毎日でも足りない

夢のような休暇が終わって、私とライはHEAVENへ戻ってきた
あれが、夢じゃないことは夜毎に確かめているけど、それでも
手が届く側にいるライに、触れたくて仕方のない私がいる…
「中佐?手が止まっていますよ」
ちらりと、視線を私の方へ向けて。そして苦笑ぎみに笑う
それだけでも私の鼓動は早くなる
「すみません。昼までに提出でしたね」
「紅茶を入れてきます。少し休憩されませんか?」
明らかにいつもよりは仕事のペースが落ちているのに気づいているのだろう
「すみません。お願いします」
(私はどれだけライに対して、貪欲なんだろうな…)
休暇の間はずっと。朝も昼も夜もなく
触れて、キスをして。抱きしめて、一緒に昇り詰めて…
自分でも呆れるくらいにして
帰ってきてからだって、毎晩確かめるように抱いて
「どうぞ?」
ティーカップが机に置かれる。良い香りで綺麗な琥珀色。ライの瞳と一緒
「あ。うん。ありがとう」
笑顔で言うと、ライも微笑んでくれる
本当の、君の笑顔―――――
「キスしたい」
小さく呟いた
真面目な君が、午前中にしかも仕事中に聞いてくれるとは思わないけど
「!何、言って・・・」
めったに見れない、ライの慌てる顔
「毎日補給してるのに、それでも足りない」
「スタン」
毎日ライと一緒に仕事をして、夜も一緒にいられて
不満は勿論ないし、幸せだと思うのに
私はどんどん欲張りになっているようだ
「俺じゃ、足りない?」
「ライじゃなきゃ、満たされない」
隣に立って、困ったように言うライの手を取る
立ち上がって、デスクの上にライを押し倒す
「スタ…」
最後まで言わせずに唇を塞ぐ
息を継いで角度を変えてまた塞いで、その繰り返し
「…んっ…」
どちらのものともない唾液を飲み込んで、咥内を味わいつくして
「駄目、だ。スタン」
制服の前を開けようとした手を止められる
「…ごめん…」
仕事中、だっていうのに。何をしようとしているんだろう私は
「したくない訳じゃないけど」
え…?
「勤務中は、駄目だ」
照れたように、目を瞑ってライが言う
「じゃあ、帰ったらいい?」
「き、聞かなくても。毎日…してるだろ」
「私が一方的なのかなって、思ってたから」
ぱっと、ライが驚いたような顔をして目を開いた
「何、言ってるんだ…馬鹿。俺がいいって、言ったんだろ。あの日」
「それでも、不安になるよ?」
思わず、口をついて出た本音―――
ライが起き上がって机に座る形になって、私をいつもと違う高さから見下ろす
「今日は特別だからな?」
そう言って、ライから私にキスをしてくれる
「スタンが好きだ。一緒にいられる、今が嬉しい」
「うん」
私の首に手を回して、肩に頭を預けて
きっと、今顔が真っ赤なんだろうなライ
「特別って…?」
「仕事中は駄目だって言ったろう。だから今日は特別」
「もう少しだけ、甘えていい?ライ」
「…うん?」
私の肩から頭を上げたライの制服の襟を開く
「ライ、中もきっちりなんだね」
「スタン、特別って言っても…」
ワイシャツのボタンをひとつ、ふたつ、みっつ
「ひとつだけ」
「……仕方ないな」
ライは困ったように笑ったけど、許してくれた
「…んっ」
襟を開いて、鎖骨の上に痕をつける
「ごめん、我侭で」
「いいけど、仕事だけはしてくれよ?」
「わかってるよ。早く帰りたいし」
「動機が不純だけど…まあ、いいか」
机から降りてワイシャツと制服の襟を正す
「十分な動機だと思うよ?」
「お手柔らかに、な?」
「余り自信はない、かな」
今度は私が苦笑する番だ
「そこまで正直に答えてくれなくても…いいんだけど」
「嘘は言えないよ。実際…」
と、来訪者を告げるコール音が鳴った
「お客様ですね。中佐」
すっかり仕事モード
「どなたか確認してから入出許可を」
まずは仕事を終わらないと。早く終わらせて帰ればいいだけだ
そうしたら、2人でいられるんだから
「グラント閣下です」
「わかりました。コーヒーをお入れしてくれますか?」
「了解しました」
答えと共に扉が開く
「朝からすまないな。ヴェス」
「いえ。ご用件はなんとなくわかります」
「それなら話は早い。遠征の航路だ」
「何パターンか候補はあげてあります。お待ちください」
私は閣下に椅子を勧めてからデータをスクリーンへ映す準備をする
「失礼します」
「ああ、ありがとう」
ライがコーヒーを閣下に出している間にデータを探し出してスクリーンへ映す
それから閣下に呼び出しがかかるまで30分ほど打ち合わせをした
「纏めたら私の方に報告を出してくれ」
「了解しました」
「ではな」
ライと2人で敬礼をして見送る
「午前中の報告、だった筈なんだけど」
「終わってると予測していたんだな」
2人で顔を見合わせて苦笑するしかない
「気を抜けない、ってことだね」
「そういうことです。定時までしっかり仕事をしてください中佐殿?」
「わかりましたよ。大尉」
しっかりと釘を刺されてしまった

2010/11/29

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