毎日でも足りない

定時は少し過ぎたけれど、いつもより早い時間で仕事を終えた
スタンのフラットへ2人で帰る(俺は帰る、ではないのだろうが)
夕飯を食べるよりスタンにとっては俺の補充の方が優先だったらしくて
玄関口で口付けされて、そのままなし崩しになってしまいそうだったのだけれど
流石に、ここだと外に漏れそうだし…
「ベット、行こう。スタン」
「ん。ごめん。ライ」
抱かれることに、抵抗が無い訳じゃない
同性の俺達の行為は、種族として何も生み出さない
「ん…」
制服を脱がされて、首筋から口付けを落とされる
スタンは俺の弱い所…知っていて、そこに触れて、撫でて…
「っぁ……ぃや…」
何も生み出さないのは…判ってる
「気持ちいい…?ライ」
でも、俺を抱いている時のスタンはどんな時よりも幸せそうだ
「ん…。いい、よ」
だから、俺でいいのなら抱かれるのは構わない
「今日は、素直だね?」
「い、嫌なら…言わない」
「嬉しいよ」
優しいけれど、全てを飲み込んでしまうように激しい口付け
スタンが俺を欲しいと思ってくれていると、判る
「んんっ…は…ぅ…」
「声、押さえないで聞かせて。ライ」
「いや、だ…」
「どうして?」
「俺の、声じゃ…ない…」
「私しか知らない、ライの声だよ?」
嬉しそうに、笑う
「お前しか、知らなくていいよ…」
「うん。誰にも聞かせないで。私だけのものでいて?ライ」
答える代わりに、俺は自分から口付ける
そう。理性では…判っている
だけど、スタンだけじゃない。俺自身がこうしていて…幸せだと、思うから
俺が俺でいて構わないと。弱い俺でもいいと…
俺自身を求められて、それを幸せだと思わない筈がない
それが俺が好きだと感じる相手なら尚更
「ん…っ」
指で、舌で解されていても、受け入れるときはいつも力が入る
「ごめん、ライ。痛い?」
いつも、心配そうに聞いてくれる
「平気。好きに、動いて…いいから」
受け入れる場所じゃないから、痛くない訳じゃないけれどスタンが良いなら、それでいい
「私だけ、良くても嬉しくないよ?ライ」
少し、拗ねたような声
俺が少しだけ抵抗があるように、スタンだって不安なのだと思い出す
抱かれているから、伝わる訳じゃない
俺が流されてこうしているんじゃないってこと…
「俺のことは、スタンが…気持ちよく、して…くれるだろう?」
言ってしまってから。少し、いや…かなり後悔する。恥ずかしい科白だ
「…うん。これ以上ない位に、するから」
スタンが、幸せそうに笑ってくれる
恥ずかしいと思う科白も、普段は言えない言葉も、その笑顔のためなら…
スタンが嬉しいと思ってくれるなら、いいかなと…思う
ただ、そう思えたのはその瞬間までで
「ぁっ!んんっ、スタ…、ンっ」
激しく突かれて、弱い所を攻められる
その後は言われるがままに動かされて、今までにないくらい奥まで感じて
散々色々言わされて……スタン、結構意地悪だろう…
思い出すと、本当に…顔から火が出そうなことを…言ったと思う
嫌じゃないが…今言えといわれたら、無理…だ
でも、するのが嫌な訳じゃないし、寧ろ気持ちいい…のは事実だ
それは相手がスタンだからで、俺がスタンを好きだからで…
仕事に支障が出るのは困るけどこうして二人でいられることは嬉しい
いつも冷静なスタンが、俺にだけ見せてくれる顔が嬉しい
官位が上がれば、一緒にはまたいられなくなるんだろうけれど
それまでには不安に思う気持ちを、消せたらと思う
どうやって判ってもらおう?
俺だってスタンが欲しいんだと
毎日こうしているのでも、足りないと思うくらい…好きなんだと
独り占めしておきたいと思ってるのは俺の方…
スタンに好かれるようなところ、俺にあるなんて思えない
外見だって俺は極普通だ(一応、均整は取れてる方だとは思うが…)
筋肉がつきにくい体質だからか、結構身体つきは貧弱だ(軍人、というレベルでだけれど)
性格だって本当は、子供っぽい。我侭だし、自信なんて本当はないし
好きだという気持ち以外、俺には何もない
だから、俺の方がきっと本当は…
こうしていられる毎日が、この上なく幸せで大切で
「ライ、眠れない?」
「え?いや…そんなことは、ないけど」
「そう?」
またそういう、誘う目をする
「明日は休みだから、いいよ?」
「これ以上したら明日1日ベットから出れないと思うけど」
「いいよ。俺も、したい」
こうしていられるうちに、たくさんしよう?
少しぐらい離れていても平気になるくらい

2010/12/15

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