Prologue Knight of The Solar System 「失礼します」 そう声を掛け、青年が部屋の中に入る。 中には、ヒューマノイドと思われる男がデスクワークに勤しんでいた。 「何か御用でしょうか?」 「少し待て」 男の声に青年は立ったまま、沈黙する。 右から左へ数限りないデータを処理する男。 やがて、男は一息ついたかのように、インターフェースから手を上げ、 「待たせた」 そう言って、青年に向かって一枚のバッジを投げて渡す。 「これは?」 「見ての通り。今日から君は銀河中心核執政庁東銀河第十三星系管理官だ」 「僕が………ですか?」 「執政庁に君以上の適任者はいない」 「何があったか………教えていただけますか?」 「………ユニットから異常信号受信した。それを受け調査を開始した所、時空連続体に歪みが発生していることも確認された」 「歪み………ですか?」 「そうだ。すでに自立修復の見込みはない。君の任務は歴史に介入し、時空連続体を復元させることになる」 「はい」 「この件に関して、君にはレベルAの権限が許可される。詳細に関しては後ほど秘書官から通達する。以上だ」 「………了解しました」 「下がりたまえ」 星の数ほど人がいて... 星の数ほど出会いがある... そして………別れ... 「こんにちわ」 アップになるなり、お辞儀とともに挨拶する少女。 なんとはなしに怠惰な雰囲気である。 「艦長!? どうしたんですか?? 突然!?」 少女の奇行に少年が慌てた様子で問い掛ける。 「いえ、なんでもありません」 無表情のまま答える少女。 (変ですね………視線を感じたのですが………) などと思っているのは、少年には内緒であるらしい。 その側では、長い金髪の男が送られてきたホロメールをにやけながら眺めている。 「モテモテですね〜、サブロウタさん」 「あ、見てたの〜?」 「見たくなくても見えるでしょ」 「あ、そうか」 「僕は………木連の軍人さんは真面目で勇ましい人たちばかりだと思っていました」 「あ〜あ、それはど〜も〜」 「タカスギ大尉!!」 少女の後ろで繰り広げられる、口論。 正確には、少年がサブロウタによってからかわれているだけなのだが。 それを差し挟むかのようにコミュニケのウィンドウが開き、 『前方にターミナルコロニー・タギリを確認』 その報告とともに、ナデシコBの艦橋は慌ただしくなる。 「ディストーションフィールド出力最大!」 「ルート確認。タギリ、サヨリ、タギスを通って、アマテラスへ」 「光学障壁、展開」 「各員、最終チェックよろしく」 少女の台詞とともに、次々とウィンドウが開いていく。 「通信回線、閉鎖」 「エネルギー系統、OK」 「艦内厳戒態勢、パターンB」 「フィールド出力も異常なし、その他まとめてオールオッケー」 「フェルミオン、ボソン変換順調」 「艦内、異常なし」 「レベル上昇、6………7………8………9………」 カウントアップと同時に、少女の身体を包むように光の粒が増え、 「ジャンプ」 少女の声と同時に、ナデシコBはアマテラスのポートからゆっくりと姿を現す。 『ようこそ、ターミナルコロニー・アマテラスへ』 「こちらは地球連合宇宙軍第四艦隊所属、試験戦艦ナデシコB。アマテラスの誘導をお願いします」 「これからぁ、大変だ〜ね〜」 「サブロウタさんっ!!」 おどけるサブロウタに、ツッコむ少年。 「航行システム、アマテラスにルート、車庫入れお願いします」 少女はそれを無視して、進めた直後、 【ルリ、艦内のクルーが一人増えています】 ナデシコB搭載のAI・オモイカネから、少女・ルリへの声なき言葉。 (………どこかで聞いたような話ですね) 【艦内をチェック。急いで探してください】 【………待って。侵入者からコミュニケ経由で通信が着てる】 【………通して】 ルリの命令に従い、オモイカネがウィンドウを開く。 ウィンドウの中の青年は、食堂をバックに背負って、笑顔でルリに向かって語りかけた。 『ルリちゃん。久しぶり』 「………記憶喪失にはならなかったんですか? カイトさん」 『ははは、相変わらずキツイね』 (………相変わらずってどういう意味なんでしょうか? 後で詳しく聞く必要がありそうですね) 「か、艦長?! お知りあいですか??」 少年が問い掛けるが、サブロウタがウィンドウに割って入り、有耶無耶にすると、 「よお、カイト。久しぶりじゃないか」 サブロウタの声にカイトはしばし考え込むように首をひねり、 『えっと………どこでお会いしたんでしたっけ?』 「俺だよ俺。サブロウタだよ」 「サブロウタさんっ! 邪魔しないでください!」 少年がサブロウタに食って掛かる。 それを聞いたカイトは、 『え? サブロウタさん?? 誰の味方かと聞かれたら、『正義の味方』とほざいた、あのサブロウタさんですか??』 「………なんか、悪意を感じるんだが、気のせいか?」 『はは、やだな。気のせいですよ』 「とりあえず、カイトさん。ブリッジまで来てもらえますか? 一応、密航者ですから」 『へ? ちょ、ちょっとルリちゃん??』 「サブロウタさん、密航者を連行してきてください」 『る、ルリちゃん? なんで怒ってるの??』 慌てるカイトを横目に、ルリはサブロウタをちらりと見て、 「タカスギ大尉、早くしてください」 「は、はい!!」 こちらも慌てて、ブリッジを出て行く。 (わたしはキツクはありませんからね、カイトさん) おどおどし始めたカイトを見て、ルリはくすりと笑った。 |
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作者 :初ナデシコです。ども。 ルリ :劇場版ですか。 作者 :そ。とりあえず、なぜか劇場版では抹消されたカイト君が主人公です。 ルリ :まあ、ゲームでしたから、仕方ないんじゃないですか? 作者 :でも、その割には、TV版ナデシコで残った謎の解明とかやってたからねぇ。 :ま、劇場版にカイトがいたら、こんな感じって話です。 ルリ :カイトさんの設定はどうなってるんですか? 作者 :もちろん、異星人(古代火星人)のメッセンジャーって形の奴。 ルリ :まにあっく、ですね。 作者 :そうかな? あれが一番ネタになりそうだったんだけど。 カイト:それで、ユリカさんの扱いはどうなるんですか? 作者 :あんまりよくはないね。劇場版だし。 :それに、私はプロスさんファンだし。 ルリ :まにあっく、ですね。 作者 :別にイネスさんファンでもいいけど? ルリ :まにあっく、ですよ。 作者 :ルリちゃんファンでもあるよ。 ルリ :正統派ですね(きっぱり) 作者 :あのカエルとネコの姿で笑った。 :そこまでやるか、開発スタッフ!! とも思った。 ルリ :………変態ですか? 作者 :笑えるのが好きなんだよ。 カイト:ところで、これってあらすじは出来てるんですか? 作者 :出来てるよ、劇場版は。 ルリ :劇場版「は」? 作者 :………(汗) ルリ :カイトさん、作者さんを捕まえてください、何か隠してます。 カイト:え? 僕? ルリ :あなたがやらなくて誰がやるんですか? :わたしは力仕事には向かないんです。 カイト:って、ルリちゃん。そんなこと言ってる間に逃げたみたいだよ。 ルリ :………まあいいです。次がありますから。 はぁはぁはぁ………ども、Phosphorです。 無事、逃げ切れたようです。 これもひとえに皆さんの応援のお陰でしょう。 一応、カイトに関しての補足説明ですけど、カイトの苗字はミスマル。これはナデシコ長屋を出た後、ミスマル家にお世話になったときに、コウイチロウ氏から貰ったものです。 つまり、その後のなし崩し的に、アキトのボロアパートに転がり込んで、しばらく生活していたりします。 で、その後、火星の極冠遺跡でプレートの謎を解明して、異星人と一緒にボソンジャンプって感じです。 というわけでそろそろ……… アキト:おい、ルリちゃんが近付いてきているぞ。 作者 :ちっ、もうここをかぎ付けたか。 アキト:俺はもう行く………ジャンプ。 作者 :………私も連れてってくれてもいいだろうに………。 ってなわけで、次回『Prince of Darkness』でお会いしましょう。 |