「それだけでいいのか?」 エドウィンが注文したのはご飯ものと魚料理と温野菜だった。 「はい。…本当は、これでも多いくらいです」 「だからそんなに細いんだなお前」 「!…すみません」 悔しそうに睨みつけてるが…。 上目遣いなところは、可愛いもんだとしか言えないが…黙っておくか。 「あの、別にお酒・・・飲んでも」 「毎日飲むと言う訳でもない。気にするな」 「はい」 「それより、どうだ?配属されてからは」 訓練と雑用しかないんだがな。 しかも、俺を手伝う嵌めになっているから、雑用は人一倍多い。 「先輩方は皆さん強いので、勉強になります」 「お前のはかなり、出来上がってると思うがな?」 「形は、そうかもしれませんけれど…やっぱりいろいろな武器やタイプを相手にするのは違います」 貴族のみで形成されている第一とは違って、第二は混合だ。 貴族らしい正攻法な剣の者も居れば、型に嵌らない者も居る。 実践では後者の方が多いと言えるから、確かに実践向きの訓練とも言える。 「小隊長は、二刀流ですよね」 「ああ。多くはないが珍しくもないだろう」 「でも、武器を選ばず使うのは小隊長ぐらいだとお聞きしました」 「基本的には決まっているがな」 ディアス隊長だな。あの人と居る間に、色々なものを使わされたからな… 「それでも、凄いです。武器は特定してしまう方が多いですし」 「お前のも随分、珍しいと思うぞ?」 「う…」 「なんだ?珍しいと言われるのは嫌か?」 「いえ。やっぱり無理に見えるのかなと…」 表情がころころと変わるな。人当たりはいい、と言っていたのはこういうことか? 「無理ではないが、よくあれを振り回せるな?」 「見た目よりは多分、力があると思います」 「その割りに色は細い、と」 「う…。燃費、いいんです。多分」 顔が赤くなっている。からかいがあるな。 一見、綺麗だから冷たそうなのかという印象もあるんだが… そんなことはないな。寧ろ感情が顔に出やすいタイプだ。 「そういうことにしておこう。無理して食べることはないが、食べれるときは食べておけよ」 「はい」 料理が丁度運ばれてきた。俺の方は肉がメインだが… 「一口食うか?」 「え?」 「全部は食えないが、食べれない訳ではないだろう?」 「あ、はい」 「皿、よこせ」 「でも、小隊長の分が」 「足りなければ頼むからいい。それと、名前でいい」 「え?」 「肩書きで呼ばれるのは余り好きじゃないんでな」 「で、でも…」 「いいから、呼べ」 「え、えーと…」 「俺の名前を知らないとか、言わないよな?」 「し、知ってます。えと…ヒューイ、小隊長」 「肩書きが付いてるが?」 「ええと、その…」 少し眉をひそめて、困っている顔も可愛いものだな 「直ぐにとは言わないでおく」 余り困らせても可哀相かと思って、先送りにしてやる。 ほっとした顔をした。それは、そうか。 「ほら、食べろ」 取り分けた皿を手渡す。 「すみません、ありがとうございます」 礼を言いながら、綺麗な笑顔になる。 子供なのか、大人なのかわからないな。こいつは。 それからも俺は時々、仕事帰りに飯に誘った。 その度に、エドウィンの表情は明るくなっていった。 本来はこうして、感情がはっきり出る子なんだなと判ってきた。 それは勿論、俺だけにではなく小隊の中にもだったが。 共に戦う仲間だ。打ち解けておく方がいい。 だが、もう1つの問題をすっかり忘れていた。 実技も雑務も、期待以上だったし、こうして雑談するときも普通だったからだ。 普通、と言っても確かに時々出る笑顔は人懐っこい以上だったが、俺の方が気にかけなければすむことだったからだ。 2010/10/31
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