いつか見た君に         

                      〜picture of heart〜



 驚愕の事実。紅茶をいれるならティーポットで。いや、そんなことはどうでもいいんだ。早香、梓川さん、僕の3人で草神までいっしょに行くだけだったはずなのに、なんと梓川さんと二人っきりで買い物して回ることになってしまった……まあ、さほど困ることはないんだけど……どうも引っかかるんだよなあ、早香の言いかけたセリフが。

 第13話・休日の午後をご一緒に

「多分、恭ちゃんはあんたのこと……」
 一体なんなんだろうか。うーん。
 日曜昼間なのに、なぜか座席は空いていなかった。つり革につかまりながら、流れていく景色をぼんやりと眺めていた。
「水瀬さん」
「え?」
 ふと気付けば、梓川さんが僕の顔を覗き込んでいる。
「どうかしたんですか?」
「あ、ううん。なんでもない……そういえば、何を買いにいくの? 早香は文化祭で使う物資とか言ってたけど」
 そういえば、買ったものはどこに置いておくんだろうか。梓川さんが預かるんだろうけど、あんまり大きいものだと無理だろうし。
「えっと、とりあえず足りなくなった画用紙と絵の具の注文だけなんですけどね。それで、その他にいろいろ見て回るつもりだったんですけど……」
 早香がいなくなってしまったと。
 ちょっと残念そうな顔をする梓川さん。
 まったく早香め、何を考えてるんだ。
「梓川さん、よかったら一緒についていってもいいかな?」
 せっかくの草神、ティーポットを買いに行くだけだなんてもったいない。
「えっ……あ、はい。でも、いいんですか?」
「一人だと寂しいから。あ、でも梓川さんがダメならいいんだけど」
「そっ、そんなことありません! わ、私も同じこと思っていました……から……」
 奇遇だなあ。それならよかった。
「じゃあ、一緒に回ろう。早香と同じようにってわけにはいかないだろうけど」
「……あ……はい」
 おや? 梓川さん、うつむいちゃったぞ。
「梓川さん?」
 さっきとは逆に、僕が梓川さんの顔を覗きこむ。
「え……きゃっ!」
 目が合った瞬間、ものすごく驚く梓川さん。
「ど、どうしたの……?」
「あ、い、いえ……」
 ……なんか様子が変じゃないか?
 もしかして、あの早香のセリフ……
「多分、恭ちゃんはあんたのこと……」
 苦手だって言いたかったんだろうか。今回のこれは荒療治ってやつ?
 ……そんなわけない。と思いたいけど。
「草神ー、草神ー、お降りのお客様は……」
 そんな妙な空気を引きずったまま、電車はあっという間に草神へと到着してしまった。
 うーん、どうしたもんか。
 とりあえず改札を出るものの、さっきから梓川さんは一言もしゃべってくれない。
 こ、困った……
「梓川さん、ちょっとお茶でも飲んでいかない?」
 このままではどうしようもないと思い、なんとなく目についた喫茶店に誘ってみる。
「えっ……はい」
 と微妙ながらあっさりOK。
 ……ちょっと思ったけど、これってデートみたいだな。
  カランカラン……
「いらっしゃいませ」
 草神駅ビルの中にある喫茶店。何度か見たことはあったけど、実際に入るのは初めてだ。
 向かい合わせの席へと案内された僕たち。窓が大きくて明るい店内には、いかにもなカップルと家族連れがそれぞれ1組。お昼時とおやつ時のちょうど真ん中あたりだからか、店内は閑散としている。
「ご注文はお決まりでしょうか」
 伝票片手に店員さんが現れた。
 窓から見えるビルの電光掲示板に、29度の表示。暑いわけだ。
「僕はアイスティー」
「えっと……私もそれで」
「かしこまりました」
 店員さんが去ったあとも、なんとなく妙な雰囲気。
 やっぱりこのままじゃいけないだろう。
「……梓川さん」
「は、はいっ」
 どうしたんだろ? これじゃあ、はじめの頃の人見知りじゃないか。
「どうしたの? もしかして、誘ったりしてまずかった?」
「えっ!? いえ、そんなことないですよ。ただ……」
 ただ?
「その、ちょっと緊張しちゃって……」
「緊張? どうして?」
「あ、あの……これって、デ、デートみたい……って思って……」
 そう言って、またうつむいてしまう梓川さん。
 そんなこと言われたら、こっちまで緊張してしまう。
「その……男の人と二人っきりなんて、今までほとんどなかったんです……」
 なるほど。要は慣れてないだけ……なのかな?
「だから、何をお話すればいいのか、よくわからなくて……」
「別に気にしなくても。いつも通り話そうよ。僕も梓川さんに聞きたいこととかあるし」
 って、そう簡単にうまくいけば何の苦労もないんだけど。こっちからどんどん話し掛けていこう。でも、早香、陽一郎と一緒にいるとき、あの二人で話してること多いから、必然的に梓川さんと話していたりするから大丈夫なんじゃないかな。
「お待たせしました」
 テーブルに置かれた2杯のアイスティー。
「そういえば梓川さんって、紅茶とか好きなんだよね」
「えっ、はい。お母さんが昔からそういうの好きで……今でもたまに、一緒にお菓子作りするときもあるんですよ」
 へえ。いいお母さんじゃないか。
 うちなんかずっとほったらかしで……若葉がかわいそうだ。
「……そこから海外の通販にも手を出しちゃって、今は『自分でお茶を育てる』なんて言い出してて困ってるんです……うち、マンションなのに……」
 ……それはちょっと無茶だな。
「よっぽど好きなんだね……でも栽培は難しそう」
 お、とっておきのことがあったじゃないか。
「実はうちの両親、貿易関係の仕事なんだ。だから紅茶も色々と種類があったような……」
 他にも謎の置物やいろんな国の微妙な名産品があるが、若葉で管理しきれないほどたくさんある。家の玄関左の部屋は、今やワンダーランドとなっている。
「へえ……そうなんですか。お母さん喜びそう」
「今度家に来たとき色々持って帰ってみたら?」
 というか、ぜひともお願いしたいくらいだ。
「え、でも悪いですよ、せっかくのお土産……」
「あー、いいのいいの。うちの両親、僕らのためにお土産買ってるんじゃなくて、お土産買うのが趣味だから」
 3年前に本人たちが言っていたのだから間違いはない。
「じゃあ、若葉に言って探しておいてもらうよ。紅茶各種」
「……すみません、なんだかお母さんの道楽に付き合わせちゃったみたいで」
 どんどん恐縮する梓川さん。
「いいっていいって……梓川さんって、3人家族だっけ?」
 前にも聞いたことがあるような気がするけど……
「あ、はい。今はお母さんとお父さんと私の3人で……本当は妹か弟が欲しかったんですけど……」
 どんな家族なんだろうか。
「お仕事とか、なにしてるの?」
「えっと、お父さんは会社員で、お母さんは普通の専業主婦で……ごくごく普通なんですよ、うちって」
 うーん、うちは普通とは言い切れないなあ。
「じゃあ、早香のとこの家族知ってる?」
「はい、何度か遊びにいってますから。今はさやちゃんとご両親の3人暮らし。それで、お兄さんが二人関西の方へ進学でしたよね?」
 おおっ、完璧。
「あそこのお父さんってほんわかしてていい人だよね」
「そうですね。お母さんは対照的に元気が良くて、いかにも『さやちゃんのお母さん』って感じですよね」
「あはは、それ言えてる」
 ……とまあ、なんだかよく分からないはじめの方の雰囲気はどこへやら。
 結局のところ会話が軌道に乗ってしまえばなんてことはなかったかな。
 アイスティーのグラスが空っぽになってもなお、僕らは色々なことを話していた。
 早香と陽一郎のこと、この前の東依戸中学校文化祭のこと、そして自分たちの文化祭のこと……クラスが違うからお互いのクラスメイトについてなんかも話したり。
 一時間はゆっくりとしゃべっていただろうか。
「……そろそろ出ようか」
 正直、アイスティーと冷房がじわじわ体にしみこんできている。非常に体に悪そうだ。
「あ、はい。そうですね」
 ふと見れば、入るときにいたカップルもお勘定のようだ。
「まったく、こんなに食いやがって……奢るほうの身にもなってくれよ」
「ああは、ごめーん……ほんと、ごちそうさまですっ」
 なんだかんだとじゃれあいながら、会計を済ませて店を出るカップル。
 もしかして……僕も奢りにするべきなんだろうか?
「アイスティーがお二つで、560円になります」
 あ、メニューの価格は税込みだったのか。
 とりあえず1000円札を差し出す僕。
 ……どうしよう。
 チラッと梓川さんを見ると、財布の準備をしていたみたいだ。
 目が合って、お互いに困り果てる。
「えっと……お会計はご一緒でよろしいでしょうか?」
 そんな僕らの様子を見て、レジの人も戸惑っている。
「あ、はい、大丈夫ですっ! 一緒でお願いしますっ」
 とりあえず今は支払ってしまおう。恥かしすぎる。
 とまあ、焦り焦りで代金を支払って店の外に出てきた僕たち。
 ……ど、どうしよう。
「「あのっ」」
 話を切り出すタイミング、ばっちり一緒。
 前にもこんなことがあったような気がするけど……
「え、えっと、その……」
 まさか面と向かって「お金払って」って言うわけにもいかないしなあ。
「あの、水瀬さん、紅茶の代金……」
 うーん、ここは男としてはおごりっていう線が一番いいんだろうか。
「ああ、大丈夫だよ。気にしないで」
「ええっ、で、でもそれじゃあ悪いです……」
 とはいえ梓川さんの性格からして、この後どんどん恐縮していって、お買い物の雰囲気が悪くならないか?
「私が飲んだ紅茶なのに、水瀬さんが払うなんておかしいです。あの……払わせてください」
 お。梓川さんにしては珍しく、力のこもった口調だ。
 ……いい子だなあ、梓川さんは。
 まず早香ならおごりで終ってるだろうな。
「あ、じゃあ……えっと、280円だっけ」
「はい……あ、お釣りありますか?」
 とまあ、なんだかんだで遅くなってしまったけど、これから本来の目的であるお買い物だ。すっかり忘れてたけど、ティーポットを買うんだよなあ。
 ああ、その前に若葉に連絡入れないと。
「梓川さん、ちょっと家に電話してきてもいいかな?」
「あ、はい。あそこに公衆電話ありますよ」
 見ると、緑色の受話器のマーク。さすがは草神駅。大きいだけの事はある。
 受話器を取ってテレカを入れる。
 んで、うちの電話番号を……っと。
  トゥルルル、トゥルルル……
「はい、水瀬です」
 若葉だ。
「あ、若葉か。実は……」
 とりあえずカードの度数がもったいないので要点だけ話す。
「へーえ……うん、そういうことならいいよ。買ってくるのも任せるよ」
「わかった。じゃあな」
「うん。お願いね」
 ……物分かりのいい妹でよかった。
「若葉ちゃんはいいって言ってましたか?」
「うん、ばっちり。あと、どんなの買うかも任せるって言ってたから、梓川さんに美味しい紅茶が飲めるポット選んでもらおうかな」
 見た目とかで僕が選ぶより、実用性の点で梓川さんに選んでもらった方がいいに決まってる。
「わかりました。そういうことなら任せてください。ふふっ」
 うーん、いつもより梓川さんが頼もしく見える。
「じゃあ、早速行こうか」
「はいっ」
 って、どこに行けばいいんだ?
 草神駅周辺にはデパートがいくつかあるけど……
「えっと、梓川さんはどの店に行ったらいいと思う?」
「えっ、あ、そうですね、草神はお店多いですもんね。じゃあ、私のよく行く食器屋さんに行きましょうか」
 そう言って歩いていく梓川さんについていくこと約10分。
「ここです」
 大通りから少し入ったところにある、小さなお店。そこが梓川さん御用達のところらしい。
「このお店、アンティークショップって言うんでしょうか、とにかくいい品が安く手に入るんです。お母さんとたまに来るんですけど」
 へえ、確かに独特の雰囲気というか、そういうのが感じられるな。
  カランカラン……
 どうでもいいけど、どうしてカウベルをドアにつけるんだろ……牛さんもびっくりだ。
 外から見た感じよりもやや広いような印象を受ける店内は、梓川さんの言うとおり、食器とか大き目の家具とか、微妙な絵画なんかも置いてある、いかにも骨董やな雰囲気だ。
 ……値段の方は大丈夫なんだろうか。
 安く手に入るとは言われても、骨董品の相場から考えると安いとか、別のところではン十万のところが、ここではン万だとか、そういうレベルじゃないだろうな……
「水瀬さん? どうしたんですか?」
「あ、いや、なんでも……」
「そうですか? こっちですよ、ティーポット」
「あ、うん」
 とりあえず、ざっと商品を見てみたけど……
 ……値札が、ない。
 ど、どうしよう……
「これなんか良さそうですね……」
 うわ、梓川さん、それはなんか高そうなんですけど……
「水瀬さん、どう思いますか?」
「えっ……」
 高そうとかそういうことは言っちゃいけないよなあ。
「うーん、具体的にどういうのが美味しい紅茶をいれれるポットなの?」
「えっとですね、ここにあるものの内部構造は大体似たような感じなんです。あとは、水瀬さんが『これは美味しいのがいれれそうだ』って思うのが一番いいと思いますよ。道具だってそう思われたら、答えてくれるものなんです」
 ……な、なんかすごい。
 でも梓川さんに言われると、本当にそんな気もするな。
「じゃあ、若葉を連れてくればよかったなあ」
「ふふっ、そうですね……水瀬さんの責任は重大です」
 それからしばらく、あーだこーだといいながら20個近くのポットを眺めてみたりした。
 そのうちの1つで、少し気になるものを見つけた……
「ん……」
 それはクリーム色のポットで、特に奇抜なデザインでもなく、どちらかというと地味な方なんだけど、どこか何かが違うような……
 はっ、これが運命の出会い……なんてね。
「どうかしたんですか、それ?」
 ポットを手にとってまじまじと見つめる僕に、梓川さんが尋ねる。
「あ、いや、なんとなくいいかなって……」
 例の気になるポットを梓川さんに見せてみる。
「へぇ……ちょっと貸してください」
「うん、はい……」
 言って手渡す瞬間、少しだけ手先が触れた。
「あっ……」
 少しだけ赤くなる梓川さん。僕もなんかどきどきする……
 落着け落着け。別に初めてでもないだろう。うん、そうだ。この前家で……
 そこまで思い出して、この前の感触と、さっきの感触がダブって思い出され、ますます恥しくなる。
 う、よく見たら梓川さんもなんか固まってるじゃないか。
 いかんいかん。ここは勤めて冷静に……
「あ、梓川さん、どうかな、それ……」
「えっ、あ、えーっと、うーんっと……」
 はっとしたように品定めをはじめる梓川さん。
 そうやっているうちに少しずつ冷静になってきたのか、危なげだった挙動も落着いてきた。
「そうですね、特に悪くはないと思いますよ……あ、でもふたの所がちょっと欠けてますね」
 あ、本当だ。気付かなかった……
「どうしますか? このくらいなら全く問題ないですけど」
 いや、この欠けてるのが逆にいいんだよ……とか、通な気分になってみる。
「ん、構わないよ。それでいこうかな」
 ……はっ、そういえばご予算はいかほどだったっけ。
 というか、これの値段がまったくの未知数……とりあえず財布には6千円持ってるけど。
「でも、これ、結構いい品ですよ。かなり大切にされてたみたいですね……」
 そういえば若葉はいくら入れたんだろうか。
 そう思って若葉からの封筒を取り出して覗いてみると、なんと福沢諭吉がいるではないか! こ、これは一気に心強くなった。
 でもここは骨董屋……何とか鑑定団とか見てると、いくら諭吉さんでも対抗できないような……強気だったのが、一気に弱気になる。
 うう、ここは思い切って値段を聞くことにしよう。
「梓川さん、これっていくら位なの?」
「えっ、そうですね……ここにあるこれなんか、結構いいところのポットですから、1万円は確実にするんじゃないでしょうか。でも、水瀬さんのそれはちょっとわかりませんね……」
 わかりませんって……
 まあ、これがその「いいところ」を越えるとは思わないけど、それでもかなり心配だ……
「お店の人に聞いてみましょうか」
 まあ、一応買うつもりなんだし、お店の人に聞けばいいか。
「そうだね。えっと、あの人でいいのかな?」
 見たところ店内には、会計のところで暇そうにしているお兄さんしかいない。
「すいません、これいくらですか?」
「えっ……あ、ちょっと待ってください……」
 言うとお兄さんは、僕が手に持ったポットをまじまじと見つめる。
「えっと、これ、どこにありました?」
「あの、あそこですけど……」
 僕の代わりに梓川さんが答える。
 よくよく見れば『英国製ブランド各種』って書いてある……
 背筋を寒いものが走り抜けた僕に、店員さんは申し訳なさそうな顔。
「あちゃ……すみません、紛らわしいとことに置いてて。これ、雑品処分セールのところに置いてあったはずなんだけどなあ。誰かが間違ってあそこに置いちゃったんですね」
 えっ……
「値段はそうですね……ここ欠けてますし、こちらもいわば、看板に偽りありみたいなことしちゃったから、1500円でいいですよ」
 お、これはお手ごろな値段だ。というより、安い。
「えっと、それじゃあこれいただきます」
 財布の中から千円札2枚を出す。
「はい、ありがとうございます。ちょっと待ってくださいね、今包みますので」
 500円玉を手渡してくれたお兄さんは、手早くラッピングをはじめた。
「良かったですね、水瀬さん」
「うん、梓川さんのお陰だよ」
 こんなところにある店、普通は気付かないもんな。あのなんとなくいい感じのポットにも出会えなかったわけだし。
「ありがとうございましたー」
 外に出てみると入り口脇に「雑品処分セール・オール2000円」のコーナーがあった。
 500円ほど得したわけだ。ラッキー。
「そういえば水瀬さん、喫茶店で話してたことなんですけど……」
「え、ああ、紅茶各種ね。どうする? 学校まで持っていってもいいけど、色々あるから梓川さんに選んでもらった方がいいと思うけど」
 20種類ぐらいはあったかなあ……覚えてないや。
「そうですね……じゃあ、文化祭の代休の日にさやちゃんと一緒に遊びに行ってもいいですか?」
 文化祭の代休か……確かなんにもなかったな。
「うん、OK。若葉にも伝えておくよ……って、あいつは学校か」
「そうですね。あ、若葉ちゃんも来るんですよね、文化祭」
「多分ね。結構前から楽しみにしてるみたいだし」
 目当ては早香の男装だそうだ。カメラ持っていくとか何とか言ってたけど、同じフィルムに僕や陽一郎も写ることになるんだろうなあ……はぁ。
 ともかく、梓川さんが来るのか。
 こうやって約束取り付けるのってはじめてかも。
 ……それはいいけど、何か忘れてるような。
「あ、そうだ。梓川さんの用事は?」
「あ……すっかり忘れてました」
 確か紙と絵の具を注文するんだっけ。
「そういえば、この前に画材を買い出しに行ったとき、初めて水瀬さんと会ったんですよね……」
 そういえばそうだったっけ。
 初めてなような、そうでないような、よく分からない感じではあったけど。
 そんな梓川さんと一緒に今草神を歩いている……
 巡り合わせなんて、わからないもんだなあ。
「多分、恭ちゃんはあんたのこと……」
 「好き」だったらいいな……なんて、思ってみたらダメだろうか。
「? 水瀬さん、どうかしましたか?」
 不意に立ち止まってしまっていた僕を不思議そうに見つめる梓川さん。
「ううん。なんでも。早く行こう」
「あ、はい……なんだか変な水瀬さん」
 初デート。らしきものは、僕と梓川さんの距離を少しだけ縮めたような気がした。
 透き通るような青空は、そんな僕たちを優しく包み込んでくれているようだった。

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