名前






身体が快感を求めてる。
どうしようもなく震える身体を抱き寄せる手。
縋り付いて、抱きしめて、更なる快楽の深みへと懇願するこの身体。
与えられる刺激に目眩がする。
身体の奥に埋め込まれた熱が新一を否応なく翻弄する。
思うまま上がる嬌声に、相手の熱が更に増したのを身体が感じた。

「くっ……くろばっ!」

「何?新一」
切れ切れの声とは反対に、冷静な響きが新一の耳元で囁く。
「……やぁ……はぁ」
「何?ちゃんと言わないと判らないぜ?」
言葉にならない新一の言葉にそう応えると、ぐっと身体押し進めた。

「──────!」

言葉にならない嬌声が喉元から溢れ出す。






「……やっぱ、アレだな」
激流のような快感が去った後、ベッドの上でだらしなく寝そべっていた新一の背に、快斗が声を投げかける。
「………何?」
いつもとは全く異なる掠れた声。

「興ざめするよな。────ヤッてる最中にオレ以外の名前呼ばれると、さ」
快斗はそう言うと、新一のその滑らかな背中をつっ…と撫でた。

しかし、新一にはその記憶はない。

「……オレそんな事言ってない」
「嘘じゃねーよ。他のヤツの名前呼んでた」
ま、覚えていないのも無理ねーけどな。
快斗はどうでも良いと言うかのように呟く。

好きとか嫌いとか、そんな感情で付き合っている訳ではなかった。
お互いに、ただ何となく肌を触れ合わせているだけ。それ以上でもそれ以下でもない関係。
当たり障りのない相手との、一時の遊び。


「でもまぁ、出来るならあんまり言って欲しくねーな。萎えるし」
やっぱり、ヤッている最中は集中したいし。
そう言って自嘲めいた笑いを浮かべる快斗に、新一の眉が僅かに寄った。


「……なぁ」
「何だ?」
「……で、誰の名前呼んでたんだ?オレ」
「さぁ」
「さぁ……って」
顔を上げる新一に、思っていたよりも真剣な瞳をした快斗の視線がぶつかった。

「教えない」

お前の、本当に好きな奴の名なんじゃねーの?
そう問いかけてくる。
「好きなヤツなんて、いねーよ」
居たら、お前となんか寝ない。
こんなコト、しない。

「ふぅん……」
じゃあ、一体誰の名前呼んだんだろーな。

「だから、呼んでねーって」
「……ムキになる所がアヤシイ」
「快斗!」


「そう、それ」
「何?」
「だから『快斗』って」

快斗はにやりと笑った。


本当は誰の名前も呼んでいない。快斗の名前さえも。
だから。


「今度からは、オレのコト快斗って呼べよ」






END






NOVEL

2001.09.24
Open secret/written by emi

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