山の声が鼻を抜ける甘ったるい吐息になってしまう。抱えられる首に感じる日向の引き締まった腕に、松山はゾクリとしたものを感じていた。露天風呂を取り囲む岩場に押し付けられ、思う様貪られる。
「ふっ・・・っ・・・」
 角度を変え松山に顎を上げさせると、自然と大きく開いてしまう口を深く貪る。激しすぎるキスに、どうしていいかわからず奥へと逃げようとする松山の舌を、日向はなぶるように絡め自身の口腔へ導いた。
 触れ合う肌が心地いい。松山からは、ドクドクと高まる鼓動が伝わってくる。下半身を押し付けるように、日向が松山を抱きすくめた。
「ちょ・・・・っ・・!!」
 すでに唇を松山の耳元へ移していた日向に、松山が激しく抵抗する。
「何すんだよ!!テメッ、こんなところで正気か!!」
「んだよ、いまさっきまで大人しくキスされてたのに」
「それとこれとは違う〜〜!!んんっ・・!!」
 うるさい松山の口を、再びキスで塞ぐと日向は押さえ込んでいた腰骨から脇腹を撫で上げ始めた。湯の中で、松山の体がビクリと跳ねる。
(あ、マジ、魚みてえ・・)
 自分の手のひらの動きに合わせ、ビクビクと反応する松山の体が日向の情欲を煽り手のひらの動きを増長させた。
「やっ・・人来たら、どうすんだよ!!」
 身を捩り、恥しさに目尻に涙を滲ませ松山が日向を押し止めようとする。背中が岩肌で擦れ、小さく痛む。
「ぁっ・・・・、やめっ・・んっ・・」
 何とか流されないよう、息を詰め日向の腕を掴む。しかし不埒な動きは止められない。
 日向は首筋に軽く歯を立てるように愛撫を与えながら、手のひらは松山の弱い腰骨から背中へと何度も往復させていた。背中に回した手のひらを、徐々に下げていく。
「ちょ・・・!!やめっ日向!!」
 双丘の間を這わせていった中指を不意に奥まった秘所に押し当てられ、仰け反った松山が今迄以上に抵抗した。
「ヤダッ・・・こんな所で!!」
 構わず日向は押し当てていた中指をグッと差し入れる。悲鳴を飲み込むように、松山が息を詰めた。
「ヤ・・ダ・・っ、日向、マジでやめろっ」
 それでも、助けを求めるように縋り付く相手は目の前の男しかいなくって・・・。矛盾しながらも、松山は日向の肩に額を擦り付ける。
 掻き混ぜるように内部で指を動かされ、松山は体を震わせた。
 その時。


「誰か入ってるんじゃない?」
「男の人?」
「だって混浴じゃん」
 ひそひそと、だが弾むような女性の声が脱衣所からこぼれる。松山の血が頭から足先に落ちるのが日向にも感じられた。腕の中のその顔は真っ青だった。
「ひゅう・・っ・・」
 日向の腕に縋り付いた指先に痛いほど力が籠められる。
 しかし何を思ったのか、日向は松山の後ろ髪を掴むと激しく口付けだした。音を立て、深く貪る。
「!!」
 ドンドンと胸板を叩いて日向を押し退けようとしたが許されず、ガッシリと顎を固定され舌を絡められる。
「んんっ・・ふっ・・!!」
「きゃあ!」
 日向の背中越しに、女性が小さな悲鳴を上げ脱衣所に駆け戻る足音が聞こえた。バタバタと何か囁く声でまくしたてながら、喧騒はあっと言う間に脱衣所から去っていった。
「行ったな・・・」
 そう言うと、日向はやっとわけもわからないまま蹂躙されていた松山の唇を解放した。
「ッテッッ!!」
 バシッとイキオイよく松山が日向の顔を殴る。
「何すんだよ!!見られちゃったじゃんかよ!!」
 ぼろぼろと、大きな黒目から涙がこぼれていた。唇を拭いながら、どうしたらいいのかわからずただ動揺している。
「見られてねえよ。だから、顔は、」
 顔を寄せる日向を、松山が腕を突っ張り押し遣る。
「も、ヤダッ、何言って」
「あの位置からだとオレの背中しか見えねえだろう。カップルかなんかだと思って当分戻って来ねえよ」
 松山は、グルグル回る頭の中で遅れながら少しずつ理解し始めた。それでも恥しさにすべてを理解出来ずにいる。
「ジャマさせねえよ。せっかくこんな絶好のシチュエーションで二人っきりなんだからな」
 ムリヤリ松山に正面を向かせると、強引に口付ける。
「ひゅう・・・っ」
 続く言葉を塞ぎ、再び肌を重ねた。




「も・・・・っ、オマエ、カッテだっ・・っ・・」
 素直に日向を受け入れることは出来るはずもなく、身を捩る松山を日向は抱きすくめ肩口に愛撫をほどこしながら手のひらでも松山を求めた。
「前からだろ?オマエに求められるのを待っていたらいつまでたってもキスでオシマイだからな」
「・・・・!!」
 こうなってしまっては、何を言っても無駄なことを悔しいが松山は認め、触れてくる唇に最後の抵抗を込め噛み付いた。
「ぁ・・っ」
 松山のすんなりとした足に手のひらを這わせながら、膝を立たせるように撫で上げる。
 野性的に求め始めた日向は、止めることが出来ない。そしてまた、そんな日向に惹かれてしまうことを松山は否めなかった。弄る手の動きに二人の周りの湯が岩肌にぶつかる。遠く近く聞こえる波の音よりも耳に響く、扇情的な水音。
「ヤ・・・ッ、ダメだッ、お湯が汚れる・・っ」
 自身に絡められた指先が、拭うように先端を撫で付けた時に湯の中でありながらヌルリとした先走りを感じ、松山は日向の腕を押さえ付けた。耳たぶを口に含まれながらも、必死に身を捩る。
「ダメだってば!ひゅ・・が・・!」
「しょうがねえな・・・」
 日向は松山を岩肌に押し上げるように立たせると、ニヤリと口端を上げ松山自身を口に含んだ。
「・・・・・!!」
 日向の形よい唇に先端を含まれると濡れた赤い舌がわずかに覗く。そのままちゅっと吸い上げるように一度唇を離され、さきほど覗いた赤い舌を這わされた。その扇情的な光景に松山はドクンと心臓が大きく鳴るのを感じる。
 ガッシリと腰骨を岩肌に縫いつける手のひらの、その骨ばった長い指先に腰全体を包まれ、指先がわずかに動く度腰がわなないた。すっかり汗に濡れた日向の前髪が松山の引き締まった腹部を掠める。自身を深く咥え込み、頭を前後させる日向に松山は興奮しているのを認めた。
「ぁ・・・・、ぁっ、ぁっ、ぁっ」
 日向の肩に爪を立て、頭の動きに合わせて甘い声がこぼれてしまう。「ああっ・・んんっ・・!!」
 キツク吸い上げられ、いいように喘がされる。押さえ付けられ、何とか立ってはいたが限界だった。膝がガクガクと震えている。
「も・・・・!ダメッ、でちまう・・!!」
 無意識に日向を引き離そうとする松山に、日向は舌で先端にグリグリと強い刺激を与え、射精を促した。
「ああ!!あっあっ・・んん!!」
 一際高い声を上げ、松山は日向の口内で達してしまった。日向は咽喉を鳴らし松山の放ったモノを飲み干すと、唇で扱くように粘液を拭いながら松山自身を解放した。
 ガクリと膝の力が抜け、湯船に松山が腰を沈める。
「部屋に戻ろうぜ」
 すぐに日向が松山を抱き起こしながら言った。
「ここじゃ続きはさせてくれないだろ?」






 

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